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手紙

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俊之が懐から取り出し、智に手渡したのは手紙だった。

「これは?」

「奈々が莉愛に向けて書いた手紙だよ。」

「‥いつの間に」

「おそらく、癌の宣告をされ、病院に入るまでの期間に書いたのだろう。」

智は慌てて、その手紙を開いた。

手紙には莉愛が理解できる年齢になる小学生になったら、すぐに読めるように、全てひらがなで記されていた。

智は手紙に目を通すと、暫くの間、固まっていたが、やがて
嗚咽しながら泣き出した。

手紙は莉愛に、自分が病気でいなくなる事と、智が女性として生きることへの理解をして欲しいという内容を子供がわかるように丁寧に書かれており、最後に、智と莉愛で幸せに暮らして欲しいと書いてあった。

「私も妻も、その手紙の事は全く知らなかったんだが‥
おそらく、莉愛の持っている絵本か何かに挟んであったのだろう。

莉愛は小学校に入り、ある程度文章が理解出来るようになってから、その手紙を発見したようで、何回も読み返し、君に会いたいと言ってきた。」

「‥」

「私も妻も驚いたが、話を逸らしたりして、まともに取り合おうとはしなかった。

莉愛は現状をよく認識出来ているようだ。
君に託しても問題はないと思う。」

智は涙をハンカチで拭きながら顔を上げた。

「わかりました。
莉愛は私が責任を持って育てます。

ご安心下さい。」


「ありがとう」

俊之は小さな声で言い、静かに頷いた。











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