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新章〜新たなる潮流〜
刺客
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多村は、多村洋子と名乗り、大友組の中で、姐さんと呼ばれ、組の切り盛りを任されていた。
極道になるべくして生まれて来たとまで言われた人物だけあって、女の体になっても、その才覚は衰える事なく、大友組の勢力拡大に貢献していた。
その日も、組事務所に顔を出した多村は忙しく、自分の部屋から指示を出していた。
そこに、ドアがノックされ…
「なに?入りなさい」
多村が声をかけると、若手の山田がドアを開け、頭を深々と下げた。
「姐さん、お客様がお見えです。」
「かまわないわ。通して。」
多村がそう言うと、山田の後ろから何者かが顔を覗かせた。
「キム!」
客人は、かつて多村の子飼いであったキムだった。
「キム、久しぶりじゃない
アンタ、元気にしてたの」
「ええ、まあ
それより、オヤジが姐さんになってんのには驚きましたぜ。」
「まあ、これは亮輔に嵌められて性転換されたんだけど、案外この体がワタシに合ってたっていうかね。」
「ワタシって…
なんかカンが狂いますわ」
キムはすっかり身も心も女になってしまった多村を見て笑った。
「そんな事より、準備は整ってるの?
前みたいな失敗は今度は絶対に許さないからね。」
「それは肝に銘じてます。
前回は、不本意な結果に終わり、手付金しかもらえなかったんですから。
俺は金が全てだと思ってます。
金しか信用してません。
だから、俺に金を与えてくれる人間だけを信用し、忠誠を誓います。」
「それは心配しないで。
大友も資産家だし、ワタシだって金には困っていないわ。
とにかく、沢木組を潰す事、大西、亮輔を殺す事、これだけは絶対に譲れない。
綾香はもはやどうでもいいわ。
女になったら、ワタシの中の綾香への嫉妬心と復讐心も消えたし。
多喜もどっちだっていい。
アイツは真面目でお人好しだから、あの時だってワタシに銃口を向けながら、撃つ事が出来なかった。
たとえ、亮輔と打ち合わせなく、単独でワタシのところに来たとしても、撃つ事は出来なかった筈よ。
多喜とはそういう男。
女になるとね、そういう男の優しさにグッと来ちゃうのよ。」
多村は顔を赤らめて言った。
「ほう、変われば変わるもんですなあ」
「フンッ
こんな体になっても怒りと復讐心に些かの衰えもないわ
キム、アンタからの良い知らせをここで待ってるわ。
でも、焦る必要は何もないわよ。
機を見ることが大切。そのためには多少時間がかかることは仕方ないと思っているから。」
「まあ、期待していて下さい。
今は兵隊を集めてる最中です。
すぐにとはいきませんが、そのうちテレビや新聞が騒ぎ立てるような事件が起きますから。」
「それは楽しみね。」
多村はニヤリと笑った。
極道になるべくして生まれて来たとまで言われた人物だけあって、女の体になっても、その才覚は衰える事なく、大友組の勢力拡大に貢献していた。
その日も、組事務所に顔を出した多村は忙しく、自分の部屋から指示を出していた。
そこに、ドアがノックされ…
「なに?入りなさい」
多村が声をかけると、若手の山田がドアを開け、頭を深々と下げた。
「姐さん、お客様がお見えです。」
「かまわないわ。通して。」
多村がそう言うと、山田の後ろから何者かが顔を覗かせた。
「キム!」
客人は、かつて多村の子飼いであったキムだった。
「キム、久しぶりじゃない
アンタ、元気にしてたの」
「ええ、まあ
それより、オヤジが姐さんになってんのには驚きましたぜ。」
「まあ、これは亮輔に嵌められて性転換されたんだけど、案外この体がワタシに合ってたっていうかね。」
「ワタシって…
なんかカンが狂いますわ」
キムはすっかり身も心も女になってしまった多村を見て笑った。
「そんな事より、準備は整ってるの?
前みたいな失敗は今度は絶対に許さないからね。」
「それは肝に銘じてます。
前回は、不本意な結果に終わり、手付金しかもらえなかったんですから。
俺は金が全てだと思ってます。
金しか信用してません。
だから、俺に金を与えてくれる人間だけを信用し、忠誠を誓います。」
「それは心配しないで。
大友も資産家だし、ワタシだって金には困っていないわ。
とにかく、沢木組を潰す事、大西、亮輔を殺す事、これだけは絶対に譲れない。
綾香はもはやどうでもいいわ。
女になったら、ワタシの中の綾香への嫉妬心と復讐心も消えたし。
多喜もどっちだっていい。
アイツは真面目でお人好しだから、あの時だってワタシに銃口を向けながら、撃つ事が出来なかった。
たとえ、亮輔と打ち合わせなく、単独でワタシのところに来たとしても、撃つ事は出来なかった筈よ。
多喜とはそういう男。
女になるとね、そういう男の優しさにグッと来ちゃうのよ。」
多村は顔を赤らめて言った。
「ほう、変われば変わるもんですなあ」
「フンッ
こんな体になっても怒りと復讐心に些かの衰えもないわ
キム、アンタからの良い知らせをここで待ってるわ。
でも、焦る必要は何もないわよ。
機を見ることが大切。そのためには多少時間がかかることは仕方ないと思っているから。」
「まあ、期待していて下さい。
今は兵隊を集めてる最中です。
すぐにとはいきませんが、そのうちテレビや新聞が騒ぎ立てるような事件が起きますから。」
「それは楽しみね。」
多村はニヤリと笑った。
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