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理想と現実
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あっという間に終わってしまったスパーリング…
完膚なきまでやられてしまい、首を押さえてリング中央に座り込む珀。
ミサトは泣きそうな顔で珀の背中に手を置き
「ごめんなさい。
大丈夫ですか」
と、声をかけた。
珀は体のダメージよりも大口叩いて負けてしまった事実に耐えられず、ミサトの目を見ずに、手だけで大丈夫のサイン送った。
すると、レフェリー役をしていたミカも近づいてきて、珀の体を支えながら起こした。
「ごめんね。いきなりだったから、何が何だかわからないままに終わったよね。
でも、これがプロレスだし、ワタシらが真剣にやっているってことをわかって欲しかったの。」
「はい…
自分が甘かったです。」
珀はなんとか立ち上がると、ミカとミサトに頭を下げ、リングを降りていった。
「珀クン
大丈夫?」
リングサイドで見ていた久美子も側に来て、珀に声をかけたが、珀は、久美子にも頭を下げると、何も言葉が出ずに項垂れてしまった。
「珀クン…
ウチのプロレスはどうだった?」
「すいません…
自分がナメてました…
恥ずかしくて、穴があったら入りたい心境です。」
と、珀は泣きそうな表情で久美子の質問に答えた。
「珀クン
どうかな?
ウチで頑張るって選択肢はないかな?」
「えっ…」
「あなたの求めるメジャー系男子のストロングスタイルではないかもしれないけど、ここのみんなも日々努力をして、レベルの高いプロレスを見せる事を心掛けてるの。
それに、性の悩みをクリアする上で、このようなカタチを取るっていうのも、アリなんじゃないかって、ワタシもニューハーフの端くれとして思っているのね。
すぐに答えを出すようには言えないけど、よく考えてもらって、答えを聞かせてもらえればって、そう思っています。」
「…」
久美子の誘いに、珀は何も答える事が出来ず、ただ黙ってしまった。
それでも拒絶する事もなく、純粋に考えてみたいと思ったのである。
「ありがとうございます。
少しだけ考えてから返事させていただいてもよろしいでしょうか。」
「うん。いいわよ。
よく考えて返事してくれたら…」
珀の言葉に、久美子は理解を示した。
「ねえ、ワタシも待ってるから。
一緒にがんばろ。
キミの気の強いところ、嫌いじゃないわ。」
ミカも珀に優しく言葉をかけた。
珀はそれらの人全員に向かって、頭を深々と下げ、道場から出ていった。
久美子が隣にいたミカに
「ミカちゃん、今の珀クン
どう思う?」
と、質問すると
「社長、よく見つけてきましたね、
あの子も心は女子なんですか?」
と、聞き、久美子が頷くと
「だったら絶対スターになれる逸材ですよ」
と、力強い言葉で答えたのだった。
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「ごめんなさい。
大丈夫ですか」
と、声をかけた。
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すると、レフェリー役をしていたミカも近づいてきて、珀の体を支えながら起こした。
「ごめんね。いきなりだったから、何が何だかわからないままに終わったよね。
でも、これがプロレスだし、ワタシらが真剣にやっているってことをわかって欲しかったの。」
「はい…
自分が甘かったです。」
珀はなんとか立ち上がると、ミカとミサトに頭を下げ、リングを降りていった。
「珀クン
大丈夫?」
リングサイドで見ていた久美子も側に来て、珀に声をかけたが、珀は、久美子にも頭を下げると、何も言葉が出ずに項垂れてしまった。
「珀クン…
ウチのプロレスはどうだった?」
「すいません…
自分がナメてました…
恥ずかしくて、穴があったら入りたい心境です。」
と、珀は泣きそうな表情で久美子の質問に答えた。
「珀クン
どうかな?
ウチで頑張るって選択肢はないかな?」
「えっ…」
「あなたの求めるメジャー系男子のストロングスタイルではないかもしれないけど、ここのみんなも日々努力をして、レベルの高いプロレスを見せる事を心掛けてるの。
それに、性の悩みをクリアする上で、このようなカタチを取るっていうのも、アリなんじゃないかって、ワタシもニューハーフの端くれとして思っているのね。
すぐに答えを出すようには言えないけど、よく考えてもらって、答えを聞かせてもらえればって、そう思っています。」
「…」
久美子の誘いに、珀は何も答える事が出来ず、ただ黙ってしまった。
それでも拒絶する事もなく、純粋に考えてみたいと思ったのである。
「ありがとうございます。
少しだけ考えてから返事させていただいてもよろしいでしょうか。」
「うん。いいわよ。
よく考えて返事してくれたら…」
珀の言葉に、久美子は理解を示した。
「ねえ、ワタシも待ってるから。
一緒にがんばろ。
キミの気の強いところ、嫌いじゃないわ。」
ミカも珀に優しく言葉をかけた。
珀はそれらの人全員に向かって、頭を深々と下げ、道場から出ていった。
久美子が隣にいたミカに
「ミカちゃん、今の珀クン
どう思う?」
と、質問すると
「社長、よく見つけてきましたね、
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と、聞き、久美子が頷くと
「だったら絶対スターになれる逸材ですよ」
と、力強い言葉で答えたのだった。
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