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美智香

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「あ、初めまして
後藤和俊と申します。」

和俊は、智の姉美智香と会うなり、緊張した面持ちで深々と頭を下げた。

「智の姉、佐藤美智香です。
よろしくお願いします。」

三人は美智香が泊まっているホテルの1階にあるカフェに移動した。

「あの、ウチの弟‥いや、妹
あ、やっぱり弟か

智と結婚していただけるってお聞きしたんですが、本当にいいんですか?」

「はい。結婚の申し込みは私の方からしました。
智さんの事を心から愛しています。」

「そう言って頂けると気が楽になります。
でも、ご両親の方は‥」

「ウチの両親もすごく喜んでくれてて、智さんも、もう、お母さんて呼んでくれているんですよ。」 

「えーっ!
厚かましいわね、智」

美智香が呆れた表情で智の方を見ると

「ごめんなさい‥」

と、智は気恥ずかしそうに首をすくめた。

「和俊さん。
私達姉弟は早くに両親を亡くし、母については、智がまだ三歳になる頃にはいなかったので、この子は母親というものを写真でしか知らないんです。

智が男性として生きる事をやめ、女性になるきっかけとなったのは、勿論生まれついてのものもあったでしょうが、最初にメイクして女装したとき、あまりにも亡くなった母に似ていたからだと聞いたことがあるんです。

実際、今の智は母に生き移しで、私も久しぶりに会って、ドキッとしてしまいました。」

「そうだったんですか。」

「でも、やはり生まれついての女性ではない智と結婚するとなると、色々問題が出てくると思います。

和俊さんに苦労ばかりかけるとは思いますが、どうか智を宜しくお願い致します。」


「お姉さん、大きな事は言えませんが、智さんを愛する気持ちについては誰にも負けないつもりです。
私自身、仕事で失敗したくらいで引きこもりになったりと、とても弱い人間でした。

そんなとき、私の心を救ってくれたのはここにいる智さんだったんです。

それに報いるためにも、私も一生かけて智さんを支えていきますので、結婚する事をお許し下さい。」

「許すも何も、和俊さんにそこまで言ってもらえて、私からこれ以上言うことはありません。
あとは二人で幸せな家庭を築いて行って下さいね。

だよね?智」

「うん。ありがとう、お姉ちゃん。
ワタシ、カズと力を合わせて頑張ります。」

智は照れくさそうに顔を赤らめて言った。
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