がんばれ勇者くん

うさのり

文字の大きさ
上 下
19 / 33
第三章

経験の値2

しおりを挟む
「じゃあ、貧富の差って無いんですか?他の人より多くものが欲しいとか、思わないんですか?」

「・・・。わたしは、そのようなことは、考えたこともないな。
自分に必要なものがあれば、それで満足しないか?
誠二君は、仕事も食べ物も着る物も寝る場所もあって、それ以上に何が欲しい?」

不思議そうにエクーディアに聞かれ、誠二は頭を抱えた。根本的な考え方が違いすぎる。

「うー・・・。まぁ、オレはあんま物欲って無いけど、マユなんか洋服何着持っててもまだ欲しいって言うし・・・。」

「マユ・・・とは?」

「俺の幼馴染の植原真由美のことです。親友の植原拓海の双子の妹です。
・・・でも、ここに来たのが俺でよかったです。マユだったら、きっと怯えて泣いていただろうから・・・。」

遠くを見る目をしながら、誠二は続けた。

「俺、タクと約束したんです。マユのことは絶対に泣かせないって・・・。」

「・・・彼女が好きかい?」

「もちろん、好きです。大切な幼馴染だから。マユとタクは、俺の家族みたいな、大切な人間なんですよ。」

優しく笑う誠二を見て、エクーディアは少し考えるような顔をした。
誠二はふと我に返り、自分が恥ずかしいことを言ってしまったことに気づき、少し頬を赤くした。

「あー。えーっと・・・。話を元に戻しますけど、オレにだって物欲はありますよ?
たとえば、サッカーシューズとか。まだ履けるけどやっぱり新しいモデルが出たら欲しくなりますし・・・。」

「そのようなものか?」

心底不思議そうに聞かれ、誠二はためらいつつも頷いた。

「そうか・・・。」

そう呟いたエクーディアは、気を取り直したように続けた。

「こちらも話を戻すが、快楽で生き物を殺すような者には、この世界は君たちの世界より法的に厳しい。
この世界には直接的な死刑は無いのだが、重犯罪者は記憶を全て消されて、違う生を生きなければならない。属す領土からも出されて、別人として一生を監視され、世界から力を蓄えることもできずに、弱って死んでいく。」

誠二は目を見開いた。それに気配では気づいていたが、エクーディアは話を続けた。

「そして、犯罪の疑いがある人物は、記憶を見せる義務がある。犯罪者のような行動をしたこと自体が罪だからね。
調べようとすれば、その時その人物が何を考えて、何をしたのかがわかる。魔法で頭の中の記憶や考えを読むことが出来るからな。
しかし、強い術を使わねばならないので、魔法をかけられて発狂するものもいたと聞いている。
話をまとめると、重犯罪者の最高刑は、知識がまったく無い大人になり、緩慢に死ぬことだ。生活は国から保障されているので、数年は生きることができる。
・・・。わたしは専門外なので、あまり詳しくは無いが、もし詳しく知りたいのなら、後でディヤイアンに聞くといい。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人
ファンタジー
二〇二一年初夏六月末早朝。 蝉の声で目覚めたカガミ・ユーゴは加齢で衰えた体の痛みに苦しみながら瞼を上げる。待っていたのは虚構のような現実。 呼吸をする度にコポコポとまるで水中にいるかのような泡が生じ、天井へと向かっていく。 泡を追って視線を上げた先には水面らしきものがあった。 ユーゴは逡巡しながらも水面に手を伸ばすのだが――。 おっさん若返り異世界ファンタジーです。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】ヤンキー少女、異世界で異世界人の正体隠す

ファンタジー
口が悪く男勝りで見た目は美青年な不良、神田シズ(女)は誕生日の前日に、漆黒の軍服に身を包んだ自分とそっくりの男にキスをされ神様のいない異世界へ飛ばされる。元の世界に帰る方法を捜していると男が着ていた軍服が、城で働く者、城人(じょうにん)だけが着ることを許させる制服だと知る。シズは「君はここじゃないと生きれない」と吐き捨て姿を消した謎の力を持つ男の行方と、自分とそっくりの男の手がかりをつかむために城人になろうとするがそのためには試験に合格し、城人になるための学校に通わなければならず……。癖の強い同期達と敵か味方か分からない教官、上司、王族の中で成長しながら、帰還という希望と真実に近づくにつれて、シズは渦巻く陰謀に引きずり込まれてゆく。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...