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鹵獲編

計画遂行

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翌日、多村組から大阪に派遣されてきた五名の組員、そして多村に亮輔、多喜、多村のボディーガード二名の計十名が、事務所に一堂に介していた。

「みんな、ご苦労。
集まってもらったのは他でもねえ。

俺に不義理をしたヤツを一名、これから拉致し、ここに連れてくる。」

「不義理、ですか?」

大西が意外な顔をして質問した。

「ああ、こんだけの人間でどうこうするほどのもんじゃねえけどな、小娘一人に。
だが、バックには沢木組が付いてる。
それだけは忘れるな。」

「その小娘って、一体誰なんですか?」

今度は片山が質問した。

「綾香だよ。」

多村は少しイラついた表情で答えた。

「えっ?綾香って‥」

多村組からの五名が一斉に、亮輔に視線を向けた。

「お前らには伝えてなかったが、本物の綾香は結婚式の直前に俺から逃げやがって、今は沢木の組長に囲ってもらってるそうだ。

ここにいるのは、綾香の影武者だよ。

なあ、亮輔。」

「はい‥」

亮輔は無表情で短く返事した。
わかっていた事とはいえ、影武者と言われた事に深く傷つきながら‥

「まあ、綾香については、今は愛情の欠片もねえ。だが、あまりにもナメた事をしてくれたから、それなりの罰は与えなきゃならねえと思ってる。

亮輔は、一度は俺に不義理をしやがったから、制裁を加えて、男では無くなっちまったが、それでも組の仕事がやりたいって泣きついてきてな、もう一度チャンスをやったんだよ。
お前らも知ってる通り、綾香の影武者どころか、本当によくやってくれてる。
だから、俺は、亮輔を妻として側に置くことにしたんだよ。」

大西は、その話を頷いて聞いていたが、すぐに何かを思い立ったように、口を挟んだら。

「オヤジ、いや、社長、話はよくわかりました。松山が組に戻ってたのは、かなり驚きましたが‥

でも、その本物の綾香って女、沢木組に囲われてるって言いましたよね。
きっちりボディーガードが付いているんじゃ?」

「最近は緩くなってるさ。調べはもうついてる。
そのために、これまで何もせずに我慢してきたんだからよ。
何の問題もなく成功する。ウチの中に裏切り者がいなければ、の話だがな。」

「‥」

多喜と亮輔は、俯いてしまった。

「多喜、専務、お前らは何もしなくていい。
ここでじっと待ってろ。
お前らは裏切れんようにここに呼んだだけだしな。」

「‥」

亮輔は、昨日の事を思い出していた。
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