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一章 初夜

3 指々

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 やさしく頬を撫でる指が心地好くて、とろりとろりと意識が浮上する。

 気持ちいい。
 ぼやける視界に映る影を、夫だと思った。

「あなた……」

 よかった。帰ってきてくれた。
 指先にじんわりと血が通う。

 だが、これは本当に夫だろうか?

 よく似てはいるが、夫より少し眉が太く、目の光が強い。
 口角にうかぶ微笑は、夫とは似ても似つかぬ、酷薄な刃のようで──。

「あ……」

 ちがう。

「気がついたか」

 足元がガラガラと音を立てて崩れる感覚。
 ぽっかりとあいた虚無に、どこまでも墜ちていく。

 ああ、では、悪夢は現実だったのだ。

 手足が先からすうっと冷える。
 なまじ一度、安堵した分、絶望は深い。

 この義父に、酷くされて、夫にも見せたことのない痴態を晒して。
 挙げ句に、どれくらい気を失っていたのだろう。

「お、義父さま……。どうしてこんな」
「自分の状況が、ちゃんとわかっているようだな。では続けよう」

 身体の上に掛けられていた薄い上掛けが剥がれ、義父はまた彼女の膝を押し開いた。
 そこは、すでにさんざん嬲られて、蜜にまみれてべったりと濡れている。

「まだ前戯も序の口だというのに」

 薄く笑った義父の手は、夫とよく似ている。
 美しく大きく。節ばった長い指が、繊細に動く。

 その手に開かれて、ぱたりと。
 抵抗もなく開いた脚の奥を、風がすうっと抜けた。

「い、いやあっ」

 芽芯を執拗に弄られ、何度も何度も絶頂まで引きずり上げられた。
 そのたびに、暗い悦楽の底に叩きつけられ、身も心も粉々にされて。

「ふ。この半年で、よく仕込んだものだな」

 どうしてこんなことに、という答えのない問いばかりがこだまする。

「それとも、持って生まれた素質か? 顔は歳より幼げなくせに、こんな男好きのする身体をして」

 いつのまにか夜着はすっかり取り払われ、全裸の姿を義父の目に晒していた。
 ほっそりと小柄な身体に、華奢な肩。折れそうに細いくびれから、豊かに張り出した腰、すらりと伸びた腿。そして、たわわに熟れた果実のような胸のふくらみ。ふっくらとまるい白い乳房のてっぺんに、桜貝色の小さな蕾。まだ少女期を抜けきらない娘特有の危うさが、男心を妖しくくすぐる。

「だが、もう充分に女だ」

 と、前触れもなく、義父の指に、ずぶり、貫かれた。

「ふぁっ、んっ────ぅ」

 この夜のはじめからずっと、若い夫より遥かに手慣れた大人の技巧を、情け容赦なく振るわれ続けた。
 齢十五の若い身体は、ただ翻弄されるばかり。ただ官能に溺れるばかり。
 そして、素直な身体は、主の意志とはうらはらに、引き出される快楽になすすべもなく呑まれてしまう。男の手に応えてしまう。

「おお、食いちぎらんばかりだな。そんなに欲しかったか」

 中はもう、怖いくらいにぼってりと充血して、危ういほどにやわらかく膨らんで、やってくるものを待っていた。柔襞がいっせいにざわつき、ただ一本の指にむらがっていく。
 義父の言うとおり、充分すぎるほどに、女だった。

「ああ、んうぅ、や、いや……」

 義父の指を呑み込もうとして、ぐぷぐぷと。中で立つ淫らな音が、若妻の耳の中に鳴り響く。
 本当に耳で聞いているのか、身体の内側から聞こえるのかも、わからない。

「そうか。これは嫌か。では、これはどうだ? ん?」

 義父がぐりぐりと掻き回す。
 あん、あん、あん、と。
 涙と共にとめどなくこぼれる声を、楽しそうに聞きながら。
 じゅく。ちゅく。ちゅくっ。

「いやあぁ」

 どうしてこんなに感じてしまうの。
 どうしてこんなに気持ちいいの。
 夫との営みですら、こんなに淫らに乱れることはなかったのに。

「あ、あ、あ、いや、こ、な……」
「これも嫌か。可哀想に。もっと気持ちよくしてやらねば、お前もつらかろう。では、これは?」

 喉の奥で笑う気配と、ほしいまま貫く指と。

 可哀想などと、思ってもいないことは明らかだ。
 むしろ、そうして言葉を弄んで、面白がっているのだ。

 ぎゅるんと掻き回されて、腰が浮く。
 熱い。中が熱い。全身が熱い。
 指は、いつのまにか二本に増えていた。
 肌がぱんと弾けるように一気に汗を吹く。

「そんなに食いつかれては、動くに動けぬ」

 動けぬ、と言いながら、二本の指はばらばらに暴れて、秘奥をいいように掻き散らす。
 やがて指は、腫れ上がった破蕾の裏側を捕らえた。

「ひゃあんっ」

 さんざん嬲って散らしきった女の芽を、今度は中から執拗に責めていく。

「ここか? こうか? この方がよいか?」

 ざりざりと撫で、かりかりと引っ掻き、二本でつまんで捏ね回す。
 その指先が、ぐつりと押し込まれる音を体内で聞いた、その瞬間。
 あ、と思うまもなかった。

 一瞬にして、眼裏に星が飛んだ。

「────ッ?!」

 呆然と、肩で息をつく。 

(え、今の、何? 今わたし、イッ……た?)

「うそ……」

 今、何が起こったのだろう。
 何これ。こんなの知らない。怖い。
 自分の身体が、自分のものではないようで。

 何よりも、その事実を義父に暴かれることが、怖かった。

 途端、指が引き抜かれ、三本に増えて、一気に貫かれる。

「んああああああ」

「勝手にイった罰だ」
「あ……」
「イクときはイクと言え、と。言ったろう」

 そのまま激しく、抜き差しが繰り返された。

「はっ、はっ、あっ、うぅ、あん」

 しばらくして、義父が面白そうに目をくるめかせた。

「お前、ここでイクのは、初めてだったか」

 びくんと若妻の身体が弾む。
 とうにばれていたのだ。

「そうか。私が初めてか。それはいい。夫も知らぬお前の女の部分か」
「い、や……」
「可哀想に。こんな大事なところの初めてが、義父に犯されて、とはな」
「いやぁ」
「だが仕方ない。お前のここを、見つけて可愛がってやれなかった、あやつが悪い」

 そこを暴いた義父の指が、間断なく抽挿を繰り返す。
 ぐぷ、ごぷ、じゅぱっ。

「あ、あ、あ、あぁ、ああんっ」

 濡れた喘ぎが、どこか遠くに聞こえる。

 ぐつっ、ぐつっ。
 知らなかった極点が、容赦なく狙われた。

「いや! あっ! いやあぁ……」

「そうか、まだいやか。それは困った。では、まだまだ可愛がってやらねばな」

 くく、と嗤う義父には、もう全てわかっているのだろう。

 そう、本当は自分でも、気づいていた。
 わかってしまっていた。
 愛する夫の父に犯されるという、この異常な状況で。
 悪夢のように嫌悪すべきはずのこの状況で。

 自分のなかの女の身体が、目の前の強く逞しい雄を、狂おしいほどに欲してしまっていることを。
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