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由香里と恵太は、久しぶりに自宅に帰ってきた。
このタイミングで戻ったのには理由があった。
夫の隆之は普段海外にいるが、年末から一月の中旬までは日本ですごしている。
ただし、いつもは浮気相手の家に行き、自宅には一切戻らないのだが、今回は由香里が離婚の話し合いをしたいという内容のメールを送った為、隆之も了承し、愛人との愛の巣から、こちらに戻ってくることになった。
由香里と恵太は昼過ぎに自宅に到着したが、まだ隆之の姿はなかった。
「恵太
あらためて引越しの作業はするけど、とりあえず必要なものと捨てちゃっていいものを分けといて。」
「はーい」
恵太が返事をしたその時、ドアが玄関のドアが開く音がした。
由香里と恵太が玄関の方に目をやると、隆之が靴を脱ぎ上がってくるのが見えた。
冷え切った夫婦関係、そして一年ぶりの対面にもかかわらず、隆之は二人の顔を見ると
「おう、久しぶり」
と、平然と言った。
「おかえりなさい」
由香里もほぼ感情のない言い方で夫を出迎えた。
「おいおい、恵太
お前何ちゅーカッコしとるんだ」
神を伸ばし化粧をし、スカート姿の恵太に向かって、隆之は怒りとも呆れともつかぬ言葉を発した。
恵太は、相変わらず無理解の父の言葉に一切反応せず、無視して自分の部屋に入っていった。
一時は恵太を男らしく矯正しようとしていた隆之だったが、ここ何年かは息子にも妻にも一切の関心を持たなくなっており、それ以上圭太の事に言及する事はなかった。
今回の目的はただ一つ、由香里との離婚を少しでも有利に進めたい…その一心で自宅に舞い戻ってきたのだ。
早速、二人はテーブルを挟んで座り、話し合いを行うことにした。
「君からのメールで、何故こういう場が設けられたかは理解しているつもりだが…」
「こういう場?
ここは自分の家でしょ。
海外にいる時ならいざ知らず、日本にいる時なら毎日ここに帰ってきて顔を合わす事はごく普通の事じゃないの?」
「揚げ足を取らないでくれよ。
もう夫婦関係は破綻してんだから」
「破綻させたのはあなただけどね。
まあ、そんな事言っても今さら仕方ないわね。
本題に入りましょう。
メールで伝えたように、あなたと離婚したいの。」
「ほう。
あれだけ離婚を嫌がっていた君が、どういう心境の変化だ?」
「恵太の事を考えて離婚は良くないっていう思いだったけど、あの子も今年十七になるし、もう両親が揃っていなくても大丈夫だと思ったのよ。」
由香里は澱みのない言葉で自らの思いを隆之に伝えた。
このタイミングで戻ったのには理由があった。
夫の隆之は普段海外にいるが、年末から一月の中旬までは日本ですごしている。
ただし、いつもは浮気相手の家に行き、自宅には一切戻らないのだが、今回は由香里が離婚の話し合いをしたいという内容のメールを送った為、隆之も了承し、愛人との愛の巣から、こちらに戻ってくることになった。
由香里と恵太は昼過ぎに自宅に到着したが、まだ隆之の姿はなかった。
「恵太
あらためて引越しの作業はするけど、とりあえず必要なものと捨てちゃっていいものを分けといて。」
「はーい」
恵太が返事をしたその時、ドアが玄関のドアが開く音がした。
由香里と恵太が玄関の方に目をやると、隆之が靴を脱ぎ上がってくるのが見えた。
冷え切った夫婦関係、そして一年ぶりの対面にもかかわらず、隆之は二人の顔を見ると
「おう、久しぶり」
と、平然と言った。
「おかえりなさい」
由香里もほぼ感情のない言い方で夫を出迎えた。
「おいおい、恵太
お前何ちゅーカッコしとるんだ」
神を伸ばし化粧をし、スカート姿の恵太に向かって、隆之は怒りとも呆れともつかぬ言葉を発した。
恵太は、相変わらず無理解の父の言葉に一切反応せず、無視して自分の部屋に入っていった。
一時は恵太を男らしく矯正しようとしていた隆之だったが、ここ何年かは息子にも妻にも一切の関心を持たなくなっており、それ以上圭太の事に言及する事はなかった。
今回の目的はただ一つ、由香里との離婚を少しでも有利に進めたい…その一心で自宅に舞い戻ってきたのだ。
早速、二人はテーブルを挟んで座り、話し合いを行うことにした。
「君からのメールで、何故こういう場が設けられたかは理解しているつもりだが…」
「こういう場?
ここは自分の家でしょ。
海外にいる時ならいざ知らず、日本にいる時なら毎日ここに帰ってきて顔を合わす事はごく普通の事じゃないの?」
「揚げ足を取らないでくれよ。
もう夫婦関係は破綻してんだから」
「破綻させたのはあなただけどね。
まあ、そんな事言っても今さら仕方ないわね。
本題に入りましょう。
メールで伝えたように、あなたと離婚したいの。」
「ほう。
あれだけ離婚を嫌がっていた君が、どういう心境の変化だ?」
「恵太の事を考えて離婚は良くないっていう思いだったけど、あの子も今年十七になるし、もう両親が揃っていなくても大丈夫だと思ったのよ。」
由香里は澱みのない言葉で自らの思いを隆之に伝えた。
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