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第2章 聖女。灼熱の王国を駆け巡るのです!
20. あなたの事は ~マルセナside~
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20. あなたの事は ~マルセナside~
聖女マルセナがランバート王国に住み込みで働きだして2ヶ月がたつ。相変わらずやることは特に変わっていないのだが、変わったことと言えばライアン=ランバート王子と共にカトリーナ教会に戻るようになったことだ。聖女マルセナは月に2、3回は教会に戻りカトリーナ教会の聖女としての仕事を行っている。なぜかそれに着いてくるようになったのだ。
「あの……ライアン王子はなぜ最近私と共にカトリーナ教会へ行くのですか?」
「ん?ダメなのかい私がいては?不都合でも?」
「いえ。そういう訳ではないのですけど……」
と少し不機嫌そうな顔になるライアン王子。その表情を見て慌てて訂正する。確かにそう言われればそうだ。
彼はランバート国の第二王子であり次期国王になる可能性もある人物なのだから。そんな彼がわざわざ護衛もつけずに一人で行動するなど危険極まりない行為である。しかし、私は彼の婚約者ではないし特別な存在でもない。だから別に一緒に行動しても問題はないはずだし、とはいえ一緒に行動する理由もないんだけど……なんか違う気がするのは気のせいではないはずだ。
そしてもう一つ疑問がある。それは彼がよく私の手を握ってくることである。最初こそ驚いたものの最近は慣れてしまったのか特に気にならなくなってしまった自分がいる。最初は恥ずかしかったり戸惑ったりしたものだが今はもうどうでもいいと思ってしまうくらいには感覚が麻痺してしまったようだ。
まぁ、悪い気分じゃないのだけどね。むしろちょっと嬉しいというかなんと言うか……って何考えてるんだろ私!?︎
ただひとつ……あの夜の舞踏会の出来事だけが忘れられないのだ。
そんなことを思っているうちにカトリーナ教会にたどり着く。するとあの2人が出迎えてくれる。
「お帰りなさいませ聖女マルセナ様。あっライアン王子も一緒でしたか」
「聖女マルセナ様の不在の間きちんと任を行っていました」
「ただいまラピス、エルミン。ありがとう」
聖女マルセナはこの2人の顔を見るなり安心感に包まれる。なんだかんだ言ってもこのカトリーナ教会が自分の家と同じなのだから。
この2人は見習い修道士。ただ聖女マルセナの専属従者みたいな存在であり聖女マルセナの事を慕ってくれているのだ。普段は聖女の身の回りのお世話をするのが仕事なのだ。
「ああ。そうだ。ランバート王国にこの教会の花を持って帰りたいのだが?ここには素晴らしい花壇があるだろう。聖女アリーゼ様もよく言っていた」
アリーゼ。今はその名前を聞きたくはないのだけど……聖女マルセナは明らかに不機嫌になりライアン王子に言う。
「花壇ならそちらの道を進めばありますわ。私は聖女の仕事がありますので。ラピス、エルミン行きますわよ?」
「いや私は聖女マルセナ様に案内してもらいたいのだが?」
「申し訳ありません。仕事があるので」
「客人をもてなすのも聖女の仕事ではないのかい?聖女マルセナ様?」
なんだこの王子。図々しいにも程があるでしょう!と内心怒りながら答える。正直今すぐ追い出したいところだが、一応相手は王族なので下手なことはできない。
「あのここに戻ってきている以上、聖女としてですね?」
「だから、それも仕事ではないのかい?」
困った顔をしていると後ろにいたラピスとエルミンが気を遣って声をかけてきた。聖女の仕事は先にやっておくとのこと、結局渋々ライアン王子を花壇に案内することになる。
そして花壇に向かって歩いているとライアン王子は聖女マルセナに聞いてくる。
「もしかして君は私が嫌いかい?」
「はぁ?いきなり何を言っているんですかあなたは?」
「いや、さっきからあまり話してくれないし笑顔も見せてくれないだろう。嫌われてるのかなって思ってね」
嫌い?確かにそうかもしれない。でも、それはあくまであなたのせいでもあるんですよ!!︎と思いながらもそれを言葉にすることはなく、ただ黙々と歩くことしかできなかった。
しばらく歩き続けるとようやく目的の場所につく。ここはアリーゼやマーシャさんが大切に育てていた花達だ。時期が来ると色とりどりの花達が咲き乱れとても綺麗だった。
その花の中でライアン王子は立ち止まりじっと見つめ始める。それはあの小さな白い花、そうアストラムの花だ。
そしてなぜか静寂が訪れる。
その瞬間空気が変わった。
まるで時間が止まったかのような感覚に陥る。
そして言葉を紡ぐ。
その言葉で聖女マルセナの世界が変わることになる。
「私は君が好きなのだと思う。」
「えっ……」
突然の言葉に思考回路が止まる。好き……誰が誰を……
しかし答えはすぐにわかった。彼の目線は私ではなく目の前にある花に向けられたものだった。つまり彼は……
「真実の想い。いい花言葉だ。そうは思わないかい聖女マルセナ様?」
「……そうですね。素敵です」
その顔はとても真剣で嘘偽りのない表情をしていた。だからだろうか。彼の純粋な気持ちがとても羨ましく思えたのだ。聖女マルセナはライアン王子に伝える。
「さっきの答えですけど。私はあなたの事は嫌いではないですよ」
