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真相

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ホテルをチェックアウトした一行は松山市内観光に出かけた。

松山城の天守閣で写真を撮ったり、皆、思い思いにすごしていたが、智だけは市内が一望出来る場所にあるベンチに腰掛け、浮かない顔をしていた。

二日酔いの事もあったが、昨夜、自分が貴島に何かしていたとすれば‥

もう終わりである。

せっかく働き甲斐のある職場だったが、辞めなければいけない。

そんな事を考えると一気に憂鬱な気分になった。

「吉岡君」

智を呼ぶ声が聞こえ、顔を上げると、貴島が立っていた。

「ほら、水。」

貴島は手に持っていたミネラルウォーターを智に手渡した。

「あ、すいません
ありがとうございます。」

「大丈夫か?顔色悪いよ」

「昨日調子乗って飲み過ぎました。」

智はバツ悪そうに言って自嘲気味に笑った。

「あ、課長」

「ん?」

「さっきも言いましたけど、僕、昨日の事全然覚えてなくて‥

本当に課長に失礼な事したり、言ったりしてないですか?」

智の言葉に、貴島は頷き

「ああ。ないよ

俺が温泉から戻ったら、キミ、寝てたし」

そう言って笑った。

「それならいいんですけど」

智は貴島の言葉を聞いてもまだ安心できず、不安を抱えたままだった。

結局、真相を知る事なく、家路についた智は悶々としながら、その後も安心できない生活を送ることとなった。
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