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一章 初夜

4 双蕾

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 中が疼いている。
 身体がこの先を、期待してしまっている。
 もう、おかしくなりそうだった。

「そろそろ、欲しくなってきたか?」

 本当に似ている。
 片笑んで見下ろしている義父を、ぼんやりと見上げて思う。
 端正に整った顔立ちは、誰がみても美しいというだろう。
 実際、夫の顔に見惚れることがあるのは、今でも変わらない。

 こんなにも似ているのに、全然、違う。
 あの人は優しい。あの人はこんなことはしない。
 あの人なら、こんな抱き方はしない。
 こんな酷い、おかしくなりそうなほどの……。

 まだ指だけなのに。

 こらえきれない涙がひとすじ、眦を伝い落ちた。

「ここだな」

 美しい獣が、喉を鳴らして手をのばしてきた。

「わかる。疼いている」
「ふあっ」

 熱い掌で下腹部をぐっと押さえこまれ、中が悦んでいる。
 外から揉まれてさえ、熟しきってあふれかけているのが、自分でもわかる。
 けれど。

「お、義父、さま……」

 口を開くと、嗚咽がこぼれてしまう。
 ひっく。
 涙声でしゃくりあげながら、首を振る。

「もう、やめて、こんなこと。おね、おねが……ひあんっ」

 お願い、と、最後まで言わせず陰核をつつかれ、悲鳴が口をついた。

 そこは、夜の初めに、気を失うまで嬲られた。
 このまま二度と降りてこられないのではと恐怖を覚えるほど、果てから果てへと飛ばされ続けた。
 身体はまだ、あの感覚をありありと覚えている。
 つん、と指先でつつかれただけで、じんじんと疼いて、後追いで軽い絶頂に呑まれるほどに。

「え……何、うそ、……い、あ、ああっ、イ、くっ」

 もう指は離れた後なのに、自ら勝手に昇りつめて果て堕ちていく。
 息子の嫁が官能に翻弄されて乱れるさまを、父の視線がじっとりと舐め回している。
 上唇をちろりと舐めた赤い舌は、完全に捕食者のそれだ。

 義父の目が、大きく上下する豊かな胸に吸い寄せられた。
 ふっくらと美しい純白の乳房。切なげに尖る薄紅色の乳首。
 たまらなく卑猥なその眺めは、幼い顔と華奢な身体もあいまって、嗜虐心をも煽ってくる。

「まだ支度が足りないというなら、そうだな」

 義父の視線をひりひりと感じて、胸の先がきゅうっと凝った。
 無防備に晒された裸の胸を目で犯されて、若妻はふるふると首を振る。

「次はここを、可愛がってやるか」

 ここ、と言って、ふたつの乳首が狙われた。
 つんと勃ち上がった尖りの真上に、二本の指先が迫る。

「あ、あ……」

 怯えた表情でそれを目で追っていた新妻は、その寸前、見るに耐えかね、かたく目を閉ざして顔を背けた。
 もうすっかり固く勃ち上がって泣いている。
 そんなことは、自分でもわかっている。
 この義父の手管で弄られたなら、どんなにはしたなく乱れてしまうだろう。
 嫌だ。怖い。どうされてしまうのか。どうなってしまうのか。

 だが、いつまで経っても、怖れたようなことは起こらなかった。

「?」

 こわごわと目を上げると、義父が情欲に濡れきった男の目で、彼女を見下ろしていた。
 だが、にょっきりと伸ばされた二本の指は、彼女に触れないぎりぎりのところで、止まっていた。

「え、あ……?」

 はっ、と深い息を吐き、胸が大きく上下しても、触れない。
 胸の上下に合わせて、義父の指も動いているのだ。
 そのぎりぎりの近さを保って、触れそうで触れない、きわどい距離感で。

