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再起編
帰還
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多喜と大西を乗せた車が事務所に到着した。
「疲れてるところ悪いが、ウチの連中がお前に会いたいって言っててな。
少しだけ顔出してくれるか?」
「ええ。それは勿論」
車を降りて前を歩く大西に向かって、多喜は頭を下げながら言った。
「ここがウチの事務所だ。
つってもお前もよく知ってるよな。
キャバの二階の事務所を改装してそのまま使ってんだから。」
「そうっすか、ここが大西組の事務所なんですね。
なんか懐かしいなあ」
多喜は自分の元職場を見つめながら、感慨深げに言った。
大西は二階の事務所のドアを開けると、中に向かって
「おい、多喜が長いお勤めを終えて帰還されたぞ!」
と、大声で言った。
事務所にいた4、5人の男達が一斉に入り口の方を向くと、多喜の姿を見て駆け寄って来た。
「多喜!」
「みなさん、おかげさまで本日出所することができました。
ありがとうございます」
多喜は皆に向かって深々と頭を下げた。
「何言ってんだよ、礼を言うのは俺たちの方だ。
お前のおかげで、こうやって組も存続できたし、俺たちもヤクザを続けられてるんだ。
感謝しても仕切れない。」
かつて、大西と共に多村組の中心にいた片山が言った。
「いえ、自分は何も…」
多喜は恐縮してまた頭を下げた。
「多喜さん、出所おめでとう」
片山の後ろから、一際甲高い声で多喜に声をかけてきた人物がいた。
「綾香さん…?」
多喜の目の前には綾香が立っていた。
一瞬、亮輔かと思ったが、声と体つきが女性だったので綾香に間違いなかった。
「綾香さん、ご無沙汰しています。
てっきり亮輔と一緒に、どこか遠くにいるものだと思っていました…
あの、亮輔は?」
綾香はその問いかけに頷き
「一緒よ」
と、答えた。
「そうですか…元気にやってるんですね
本当に良かった…」
多喜は思いもしなかった綾香との再会を喜んだ。
しかし…
そのやり取りを見ていた大西が、少し間を置いて、会話に割り込んできた。
「多喜、言ってなかったんだが…
コイツは綾香さんじゃなくて、亮輔だ」
「えっ
亮輔?」
多喜は大西の言葉が理解できなかった。
「亮輔、とぼけてねーでちゃんと多喜に説明してやれ」
大西が言うと、亮輔と呼ばれた綾香似の女が笑い出した。
「ごめんね、多喜
ワタシ、亮輔なの」
「いや、あの、女の体だし…」
「例の薬でね
また性転換して女になったのよ」
「えっ…
ウソ…
なんで?」
「やっぱり女として暮らしてた時期のことがどうしても忘れられなくて…
今年、三十になったのを機に、もう一度女にね」
亮輔はそう言って、また笑った。
「疲れてるところ悪いが、ウチの連中がお前に会いたいって言っててな。
少しだけ顔出してくれるか?」
「ええ。それは勿論」
車を降りて前を歩く大西に向かって、多喜は頭を下げながら言った。
「ここがウチの事務所だ。
つってもお前もよく知ってるよな。
キャバの二階の事務所を改装してそのまま使ってんだから。」
「そうっすか、ここが大西組の事務所なんですね。
なんか懐かしいなあ」
多喜は自分の元職場を見つめながら、感慨深げに言った。
大西は二階の事務所のドアを開けると、中に向かって
「おい、多喜が長いお勤めを終えて帰還されたぞ!」
と、大声で言った。
事務所にいた4、5人の男達が一斉に入り口の方を向くと、多喜の姿を見て駆け寄って来た。
「多喜!」
「みなさん、おかげさまで本日出所することができました。
ありがとうございます」
多喜は皆に向かって深々と頭を下げた。
「何言ってんだよ、礼を言うのは俺たちの方だ。
お前のおかげで、こうやって組も存続できたし、俺たちもヤクザを続けられてるんだ。
感謝しても仕切れない。」
かつて、大西と共に多村組の中心にいた片山が言った。
「いえ、自分は何も…」
多喜は恐縮してまた頭を下げた。
「多喜さん、出所おめでとう」
片山の後ろから、一際甲高い声で多喜に声をかけてきた人物がいた。
「綾香さん…?」
多喜の目の前には綾香が立っていた。
一瞬、亮輔かと思ったが、声と体つきが女性だったので綾香に間違いなかった。
「綾香さん、ご無沙汰しています。
てっきり亮輔と一緒に、どこか遠くにいるものだと思っていました…
あの、亮輔は?」
綾香はその問いかけに頷き
「一緒よ」
と、答えた。
「そうですか…元気にやってるんですね
本当に良かった…」
多喜は思いもしなかった綾香との再会を喜んだ。
しかし…
そのやり取りを見ていた大西が、少し間を置いて、会話に割り込んできた。
「多喜、言ってなかったんだが…
コイツは綾香さんじゃなくて、亮輔だ」
「えっ
亮輔?」
多喜は大西の言葉が理解できなかった。
「亮輔、とぼけてねーでちゃんと多喜に説明してやれ」
大西が言うと、亮輔と呼ばれた綾香似の女が笑い出した。
「ごめんね、多喜
ワタシ、亮輔なの」
「いや、あの、女の体だし…」
「例の薬でね
また性転換して女になったのよ」
「えっ…
ウソ…
なんで?」
「やっぱり女として暮らしてた時期のことがどうしても忘れられなくて…
今年、三十になったのを機に、もう一度女にね」
亮輔はそう言って、また笑った。
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