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亮輔は風呂から上がった後、多村に手料理を食べさせた。 

多村は亮輔の作った料理の一つ一つに驚き、そして感動した。 

「完璧だな。こんな料理どこで覚えた?」 

「実家に戻ってたとき、母親の特訓を受けました。」 

亮輔ははにかんだような笑顔で答えた。 

「いくら母親に教えてもらったとはいえ、元々何も出来なかったお前がここまでなるのに、相当苦労しただろ?」 

「いえ、退院してからかなりヒマでしたので、毎日料理を作っていました。 
いくらドジな私でも、これくらいのものなら簡単に作れるようになりますよ。」 

「そうか。」 

多村は満足そうに頷くと、ビールをグイッと飲んだ。 

「明日は少し早く出なければならんから、もう少ししたら寝るか。 
朝、向こうの家に寄って荷物を取りに行かなけりゃならんからな。」 

「そうなんですか…」 

「綾香には荷物の準備をしとくように言ってある。 
アイツも今夜は一人で寂しく寝ているだろうな。」 

多村は亮輔の嫉妬心を煽るような事を言って笑った。 

「…」 

確かに亮輔は多村を独占したいという気持ちが自分の中で日に日に大きくなっていくの感じていた。 

明日の夜になれば綾香はいなくなり、多村を独占することが可能になる… 

しかし、その後にやってくる多村の凄まじい怒りと、組同士の抗争にまで発展する可能性を考えると、亮輔の心の中はすぐに暗澹としたものに支配されてしまうのだった。 

「亮輔、どうした? 浮かない顔をして。 
今日は久々にお前を可愛がってやろうと思ってここに来たんだ。 
さあ、早く準備しろ。」 

「…あっ、はい。 
すぐに片付けちゃいますね。」 

亮輔はビクッとして立ち上がり、テーブルの上の皿を集めてキッチンに運んだ。 

明日の事は、また明日考えればいい… 
亮輔はキッチンで一人になると、心の中を駆け巡る不安を払拭するように頭を振った。 
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