「そうか……それなら良かったよ」
真実の想い。私の真実の想いはなんなのかしら。聖女マルセナとライアン王子はその小さな白い花を見つめるのだった。
聖女マルセナがランバート王国に住み込みで働きだして2ヶ月がたつ。相変わらずやることは特に変わっていないのだが、変わったことと言えばライアン=ランバート王子と共にカトリーナ教会に戻るようになったことだ。聖女マルセナは月に2、3回は教会に戻りカトリーナ教会の聖女としての仕事を行っている。なぜかそれに着いてくるようになったのだ。
「あの……ライアン王子はなぜ最近私と共にカトリーナ教会へ行くのですか?」
「ん?ダメなのかい私がいては?不都合でも?」
「いえ。そういう訳ではないのですけど……」
と少し不機嫌そうな顔になるライアン王子。その表情を見て慌てて訂正する。確かにそう言われればそうだ。
彼はランバート国の第二王子であり次期国王になる可能性もある人物なのだから。そんな彼がわざわざ護衛もつけずに一人で行動するなど危険極まりない行為である。しかし、私は彼の婚約者ではないし特別な存在でもない。だから別に一緒に行動しても問題はないはずだし、とはいえ一緒に行動する理由もないんだけど……なんか違う気がするのは気のせいではないはずだ。
そしてもう一つ疑問がある。それは彼がよく私の手を握ってくることである。最初こそ驚いたものの最近は慣れてしまったのか特に気にならなくなってしまった自分がいる。最初は恥ずかしかったり戸惑ったりしたものだが今はもうどうでもいいと思ってしまうくらいには感覚が麻痺してしまったようだ。
まぁ、悪い気分じゃないのだけどね。むしろちょっと嬉しいというかなんと言うか……って何考えてるんだろ私!?︎
ただひとつ……あの夜の舞踏会の出来事だけが忘れられないのだ。
そんなことを思っているうちにカトリーナ教会にたどり着く。するとあの2人が出迎えてくれる。
「お帰りなさいませ聖女マルセナ様。あっライアン王子も一緒でしたか」
「聖女マルセナ様の不在の間きちんと任を行っていました」
「ただいまラピス、エルミン。ありがとう」
聖女マルセナはこの2人の顔を見るなり安心感に包まれる。なんだかんだ言ってもこのカトリーナ教会が自分の家と同じなのだから。
この2人は見習い修道士。ただ聖女マルセナの専属従者みたいな存在であり聖女マルセナの事を慕ってくれているのだ。普段は聖女の身の回りのお世話をするのが仕事なのだ。
「ああ。そうだ。ランバート王国にこの教会の花を持って帰りたいのだが?ここには素晴らしい花壇があるだろう。聖女アリーゼ様もよく言っていた」
アリーゼ。今はその名前を聞きたくはないのだけど……聖女マルセナは明らかに不機嫌になりライアン王子に言う。
「花壇ならそちらの道を進めばありますわ。私は聖女の仕事がありますので。ラピス、エルミン行きますわよ?」
「いや私は聖女マルセナ様に案内してもらいたいのだが?」
「申し訳ありません。仕事があるので」
「客人をもてなすのも聖女の仕事ではないのかい?聖女マルセナ様?」
なんだこの王子。図々しいにも程があるでしょう!と内心怒りながら答える。正直今すぐ追い出したいところだが、一応相手は王族なので下手なことはできない。
「あのここに戻ってきている以上、聖女としてですね?」
「だから、それも仕事ではないのかい?」
困った顔をしていると後ろにいたラピスとエルミンが気を遣って声をかけてきた。聖女の仕事は先にやっておくとのこと、結局渋々ライアン王子を花壇に案内することになる。
そして花壇に向かって歩いているとライアン王子は聖女マルセナに聞いてくる。
「もしかして君は私が嫌いかい?」
「はぁ?いきなり何を言っているんですかあなたは?」
「いや、さっきからあまり話してくれないし笑顔も見せてくれないだろう。嫌われてるのかなって思ってね」
嫌い?確かにそうかもしれない。でも、それはあくまであなたのせいでもあるんですよ!!︎と思いながらもそれを言葉にすることはなく、ただ黙々と歩くことしかできなかった。
しばらく歩き続けるとようやく目的の場所につく。ここはアリーゼやマーシャさんが大切に育てていた花達だ。時期が来ると色とりどりの花達が咲き乱れとても綺麗だった。
その花の中でライアン王子は立ち止まりじっと見つめ始める。それはあの小さな白い花、そうアストラムの花だ。
そしてなぜか静寂が訪れる。
その瞬間空気が変わった。
まるで時間が止まったかのような感覚に陥る。
そして言葉を紡ぐ。
その言葉で聖女マルセナの世界が変わることになる。
「私は君が好きなのだと思う。」
「えっ……」
突然の言葉に思考回路が止まる。好き……誰が誰を……
しかし答えはすぐにわかった。彼の目線は私ではなく目の前にある花に向けられたものだった。つまり彼は……
「真実の想い。いい花言葉だ。そうは思わないかい聖女マルセナ様?」
「……そうですね。素敵です」
その顔はとても真剣で嘘偽りのない表情をしていた。だからだろうか。彼の純粋な気持ちがとても羨ましく思えたのだ。聖女マルセナはライアン王子に伝える。
「さっきの答えですけど。私はあなたの事は嫌いではないですよ」
「そうか……それなら良かったよ」
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