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最期の別れ

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翌日の葬儀も淡々と執り行われ、出棺の時を迎えた。


棺の蓋を閉じてしまうと、もう顔を見られないと聞いた伊東家の三人は、光江の周りに花を手向け、そして生前に好きだった菓子なども置いた。


「お義母さん、よく頑張ったね…」

智は泣きながら、光江の頬を摩り、それを見た莉愛は子供のように声を上げて泣いた。

喪主の敦はグッと堪えるように正面を見据えていたが、そのうち堪え切れずに、ぽろぽろと涙をこぼし始め、肩を震わせた。


伊東家と吉川らによって棺は霊柩車に乗せられ、火葬場に向かうため、組合事務所の前の道を下っていった。

その場に残された参列者達は去り行く霊柩車に向かって静かに手を合わせた。




火葬場についた敦達は、皆無言でただ無為な時間を過ごしていたが、遺体が荼毘にふされたと、係の者が呼びに来たので、焼き場に向かった。

そして、敦と智が骨上げをし、骨壷に納め、自宅に戻ってきた。



「おかえりなさい、皆さん、お疲れ様でした。」

由香里が挨拶すると、敦も智もようやく笑みを浮かべて頷いた。


莉愛はすぐに自室に戻り、制服を脱ぎ、私服に着替えた。
部屋には恵太がいたが、そんな事はお構いなしで。


「莉愛ちゃん、大丈夫?」


恵太が心配そうに聞くと、莉愛は頷いて


「うん。もう大丈夫

恵太、色々ありがとう

もう、ウジウジするのやめるわ。そんな事しててもおばあちゃんは喜ばないし」


「うん。そうだね」

恵太は莉愛を慮るように、優しい口調で言った。


「恵太」


「何?」


「お正月は恵太と初詣に行こうって思ってたけど、行けなくなっちゃったわ」


「あ、そうか」


「うん。
私も大人しくしとくよ。
何かする元気もないし…」


「莉愛ちゃん

冬休みが終わって、莉愛ちゃんが寮に戻ってたら、もう春まで会えないんだよね」


「そうだね
次帰るのは春休みだし」


「えっと、トモちゃんがここを出て行くのって、いつかはまだ決まってないって言うけど、そんな先じゃないって思うのよね。

そしたらワタシも一緒について行くつもり…

そうなったら、莉愛ちゃんはどっちの家に帰るの?」


「うーん…この家にも愛着あるし、パパも好きだし、由香里さんもすごく良い人だと思うけど…
やっぱりママの家に帰ると思う。

それがどうかした?」


「それだったら、多分…莉愛ちゃんとまた会えると思うし、全然良いんだけど…
でも、もし…会えなくなったら、寂しいなって。」   


「それはそうだね」


「莉愛ちゃん、ワタシと一生のお友達でいて。
もし、会えなくなったとしても、きっとまた会えると思うし。」


「今の時代、携帯もあるし、会おうと思えばいつでも会えるよ。
恵太も大げさだね。

でも、気持ちはよくわかるよ。

一生友達でいよう。

アンタは私の初体験の相手なんだからね」


莉愛はそう言って笑った。
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