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施策

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達也はその日、或る男と外で打ち合わせをしていた。


「佐藤さん

レギンドーとの交渉はどうなりましたか?」


「ええ、今先方にアポ依頼をしているところです。
なんとかしてみますので、もう暫くお待ち下さい。」


「いやいや、もう何ヶ月も同じ事言ってませんか。
我々ももう待てませんよ

あなたへの期待から私は、独断であなたの会社への融資を決めたんです。
ここであなたに飛ばれたりすると、私の立場が非常に拙くなる。」


「申し訳ありません…」


「佐藤さん
あなたを見ていると、昔の自分を見ているようで、気恥ずかしさを憶えますよ。
まあ、我々は同類と言えるでしょうね。」


「同類?」


「ええ。子供の頃から勉強が出来て、家もそれなりに裕福で、何一つ不自由なく生きてきた。
仕事も順調で、自分ならもっとやれる筈と独立したはいいが、
所詮は敷かれたレールの上でしか力の発揮できない凡庸な人間だった。

私もねえ、T大卒業という肩書きがあるからと、自分は特別な存在だと過信して人生を見誤った口ですよ。」


「この現状では、あなたのご意見を真摯に受け止める以外はないでしょうね」


「佐藤さん、このまま行けば、あなたは確実に詰んでしまいます。

もう諦められますか?」


「いえ、諦めるわけにはいきません
何としてでも巻き返します」


「その鍵となるのが、あなたが話していた元奥さんなんですね。
戻ってきてくれるんですか」


「…
そもそもは私の浮気が原因で離婚し、会社の共同経営からも身を引いてしまいましたが、妻は私の事を心から愛していましたし、仕事もアイツの生き甲斐でした。

だから、私が心から反省し、頭を下げればきっと戻ってきてくれると確信していました。」

「しかし、その奥さんは自分の半分くらい歳の若い男により骨抜きにされていたと。」

「はい。
それは私にとって予想外の展開でした。
美智香があんな風になってしまうなんて…
正直申しまして、進退窮まるといった感じです。」


「それで美智香さんの件は諦められると?」


「桐山さん。
もう私には何のカードも無い状態です。

会社の立て直しは美智香抜きで、何か別の方法を考えたいと思っています。」


「ほう、どんな方法ですか?」


「それは…」


「やはり、美智香さんの力が必要なんじゃないですか」


「ですが…」


「美智香さんの居場所は見つけられたんですね?」


「ええ。見つけました。
実際に家まで訪ねていきましたよ。ですが、そのときは不在でした。

そこで少し冷静になりましてね。
そこまでする必要があるのかと、自己嫌悪に陥り、それからは一度も足を運んでいません。」


「甘いな。甘すぎますよ、佐藤社長。
必要なんでしょ?美智香さんの力が

若い旦那に骨抜きにされたのなら、こちらで目を覚まさせてやればいい。」


桐山の目が妖しく光り、達也は得体の知れない恐怖を感じた。
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