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沢木組編

昏倒

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「オヤジは!?」 

薫は飛び起きようとしたが、肩の痛みが酷く、またベッドに沈み込んだ。 

側で座っていた功太は驚いて、立ち上がった。 

「兄貴!目を覚ましたんですね!!

よかった‥」

「功太‥オヤジは?」

「葬式は昨日終わりました…」 

「そ、葬式?」 

「はい。兄貴は一週間以上昏睡状態で… その間に葬式も滞りなく終わりました。」 

薫は呆然としながら呟いた。 

「死んだのか…」 

そして、薫の脳裏にあのときの光景が一瞬にして飛び込んできた。 


車から二つの銃口がこっちに向けられた瞬間、薫は沢木の前に両手を広げて立った。 

次の瞬間左肩に衝撃と熱さが襲い、すぐに痛みが来た。 

自分が撃たれたことを理解した薫は、後ろに倒れそうになったが、なんとか踏みとどまり、もう一度銃口に向けて体を正対した。

背中にはしがみつく沢木の手の感触があった。 

薫は次の銃撃に備えた… 

そこまでしか記憶にない。 

どうやら二発目の銃弾を受けて、気を失ってしまったらしい。 

「功太… 姐さんは大丈夫か?」 

「はい… 声もかけれんほど落ち込んではったんですけど… 今は家に居はります…」 

「そうか‥
で、立正会はどうなった!
犯人は捕まったのか」 

「いえ。俺も信じられんのですが、犯行には立正会は関係してないらしいんです。」

「そうか‥」

薫は俯いてそれ以上言葉を発することはなかった。 



薫が入院している間沢木組に様々な動きがあったようだが、薫は敢えて情報を得ず治療に専念した。 

三週間後、傷も癒えて退院の日を迎えた。 

薫は自宅にも組にも行かず、タクシーを呼び、すぐさま沢木の家に向かった。 

退院したら、小百合が家に来るように言っていると、人伝てに聞いていたからだ。 

家に着くと、少しやつれてはいるが、いつもと変わらぬ美しい小百合が出迎えてくれた。 

薫は小百合に深々と頭を下げると、沢木の遺影に向かって手を合わせた。
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