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第四章
魔法使いと眠る姫7
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エクーディアは横を向いて口元に手を置いている。顔は見事に真っ赤で、少し可哀想なほどうろたえている。
「では、誠二にばれたことだし。こちらへおいで。エクーディア。」
微笑みながら自分の膝の上をぽんぽんと叩くクエティオディに、エクーディアは頬を引きつらせた。
「クエティオディ様、冗談はよしてください。
ユンスウ様も客人もいるのに、そのような事、できるわけがない!」
「冗談ではないよ。私がいいと言っているのだからね。」
「あ、わたしのことも気にしないで。クエティオディ様に教わったもん。馬に蹴られるのは痛いって。」
(どーゆー教え方だよ・・・。)
そんなことを考えつつ、誠二も言った。
「俺もかまいませんよ。よく姉貴が言ってるんです。恋人同士を引き裂くなんて、そんな恐ろしいことはしてはいけないって。」
「あっはっはっはっはっ!諦めたら?エクーディア?」
朗らかに笑いながらディヤイアンが言った。
「い・・・いくらユンスウ様のお許しがあるとはいえ、そのようなこと、できるわけがない!!!」
涙目のエクーディアを見て、クエティオディは楽しげに言った。
「愛しているよ、エクーディア。こちらにおいで。」
「・・・!」
さらに耳まで赤くなったエクーディアは、とうとう後ろを向いてしまった。クエティオディは楽しそうに笑っている。
誠二は横にいるディヤイアンに耳打ちをした。
「公認だけど、本人が堅くていつも遊ばれてる?」
ディヤイアンは苦笑いをして、小さく頷いた。
「そういえばさ、さっきの女の子?だよね?誰?」
ユンスウがふと思い出したように言った。
「え?マユのこと?」
誠二が聞くと、ユンスウはこくりと頷いた。
「・・・なんで知ってるの?寝てたんじゃないの?」
「部屋に入ってきてから、わたしが目覚めるまでの誠二の行動をクエティオディ様に見せてもらったから・・・。」
「何時?!」
「この部屋に移動してくる間に。」
「えぇ???」
誠二が声を上げると、楽しそうにクエティオディが説明をした。
「時間を圧縮して見せたんだよ。操作術の一つで、相手が操作術を扱えれば使える。動画みたいなものかな?それを直接記憶の中に入れるんだけどね。」
「ほぇ~。すげ~。」
呆然とした誠二を見て、クエティオディは満足げに頷いた。
「ただし、たとえ基礎でも操作術が使えれば問題ないのだが、使えない人物に送り込むと、情報を処理できなくて、その情報と同じ時間だけ意識を失うけどね。その後起きられるかはその人しだいかな?」
顔を引きつらせる誠二に向かって、ユンスウは再び聞いた。
「それで、マユって誰?」
「ん?・・・俺の幼馴染。」
「それだけかい?」
クエティオディに促されて、誠二は気づいた。それを言わなくては、ユンスウは自分を諦められないと。
「んー。俺が好きな人。」
その一言を聞いて、ユンスウは泣きそうな顔をした。
「ごめんね。ユンスウちゃん。
この世界も面白そうだけど、俺には俺が生まれ育った世界がある。そこでの夢もある。だから帰るよ。」
こらえきれずに、ユンスウは涙を流した。誠二はそれをとても綺麗だと思った。
「・・・わかった。ごめんね誠二。突然無理やり呼び出して、わけのわからない思いをさせて。・・・もう、帰ってもいいよ。」
ユンスウはそう言うと、にっこりと笑った。目の端から涙を流しながら。
「えっと・・・。ユンスウちゃん、俺のこと諦めるって今言ったよね?」
「・・・っ!そうだよ!!!」
泣きながら睨み付けるユンスウに、誠二は笑った。
「なら大丈夫。ユンスウちゃんが本当に好きなのは、オレじゃないよ。」
驚いて涙が止まったユンスウを見て、誠二は言った。
「本気で人を好きになったら、そんなに簡単に諦めることなんて出来ないよ。オレ、帰ってからマユにコクるけど、きっとふられると思う。でも、ふられてもオレ、諦められない。だから、ユンスウちゃんが本気で好きになる人がどこかにいるよ。オレみたいに、実は側にいて気づかないだけかもしれないしね。」
誠二はにっこりと笑ってユンスウを見た。
「だから、ユンスウちゃんもがんばって自分だけの人を見つけるんだ。どんな障害があっても跳ね除けてやるくらいの根性がなけりゃ、一緒にいれないよ。
・・・って、これ前にオレの姉貴が言ってた台詞だけどね。今ならその意味わかるから、今度はオレからユンスウちゃんに言うよ。絶対自分だけの人が見つかるから。泣いてちゃダメだよ。」
・・・
