191 / 387
再起編
光脈
しおりを挟む
「多喜が戻ってきたらと思い、あのキャバクラだけは何とか守り通してきたんだかな。」
「すいません…」
「いや、いいんだ。
ただ、もうオヤジに恐怖することもないだろうから、働きやすい環境だと思うが。」
「オヤジはもう大丈夫なんすか?
また復讐の機会を待っているとかは、ないんですかね」
「それは大丈夫だろう。
性転換して女の姿で刑務所に入っちまったからな。
噂によると、受刑者は勿論のこと、看守にまでいじめられてかなり苦労してるそうだ。」
「看守にも…」
「ああ。あれだけ大きな事件を起こしたんだ。
そりゃ目を付けられるさ。」
「オヤジの事だから、その恨みを力に変えてまた暴れ出すかもしれませんね。」
「まあ、その可能性もあるが、まだ何年か服役するだろうし、そこまで闘志が保つかどうかだな。」
「なるほど…」
「あ、そうだ
薫さんの事で、お前に言わなきゃならねえ事があったんだ。」
「えっ、薫が?
どうしたんですか?」
「見つけたよ、ほんの最近の事だけどな」
「えっ、それは…
本当ですか!?」
半ば諦めかけていた薫の名前が大西の口から出た為、多喜は大いに動揺した。
「神戸の病院を出てから、全然行方がわからなかったんだが、大阪に戻ってたよ。」
大阪に…
それで、薫の状態は?」
「気持ちの強い人だから、あれだけの量を打たれて廃人同様にされても、再び自分からまたクスリに手を出すことはなかったが…
やはり、ずっと酷い後遺症に悩まされてな、体重もなかなか戻んねえし…
お前からの手紙は全部目を通してたそうだが、こんな状態で会うわけにはいかないと、薫さんの方からお前に連絡する事はなかったんだよ。」
「そうだったんですか…
薫は無事なんですね…
よかった…」
多喜は、涙をぽろぽろ流しながら何度も頷いた。
「お前ら、リアクションが同じだな。
薫さんにお前が出所する事を伝えたら、今のお前みたいに泣き出しちまってな…」
「…」
「会いに行くか?」
「でも、薫が会いたくないって…」
「本心は会いたいに決まってんだろ。
薫さんにはお前が今日出所する事は伝えてあるよ」
「…」
「お前、ムショに入る前に薫さんに会いに行っただろ?」
「えっ、はい」
「あの頃の最悪の状態を俺も見て知ってるが、今の状況は、最初の頃に比べると見違えるほど改善してるぜ。
本人も相当努力したんだろうな。
だから、薫さんも今ならお前の前に姿を現しても大丈夫だって、内心は思ってるはずだ。」
「薫はどこに?」
「もし、お前に今の彼女を受け入れる覚悟があるなら、二人の思い出の場所に行け。
そこで待ってるってよ。」
「思い出の…場所…」
多喜は俯き、しばらく考えていたが…ハッとして、すぐに顔を上げた。
「すいません…」
「いや、いいんだ。
ただ、もうオヤジに恐怖することもないだろうから、働きやすい環境だと思うが。」
「オヤジはもう大丈夫なんすか?
また復讐の機会を待っているとかは、ないんですかね」
「それは大丈夫だろう。
性転換して女の姿で刑務所に入っちまったからな。
噂によると、受刑者は勿論のこと、看守にまでいじめられてかなり苦労してるそうだ。」
「看守にも…」
「ああ。あれだけ大きな事件を起こしたんだ。
そりゃ目を付けられるさ。」
「オヤジの事だから、その恨みを力に変えてまた暴れ出すかもしれませんね。」
「まあ、その可能性もあるが、まだ何年か服役するだろうし、そこまで闘志が保つかどうかだな。」
「なるほど…」
「あ、そうだ
薫さんの事で、お前に言わなきゃならねえ事があったんだ。」
「えっ、薫が?
どうしたんですか?」
「見つけたよ、ほんの最近の事だけどな」
「えっ、それは…
本当ですか!?」
半ば諦めかけていた薫の名前が大西の口から出た為、多喜は大いに動揺した。
「神戸の病院を出てから、全然行方がわからなかったんだが、大阪に戻ってたよ。」
大阪に…
それで、薫の状態は?」
「気持ちの強い人だから、あれだけの量を打たれて廃人同様にされても、再び自分からまたクスリに手を出すことはなかったが…
やはり、ずっと酷い後遺症に悩まされてな、体重もなかなか戻んねえし…
お前からの手紙は全部目を通してたそうだが、こんな状態で会うわけにはいかないと、薫さんの方からお前に連絡する事はなかったんだよ。」
「そうだったんですか…
薫は無事なんですね…
よかった…」
多喜は、涙をぽろぽろ流しながら何度も頷いた。
「お前ら、リアクションが同じだな。
薫さんにお前が出所する事を伝えたら、今のお前みたいに泣き出しちまってな…」
「…」
「会いに行くか?」
「でも、薫が会いたくないって…」
「本心は会いたいに決まってんだろ。
薫さんにはお前が今日出所する事は伝えてあるよ」
「…」
「お前、ムショに入る前に薫さんに会いに行っただろ?」
「えっ、はい」
「あの頃の最悪の状態を俺も見て知ってるが、今の状況は、最初の頃に比べると見違えるほど改善してるぜ。
本人も相当努力したんだろうな。
だから、薫さんも今ならお前の前に姿を現しても大丈夫だって、内心は思ってるはずだ。」
「薫はどこに?」
「もし、お前に今の彼女を受け入れる覚悟があるなら、二人の思い出の場所に行け。
そこで待ってるってよ。」
「思い出の…場所…」
多喜は俯き、しばらく考えていたが…ハッとして、すぐに顔を上げた。
4
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる