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転職
しおりを挟む「その節は色々とご面倒をおかけしました…」
亮輔は大西に頭を下げた。
整形された顔にも驚いたが、キャミソールの隙間から3ヶ月前には存在しなかった豊満な胸の谷間が大西の目に入り、息を呑んだ。
「亮輔… これがオヤジの下した罰ってやつか…」
「はい。」
「亮輔って、お前亮輔なのかよ!?」
向こうで聞いていた若い組員が目を白黒させながら駆け寄ってきた。
「おう、多喜。」
多喜 真治は亮輔と同い年で、組でも一番仲が良くそしてライバルでもあった。
「信じられねえ… お前が亮輔なんて。」
「ヘタ打っちまったよ… 自業自得だけどな。」
亮輔は力無く笑った。
「まるっきり女じゃねえかよ…」
多喜は亮輔の姿を舐めるように見ては何度も首を傾げた。
「松山、組長がお呼びだ。」
ボディーガードが亮輔を中心に出来た輪に入ってきて腕を引っ張った。
多村の部屋に再びやって来た亮輔は、既に落ち着きを取り戻し、半ば開き直りの心境に変わっていた。
「おう、亮輔、連絡がついてな。すぐにお前を迎えに来るそうだ。」
多村は笑顔で葉巻をくゆらした。
「すいません。ところで、どんな仕事なんでしょうか?」
「ああ。そんな姿では力仕事も厳しいだろうと思ってな。
風俗に行ってもらうことにしたよ。」
「風俗?」
「そうだ。 ニューハーフヘルスってやつだ。」
「そ、そんな!」
落ち着きを取り戻したのはほんの束の間であった。
亮輔は慌てふためき、動揺の色を隠せなくなった。
「ニューハーフヘルスで俺が客の相手をするってことですか!?」
「ああ、そうだよ。手っ取り早く稼ぐには最高の仕事だ。
お前のそのルックスなら間違いなくトップになれる。
そうすれば、完済の道筋はあっさりとつくはずだ。」
多村は亮輔の顔を見てニヤリと笑った。
「俺にはムリです…」
泣きそうな声で亮輔は、首を横に振った。
「亮輔、それしか選択肢はねえんだよ。
悪あがきはよせ 。
おい、もう迎えに来たようだぞ。すぐに用意をしろ。」
有無を言わさせない多村のやり方は、既にシナリオが出来ているかのようであった。
しばらくすると、多村の部屋に胡散臭い風貌のニヤついた顔の男が入ってきた。
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