その言葉をユンスウに贈り、誠二は笑顔と共に去っていった。彼が目を覚ますといつもの自分の部屋が見えるだろう。ここで起こったことは鮮明な夢として処理され、きっと彼は幼馴染たちに楽し気にそれを語るのだろう。
「では、誠二にばれたことだし。こちらへおいで。エクーディア。」
微笑みながら自分の膝の上をぽんぽんと叩くクエティオディに、エクーディアは頬を引きつらせた。
「クエティオディ様、冗談はよしてください。
ユンスウ様も客人もいるのに、そのような事、できるわけがない!」
「冗談ではないよ。私がいいと言っているのだからね。」
「あ、わたしのことも気にしないで。クエティオディ様に教わったもん。馬に蹴られるのは痛いって。」
(どーゆー教え方だよ・・・。)
そんなことを考えつつ、誠二も言った。
「俺もかまいませんよ。よく姉貴が言ってるんです。恋人同士を引き裂くなんて、そんな恐ろしいことはしてはいけないって。」
「あっはっはっはっはっ!諦めたら?エクーディア?」
朗らかに笑いながらディヤイアンが言った。
「い・・・いくらユンスウ様のお許しがあるとはいえ、そのようなこと、できるわけがない!!!」
涙目のエクーディアを見て、クエティオディは楽しげに言った。
「愛しているよ、エクーディア。こちらにおいで。」
「・・・!」
さらに耳まで赤くなったエクーディアは、とうとう後ろを向いてしまった。クエティオディは楽しそうに笑っている。
誠二は横にいるディヤイアンに耳打ちをした。
「公認だけど、本人が堅くていつも遊ばれてる?」
ディヤイアンは苦笑いをして、小さく頷いた。
「そういえばさ、さっきの女の子?だよね?誰?」
ユンスウがふと思い出したように言った。
「え?マユのこと?」
誠二が聞くと、ユンスウはこくりと頷いた。
「・・・なんで知ってるの?寝てたんじゃないの?」
「部屋に入ってきてから、わたしが目覚めるまでの誠二の行動をクエティオディ様に見せてもらったから・・・。」
「何時?!」
「この部屋に移動してくる間に。」
「えぇ???」
誠二が声を上げると、楽しそうにクエティオディが説明をした。
「時間を圧縮して見せたんだよ。操作術の一つで、相手が操作術を扱えれば使える。動画みたいなものかな?それを直接記憶の中に入れるんだけどね。」
「ほぇ~。すげ~。」
呆然とした誠二を見て、クエティオディは満足げに頷いた。
「ただし、たとえ基礎でも操作術が使えれば問題ないのだが、使えない人物に送り込むと、情報を処理できなくて、その情報と同じ時間だけ意識を失うけどね。その後起きられるかはその人しだいかな?」
顔を引きつらせる誠二に向かって、ユンスウは再び聞いた。
「それで、マユって誰?」
「ん?・・・俺の幼馴染。」
「それだけかい?」
クエティオディに促されて、誠二は気づいた。それを言わなくては、ユンスウは自分を諦められないと。
「んー。俺が好きな人。」
その一言を聞いて、ユンスウは泣きそうな顔をした。
「ごめんね。ユンスウちゃん。
この世界も面白そうだけど、俺には俺が生まれ育った世界がある。そこでの夢もある。だから帰るよ。」
こらえきれずに、ユンスウは涙を流した。誠二はそれをとても綺麗だと思った。
「・・・わかった。ごめんね誠二。突然無理やり呼び出して、わけのわからない思いをさせて。・・・もう、帰ってもいいよ。」
ユンスウはそう言うと、にっこりと笑った。目の端から涙を流しながら。
「えっと・・・。ユンスウちゃん、俺のこと諦めるって今言ったよね?」
「・・・っ!そうだよ!!!」
泣きながら睨み付けるユンスウに、誠二は笑った。
「なら大丈夫。ユンスウちゃんが本当に好きなのは、オレじゃないよ。」
驚いて涙が止まったユンスウを見て、誠二は言った。
「本気で人を好きになったら、そんなに簡単に諦めることなんて出来ないよ。オレ、帰ってからマユにコクるけど、きっとふられると思う。でも、ふられてもオレ、諦められない。だから、ユンスウちゃんが本気で好きになる人がどこかにいるよ。オレみたいに、実は側にいて気づかないだけかもしれないしね。」
誠二はにっこりと笑ってユンスウを見た。
「だから、ユンスウちゃんもがんばって自分だけの人を見つけるんだ。どんな障害があっても跳ね除けてやるくらいの根性がなけりゃ、一緒にいれないよ。
・・・って、これ前にオレの姉貴が言ってた台詞だけどね。今ならその意味わかるから、今度はオレからユンスウちゃんに言うよ。絶対自分だけの人が見つかるから。泣いてちゃダメだよ。」
・・・
その言葉をユンスウに贈り、誠二は笑顔と共に去っていった。彼が目を覚ますといつもの自分の部屋が見えるだろう。ここで起こったことは鮮明な夢として処理され、きっと彼は幼馴染たちに楽し気にそれを語るのだろう。
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