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一身上の都合
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「だから、あっちゃんは由香里さんと一緒になるって言ってるのよ。」
「ちょっと待て待て、どうして敦とその由香里ってのが一緒になるんじゃ」
「愛し合ってるからよ」
「トモ、お前と敦だって仲が良かったし、愛し合ってたじゃろ?」
「それは、うん…
自信をもって言えるよ
でも…だからこそ、あっちゃんにはこれからの人生をワタシみたいなニューハーフと暮らさずに、フツーの人生を生きて欲しかったの。」
「トモ…
お前さんは離婚してどうする?」
「ワタシ?
東京に出ようと思ってる。」
「そうじゃな、トモは都会の子じゃから、こんな田舎の暮らしはつまらんもんな。」
「ううん。
そんな事ないよ。ここでの生活はすごく楽しくて充実してた。
良ちゃんにも出逢えたしね。」
「ワシもトモには年甲斐もなく夢中になってしもて、色々無理ばかり頼んでしまったな。
でも、ここを去るとなると、寂しくなるなあ。」
「ありがとう、良ちゃん
今日はそんな気にならないけど、出て行くのもうは少し先だし
また愛し合えるよ。」
「ああ、そうじゃな。
ワシも歳も歳だし、トモがここを離れていったら打ち止めじゃな。」
「良ちゃんは元気だから、まだまだ現役を続けられるよ」
智は吉川にそう言って笑った。
智は通夜と葬儀の全ての段取りを終えて家に戻ると、そちらの方も一段落したようで、皆が座って休んでいた。
「おかえりなさい、智さん」
由香里が出迎えると、莉愛も恵太も玄関に出てきた。
「ただいま
由香里さん、何もかも押し付けてしまってごめんなさいね」
「いえ、私は大丈夫です。
ご飯ができてますので」
「ありがとうございます
すいません」
奥の部屋から敦も出てきた。
「智、おかえり
色々済まない」
「いえ、ワタシは。
ちゃんとご飯食べた?」
「ああ、食べたよ。
キミもちゃんと食べるんだよ。
生きてる人間の方が大事だし、こんな事でダウンしたら元も子もないからね。」
「うん、ありがとう」
智はそう言うと洗面所に消えた。
慌ただしい一日が終わりを迎え、明日からさらに忙しい二日間がやってくる。
皆、少し早めに就寝するようにし、それぞれが自分たちの部屋に入った。
「莉愛ちゃん、この度は色々大変だったね。」
「うん…」
伊東家の中で一番落ち込みの激しい莉愛は、元気なくベッドに腰掛けた。
「私が早く起きてたら、間に合ったかもしれないんだよ
本当に情けない…」
「莉愛ちゃんは悪くないよ。
きっとそれも運命だったと思うよ。」
「…
優しいんだね、恵太は」
「そんなことないけど」
「ちょっと泣いてもいい?」
「いいよ」
莉愛は目の前に立つ恵太の胸にしがみつき声をあげて泣き出した。
「恵太、こういうとき胸がないほうがいいよ」
莉愛は恵太の胸の膨らみを少し邪魔に思いながら涙混じりの声で言ったのだった。
「ちょっと待て待て、どうして敦とその由香里ってのが一緒になるんじゃ」
「愛し合ってるからよ」
「トモ、お前と敦だって仲が良かったし、愛し合ってたじゃろ?」
「それは、うん…
自信をもって言えるよ
でも…だからこそ、あっちゃんにはこれからの人生をワタシみたいなニューハーフと暮らさずに、フツーの人生を生きて欲しかったの。」
「トモ…
お前さんは離婚してどうする?」
「ワタシ?
東京に出ようと思ってる。」
「そうじゃな、トモは都会の子じゃから、こんな田舎の暮らしはつまらんもんな。」
「ううん。
そんな事ないよ。ここでの生活はすごく楽しくて充実してた。
良ちゃんにも出逢えたしね。」
「ワシもトモには年甲斐もなく夢中になってしもて、色々無理ばかり頼んでしまったな。
でも、ここを去るとなると、寂しくなるなあ。」
「ありがとう、良ちゃん
今日はそんな気にならないけど、出て行くのもうは少し先だし
また愛し合えるよ。」
「ああ、そうじゃな。
ワシも歳も歳だし、トモがここを離れていったら打ち止めじゃな。」
「良ちゃんは元気だから、まだまだ現役を続けられるよ」
智は吉川にそう言って笑った。
智は通夜と葬儀の全ての段取りを終えて家に戻ると、そちらの方も一段落したようで、皆が座って休んでいた。
「おかえりなさい、智さん」
由香里が出迎えると、莉愛も恵太も玄関に出てきた。
「ただいま
由香里さん、何もかも押し付けてしまってごめんなさいね」
「いえ、私は大丈夫です。
ご飯ができてますので」
「ありがとうございます
すいません」
奥の部屋から敦も出てきた。
「智、おかえり
色々済まない」
「いえ、ワタシは。
ちゃんとご飯食べた?」
「ああ、食べたよ。
キミもちゃんと食べるんだよ。
生きてる人間の方が大事だし、こんな事でダウンしたら元も子もないからね。」
「うん、ありがとう」
智はそう言うと洗面所に消えた。
慌ただしい一日が終わりを迎え、明日からさらに忙しい二日間がやってくる。
皆、少し早めに就寝するようにし、それぞれが自分たちの部屋に入った。
「莉愛ちゃん、この度は色々大変だったね。」
「うん…」
伊東家の中で一番落ち込みの激しい莉愛は、元気なくベッドに腰掛けた。
「私が早く起きてたら、間に合ったかもしれないんだよ
本当に情けない…」
「莉愛ちゃんは悪くないよ。
きっとそれも運命だったと思うよ。」
「…
優しいんだね、恵太は」
「そんなことないけど」
「ちょっと泣いてもいい?」
「いいよ」
莉愛は目の前に立つ恵太の胸にしがみつき声をあげて泣き出した。
「恵太、こういうとき胸がないほうがいいよ」
莉愛は恵太の胸の膨らみを少し邪魔に思いながら涙混じりの声で言ったのだった。
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