N -Revolution

フロイライン

文字の大きさ
10 / 190

理想と現実

しおりを挟む
あっという間に終わってしまったスパーリング…

完膚なきまでやられてしまい、首を押さえてリング中央に座り込む珀。

ミサトは泣きそうな顔で珀の背中に手を置き

「ごめんなさい。

大丈夫ですか」

と、声をかけた。


珀は体のダメージよりも大口叩いて負けてしまった事実に耐えられず、ミサトの目を見ずに、手だけで大丈夫のサイン送った。

すると、レフェリー役をしていたミカも近づいてきて、珀の体を支えながら起こした。

「ごめんね。いきなりだったから、何が何だかわからないままに終わったよね。
でも、これがプロレスだし、ワタシらが真剣にやっているってことをわかって欲しかったの。」


「はい…
自分が甘かったです。」


珀はなんとか立ち上がると、ミカとミサトに頭を下げ、リングを降りていった。


「珀クン
大丈夫?」


リングサイドで見ていた久美子も側に来て、珀に声をかけたが、珀は、久美子にも頭を下げると、何も言葉が出ずに項垂れてしまった。


「珀クン…

ウチのプロレスはどうだった?」



「すいません…
自分がナメてました…

恥ずかしくて、穴があったら入りたい心境です。」

と、珀は泣きそうな表情で久美子の質問に答えた。


「珀クン
どうかな?

ウチで頑張るって選択肢はないかな?」


「えっ…」


「あなたの求めるメジャー系男子のストロングスタイルではないかもしれないけど、ここのみんなも日々努力をして、レベルの高いプロレスを見せる事を心掛けてるの。

それに、性の悩みをクリアする上で、このようなカタチを取るっていうのも、アリなんじゃないかって、ワタシもニューハーフの端くれとして思っているのね。

すぐに答えを出すようには言えないけど、よく考えてもらって、答えを聞かせてもらえればって、そう思っています。」


「…」


久美子の誘いに、珀は何も答える事が出来ず、ただ黙ってしまった。

それでも拒絶する事もなく、純粋に考えてみたいと思ったのである。


「ありがとうございます。

少しだけ考えてから返事させていただいてもよろしいでしょうか。」


「うん。いいわよ。
よく考えて返事してくれたら…」


珀の言葉に、久美子は理解を示した。



「ねえ、ワタシも待ってるから。
一緒にがんばろ。

キミの気の強いところ、嫌いじゃないわ。」


ミカも珀に優しく言葉をかけた。


珀はそれらの人全員に向かって、頭を深々と下げ、道場から出ていった。


久美子が隣にいたミカに

「ミカちゃん、今の珀クン
どう思う?」

と、質問すると


「社長、よく見つけてきましたね、
あの子も心は女子なんですか?」

と、聞き、久美子が頷くと

「だったら絶対スターになれる逸材ですよ」

と、力強い言葉で答えたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

医者兄と病院脱出の妹(フリー台本)

ライト文芸
生まれて初めて大病を患い入院中の妹 退院が決まり、試しの外出と称して病院を抜け出し友達と脱走 行きたかったカフェへ それが、主治医の兄に見つかり、その後体調急変

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

あなたの人生 高価買取します

フロイライン
ミステリー
社会の底辺の俺には、何の希望もない。日々を惰性で生きるだけのクズ人間だ。 そんな俺は、ある日、ふとした事から、人生をやり直すチャンスをもらうが…

処理中です...