「あ……」

「どうした?」

 きっと手ひどく嬲られると思っていた。
 気が抜けて肩で息をする息子の嫁を、舅は片笑んで見つめる。

「何を、期待していた?」
「え?」
「どうされると思っていた?」
「どう……?」

 頭が動かない。
 ぼんやりと義父を見上げ、ただ荒い息をつく。

「がっかりしたか? 触ってもらえなくて」
「違っ……!」

「ここを弄ってもらえると、期待していただろう?」

 二本の指が、小さく円を描いて、空を撫でた。
 乳首の突端のすぐ先で、あたかも先端をくにくにと捏ねてでもいるかのように。

 あろうことか、触れられてもいないそこに、むずむずと甘い痺れが走る。
 そこから、焦れったいほどの淡い快感が、乳房全体に広がっていく。

「どんなに気持ちよくしてもらえるかと」

 とぷ……。

 それを自覚した瞬間、全身にカッと血がのぼった。
 心臓が早鐘をうって暴れだす。

「やっ、違、違う……」

 若妻は、何度も何度も、ふるふると首を振った。
 そんな期待などしていないと、否定したいのか。
 こんな感覚は幻影だと、拒否したいのか。
 感じてなどいないと、自分を言いくるめたいのか。

「何が違う。こんなに濡らして」

 男の膝頭が、脚の間にゆっくりと割り込んでくる。

「いや……」

 突き当りに張りつくと、粘液質の濡れた音がひとつ、響いた。
 義父の視線は嫁のそれを捉えて離さない。

「──っ」

 墜ちていく……。
 固く目を瞑り、背中から深く引きずり込まれていく失墜感に、必死に抵抗した。

「目を開けよ」
「……」
「開けよ」

 膝を、すり、と擦られて、「ひあ」と声が出た。
 顎が上がり、瞼がほどける。

 跳ね上がった胸のすぐ先で、ふたつの指先が狙いをすましていた。
 その向こうには、捕食者の目が光っている。

 尖った乳首の突端がちりちりと泣いている。
 もう本当に先から何か出そうだ。
 唇がふるふると震えて、浅い息が漏れる。

 その瞬間、ついに牙を剥いた凶器が襲いかかった。

 かりりっ。

 脳天まで突き抜ける凶暴な刺激が、若い新妻を襲う。
 声を失って全身をつっぱらせ、身体を駆け巡る快感に耐えた。

 かり、かりかり、かりりっ。

 動き始めた指先は、もうどんな容赦もしない。
 手に入れた獲物を嬲って楽しむ獣の所業さながらに、行為は続けられた。

「あああ、いやあぁ」

 すりっ、すりり、くにくにくに、きゅむっ……。

「あっあっ、んっ、んんぅ……やめて、もう、もう、いやぁ」

 咽び泣く声が寝室に響く。
 すっかり濡れそぼった、女の声だ。

 何を口走っているのか、もう本人はわかっていない。
 快楽に追い詰められているのか、追い求めているのか、両方なのか。

 この先に待つものを知るのは、追い込んだ男だけだ。

「そう急くな。時間はたっぷりある。もっと気持ちよくしてやる」
「ああああっ」
「ああ、いい声だ。もっと啼け。もっと乱れろ」
「あ、いや、いやぁ、う……たすけて……」

 何から逃れたいのか、もう自分でもわからない。

 愛する夫の優しい笑顔が脳裏を走る。

(ああ、あなた。ごめんなさい、私、私こんな……)

 呼びかけようとした途端、優しかった夫の顔に、ゆらりと酷薄な笑みが浮かんだ。

「夜はこれからだ」

 義父の手が両の乳房を揺すりあげる。
 ずくん。
 どぷ……。

「い、や……ぁ」

 最も愛に満ちていた夫婦の寝室で、今、義父に組み敷かれている。
 無理やり身体を開かされ、女を思い知らされて。

 どこにも逃げることは叶わない。
 だれも、助けてはくれない。
 どんなに悲鳴を上げても、使用人達はこの義父の忠実な下僕だ。
 老い衰えた父に家督を譲らせ離れに幽閉して以来、この家に君臨する彼の支配は絶対的で、逆らえる者など誰もいない。
 それはたとえ彼女の夫であっても。
 当主たるこの男が望めば、それはそうなる。

 今夜、私は義父に犯される。

 悪夢はまだ、始まったばかりだった。
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