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追及

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社員旅行で自分が何をしたか、わからないまま時は過ぎ、智はスッキリしない日々を送っていた。

貴島の智に対する態度も以前と変わらず、働く分には何も問題なかった。

だが、智は気になって仕方がなく、仕事も手につかず、ちゃんと聞かなければならないと思い始めていた。

そんな思いを持ち続けて、半月ほどが経った時、貴島と智は二人で都心の百貨店に出向き、そのまま直帰する事となった。店を出て、駅の改札までの僅かな時間、意を決した智は、隣を歩く貴島に声をかけた。

「課長、ちょっとお話があるんですが」


「ん?」

貴島は一瞬、ハッとしたような顔をしたが、すぐに平静を取り戻し

「それだったら、ちょっと飲みに行って話そうか。」

と、言った。

「いいんですか?」

「その代わり、あんまり飲むなよ。
放置して帰るからな」

貴島はそう言って笑った。

二人は改札を抜けずにそのまま左側のエスカレーターで一階に降りた。

「ここでいい?」

貴島は目の前にあった大衆居酒屋を指さして言った。

「はい。」

二人は奥のテーブル席に通され、とりあえず生ビールを二つ頼んだ。

ビールが来て乾杯すると、貴島が適当に四品ほどのツマミを頼み、全部来たところで、話を始めた。

「で、話って?
と言いたいところだけど、キミの聞きたい事はわかってる。
旅行のときの事だろ?」

「はい。そうです。」

「あのとき、俺が温泉に入って部屋に戻ってくると、キミは酔い潰れて寝てたんだ。

よく見ると浴衣がはだけてて、その、胸が見えたんだ。」

「やっぱり、そうでしたか」

「そしたら、キミが目を覚まして、まあ、後の事はなんとなくわかるよね?」

「本当に申し訳ございません」

智は泣きそうになりながら深々と頭を下げた。

「おいおい、やめてくれよ、何も謝る事ないだろ
それよりも、よかったら話を聞かせてくれよ。
何か事情があるんだろ?」

貴島の優しげな言い方に、智は余計に申し訳なく思った。

「ワタシ、元々女装とか、女になりたいとか、全く思ってなくて、フツーの男として学生生活を送り、早くに結婚もしました。

でも、妻に、夫として男として熱が感じられないって言われたんです。
ショックでしたけど、核心を突かれたと思いました。

離婚後、ワタシは自分の正体を知りました。

自分が男性であるという性自認は変わりませんでしたが、その上で自分の性を変えたいと思ったんです。

ワタシは仕事を辞めて、ニューハーフとして生きる事を決めました。」

智の告白を貴島は神妙な面持ちで聞き、静かに頷いた。
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