ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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鹵獲編

嵐の前

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多村と亮輔が大阪に来てから、既に二週間が経過し、二人共まだ東京に戻ろうとはしていない。

それどころか、大西、片山という亮輔や多喜の兄貴分にあたる中堅どころを含む五名の組員が、大阪入りした。

大西、片山は共に三十代前半のイキがいい極道で、大西は色黒で短髪、大きな目が特徴のワイルド系で、片山は色白でサラサラヘアーで切れ長の瞳と薄めの顔立ちが特徴的で、一見すると、神経質そうに見えた。

「おう、多喜、久しぶりだな。
元気にしてたか?」

大西は事務所に入るなり、多喜を見つけ、声をかけた。

「兄貴、お久しぶりです。
なんとか元気にやってます。」

片山はそのやり取りを黙って聞いていたが、思わず口を挟み込んできた。

「それにしても、多喜、お前、なんちゅーチャラい服装してんだよ。
極道なら極道らしく、俺みたいなストライプのスーツ着んかいっ!」

「そんなカッコしたら、店の女の子から怖がられてしまいます。
今どきの服装に俺のファニーなフェイスがあるから何とかやれてるんですよ。」

「ほう、時代は変わったのう。
まあ、いい。
ところでオヤジと姐さんはどこにおられる?」

「兄貴、ここは多村興業の事務所ですよ。
社長と専務ですから、そうお呼び下さい。」

「ああ、そうだったな。
社長と専務はどうした?」

「社長は、立正会との会合に参加してますので不在です。
専務は、最近ご多忙でしたので、今日はホテルで静養なさってます。

そんなことより、社長から、今日は、皆さんを接待してやれと仰せつかっております。」

「おっ、オヤジも優しいとこあるじゃねえか。」

大西の表情が忽ち明るくなった。

「でも、明日から忙しくなるから、覚悟しとけっていう伝言も頂いてますけど。」

「やっぱり変わってねえか。」

片山は不満そうに呟いた。

多喜は元は色街にあった娼館を、現在は料亭として使っている店に案内し、その後、事前に用意したコンパニオン?をあてがった。

これが束の間の休息だということは、誰の目にも明らかで、皆、心から楽しむことは出来なかった。

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