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策謀

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「桐山さん、そうはおっしゃいますが、若い男に現を抜かし、仕事に興味を失った美智香に、どうやって戻って来いと?」


「まあ、やり方はありますよ。色々とね。

ところで、美智香さんは現金資産をお持ちですか?」

「ええ、多分

前の会社を辞めた時の退職金、今の会社を辞める時に慰謝料代わりに渡した退職金、そして、不動産資産を売却して、その半額を渡していますので、若い男がヒモのような存在でなければそれなりのまとまった金額は持っているでしょう。」


「それは良い。
尚更美智香さんには会社に戻ってきてもらい、その金を貸してもらいましょう。」

「貸す?美智香が、ですか

そんな事はしてくれないと思いますよ。」


「美智香さんが会社に戻ってきたら、また役員にすればいい。
そして、役員貸付という形で会社に金を貸す形にしてもらえばいいんですよ。」


「いや、そんなことしてくれないでしょう。
第一、会社に戻るという選択肢自体があり得ない事です。」


「佐藤さん
美智香さんにさえ接触し、私の元に連れてきてくれさえすれば、後は何とかする自信は持っていますよ。」

「俄には信じ難いですが、是非お願いしたいものです。

すいません、用事がありますので、今日はこの辺で失礼させていただきます。」


達也はそう言うと席を立った。

しかし、立ち上がったまま、達也の体は固まり、動かなくなった。

何故なら視線の先に美智香がいたからだ。


一瞬、達也も何が何だかわからなくなった

しかし、店の奥の四人掛けの席に座っているのは、やはりどう見ても美智香だった。
隣には興信所から報告を受けた若い旦那らしき男が座っている。

向いに座る二人の女は後ろ姿で、誰かよくわからない…


「佐藤社長、どうしたんですか?」


桐山は達也の異変に気付き、座ったまま達也の表情を窺いながら言った。


達也は無言で、顎で美智香がいる方向を指し示した。

桐山が示された方向を立ち上がって見つめると、ようやく達也が

「あそこに座っているのが美智香です」

と、小さな声で言った。


桐山は美智香の顔を確認し

「佐藤さん
どうやら天は我々の味方らしいですね。」

と、言ってニヤリと笑った。
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