泥々の川

フロイライン

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身の上話

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マキと百恵は、濡れた髪にシャンプーのいい匂いを漂わせながら、家までの道をのんびり歩いていた。


「百恵、アンタ
すっぴんでももう女顔やなあ。

まあ、来た時から綺麗な顔しとったけど。」


「姉さんにそう言われると、なんか嬉しいわ。」

百恵は顔を赤らめてそう、
 答えた。


「でも、あんたも色々大変な目に遭うて、ホンマ大変な苦労してると思うけど、よう頑張ってるわ。」


「最初は目の前が真っ暗やったけど、姉さんに出会えてホンマによかったと思てます。

ワタシ、姉さんがおらへんかったら死んでたかもしれへん。」


「そうか。そう言うてくれるのはウチも嬉しいわ。
可愛い妹が出来た思て、ずっと可愛がってきた甲斐があったわ。」


「おおきに、姉さん。」


「最近はどないや?
イヤな客来えへんか?」


「ウチのことわかってて来るくせに、オカマやの、気持ち悪いやの言うて罵る人もけっこうおるんです。

でも、やる事はやるんやけど。」


「あー、おるおる。
そういうのんが一番かなわんな。

よっぽど変なんが来たら、ワタシに言うて来るんやで。」


「はい。わかりました。

ところで姉さん」


「どないしたん?」


「ちょっと寄っていきません?
あそこ」


百恵は前方を指さして言った。


「何やの?
駄菓子屋かいな。

アンタもええ歳してまだそんなもんに興味あるんかいな。」


「ちゃいます。

あの、表にあるピンボール

やってみたい思て。」


「ピンボールかいな。

百恵もそういうとこはまだまだ男の子やなあ。」


「ウチ貧乏やったから、やりたくてもお金がなくて、いつも友達がやるのを見てるだけやったんです。

少しお金をいただけるようになったし、昔の夢を叶えたい思うて。」


「大袈裟やなあ。

やったらええがな。どうせ、この後時間もあんねやし。
付き合うわ。」

二人は駄菓子屋の前に置かれた何台かのゲーム機に近づいていった。


百恵がやりたがっていたピンボールは小学生のグループが先にプレイしていたが、すぐに終わり、二人に席を譲った。


百恵は10円玉を取り出し、機械に入れた。

激しい打撃音が響き渡り、銀色の球がコロンと出てきた。

レバーを引いて玉を弾き出すと、玉は勢いよく飛び出し、得点を重ねていった。


「このお姉ちゃん、上手いわ。」

さっきまでプレイしていた小学生の一人が、百恵のテクを見て、友達に小声で言った。

その後も粘りに粘り、小学生の倍以上の時間をプレイ出来た。

もう一回プレイができるとおまけ付きで。

女子とは思えぬその技術に、何故かはわからないが、小学生とマキから拍手が巻き起こった。
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