泥々の川

フロイライン

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百恵は仕事にも慣れ、マキと二人で日夜体を売り、生計を立てていた。


そんなある日の夕暮れ時、二人は銭湯に行く事になった。


「百恵、行くよ。
用意できた?」


「はーい」

マキに呼ばれ、百恵は洗面器に石鹸とシャンプーを入れ、表に出た。


「マキ姉さん、ウチ何回女湯入っても慣れへんわ。」


「そんなんワタシもそうや。
アンタと違うて、ワタシは胸もあんまり大きあらへんから、いつバレてつまみ出されるかヒヤヒヤもんやわ。」


「ウチもそうです。
いくら胸が出てきたいうても、ホンマもんの女の人と比べたら、全然ちゃいますもん。

第一、骨格からして全然あかんもん。」


「まあ、股間さえタオルで隠しとったら何とかなるし、それだけは注意せなな。」


二人はそんな話をしながら、肩を寄せ合って銭湯に行った。


下駄箱にサンダルを入れ、木札を取った二人は、勿論女湯の暖簾をくぐった。


「おばちゃん、来たよー」

マキがそう言いながら、財布から百円玉を出して手渡し、後ろから百恵も百円を出した。

「マキちゃん、百恵ちゃん
いつも早いねえ。」

と、言って釣りの二十五円を二人に渡すと、マキと百恵はいつもの定位置である、隅っこに行き脱衣した。

幸いなことに、まだ他の客は誰も来ていない。

二人は安心して裸になり、股間をタオルで隠し、さらに洗面器を体の前で持って浴場に入った。


浴場でも、二人は最奥に陣取り、入ってくる人から自分たちの裸体が見えないように注意していた。


「姉さん、誰もまだ来てへんでよかったですね。」


「そやね。
ホッとするわ」


「ウチ、背中流します。」


百恵はお湯でタオルを浸し、石鹸を挟み込んで泡立てた。

そして、マキの背中を丁寧に洗い始めた。


「姉さんの背中って、いつ見てもホンマにキレイです。」

百恵はうっとりした表情で、鏡越しにマキを見つめながら言った。


「フフッ」

対して、マキも鏡の中の百恵を見て笑った。


「ええっ、何がおかしいんですか?
姉さん」

慌てて質問する百恵に、マキは

「アンタ、タオルでワタシの背中を擦る度に、おっぱいがブルブル揺れてるんやもん。

ちょっと、ありえへんくらいに育ってへん?」


「えーっ、そうですか?
自分ではようわかりませんけど、太ったんもあると思います。」


「いや、そうやない。
アンタは女になる素養があったんやと思う。
それと、十五でタマ取ったり女性ホルモン始めたんもよかったんや。
アンタ、声変わりもしてへんかったし、元々髭もあらへんかったもんな。」


「言われてみれば…」


「言うなれば、百恵はオカマ界のエリートや。」

マキはそう言って笑った。
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