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本編
-252- 運送ギルドと健康
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セオのブローチを無事に選んだ後は、お茶の時間。
今日は天気も気候も良かったから、セバスの勧めで初めてガゼボで頂いた。
薔薇が間近で綺麗に見えるし、香りもとっても良かった。
凄く気持ちがいい場所だ。
ロブとロンにも話が出来たし、ひとりでぼうっとするよりずっと有意義な時間だった。
「重かったでしょう?ありがとう」
「いいえっ!」
「自分らは身体強化が取りえですから!」
まったりとお茶の時間を終えた後は、少しだけ時間があるからそのまま今咲いている薔薇について色々と教えて貰いながら、お庭を案内して貰った。
そうしてるうちにすぐに運送ギルドを通して体重計が届いたんだ。
大きさは、セオが言ったように大きくて、僕が想像していたようにばね式のものだ。
けれど、医療装置でもアンティーク調でどことなくシックでお洒落な見た目が部屋に馴染みやすい。
これなら、高級感のある脱衣所に置かれていても浮かないですむ。
重さはかなりの重さがあるみたいで、運送ギルドの職員二人で運んでくれたよ。
前にセオが言ったように、今日は体ががっしりしている職員だった。
重い荷物を運ぶのには慣れているみたいだ。
いやな顔せず、荷馬車から脱衣所のところまで運んでくれた。
運送ギルドは、帝国内全土を滞りなく回るため、管理は領の管轄から外れて独立している組織だと聞いたけれど、だからこそギルド内の規定は厳しいようだ。
職員さんも礼儀正しい。
まあ、このエリソン侯爵領で一番のエリソン侯爵へ運搬するのだから、礼儀正しく貴族相手に慣れた人たちなんだろうな。
セバスは終始厳しい表情を向けていたけれど、まだセオも帰宅していないし、万が一のことがある場合は僕を守るのはセバスの役目だったろうから、そのせいかな。
ふたりが屋敷を出て、扉が閉まると、セバスはほっとしたように息を吐いた。
屋敷に人を招き入れるのは、僕が思っている以上に注意が必要なんだってことを今更ながらに感じた。
ちらりと僕を見るセバスの目はもうすでに優しいいつもの表情だ。
「さっそく試されますか?」
「うん」
ロビーから、元来た階段をのぼりながらセバスに続く。
「レン様、運送ギルドから物が運ばれた際は、出迎えも搬入の指示も見送りも必要はありませんよ。このセバスにお任せください」
「あ、そっか……ごめんなさい、届いたのが嬉しくて一緒に出ちゃった」
僕が大人しく談話室か自室にいたら、そもそもセバスが目を光らせる必要なんてなかったんだろうな。
つい、元の世界と同じように、宅急便気分で出ちゃったのは良くなかった。
セバスが僕を止める時間もなかったはずだ。
「謝ることはございません。運送ギルドへのレン様の印象は更に上がったことでしょう」
「でも、セバスにいらない気を遣わせてしまったから。次から気を付けるね」
「ご配慮いただきありがとうございます」
「ううん」
「アレックス様が、不思議がっておりましたが……体重計の必要性をお聞きしても?」
「え?毎日量りたいからだけど……」
必要性って言われるとちょっと困る。
体重計は体重を量る以外に、機能がない。
「僕のもといたところでは、日々の健康を保つために体重を毎日量る習慣があったんだ。
勿論、全員が全員じゃないと思うけれど、僕は毎日量っていたよ。
役者だったし、体系維持にも繋がったから」
「そうでしたか」
「うん。それに短期で急に体重が増えたりだとか、逆に減ったりだとか。
そういう時は、病気なんかを疑う一つの目安になると思うし、数値で目にするのってわかりやすいから」
「なるほど」
「あとね、毎日量るだけで、ダイエット効果があるっていう論文なんかもあったよ?」
「なんと!そのような効果がおありでしたら、体重計ももっと貴族間に普及するかもしれません」
セバスが驚いたように口にする。
うーん……僕はまだ出会った人は少ないけれど、テイラー商会のあの商会長はでっぷりしてた。
元の世界の健康診断の結果だったら、迷わずメタボ判定だ。
見た目だけじゃなくて、色んな数値に注意が出そう。
贅沢をしている貴族だと、やっぱりでっぷりするものかもしれない。
「そういえば、こっちの世界には健康診断ってないの?」
「健康診断ですか?」
「うん、病気になっていたり、身体に不調がないかを調べるの。元の世界では、仕事をしていたら一年に一度するのが義務付けられてたよ?」
「そうでしたか。レン様のいた場所では、随分健康にも重視されていたようですね」
「うん。こっちにはないの?」
「そうですね。騎士や魔道士ですと、年に一度、体力や視力、魔力量などを調べる検査がありますが、その他はとくには」
「赤ちゃんもないの?」
「そうですね、ございませんね。貴族の場合は、幼児期や妊娠後は定期的に医師に健康状態を確認される家もあるかと思いますが、それもでも家によって様々です。
病気がちな方も、裕福な家限定でしょう」
「そうなんだ」
うーん……今すぐどうこうできる問題じゃないけれど、健康診断はあったほうがいいなあ。
病気が進行してからじゃ遅いもん。
「このセバスの目が腐らない限りは、家の者の健康状態は問題ありません」
「そうなの?」
「病気でも早い段階で見抜けます。レン様はすこぶる健康体ですよ、勿論アレックス様も、この家の使用人もです。ご安心ください」
「セバスも健康?自分のものは見えるの?」
「はい、自身のものも見えますよ」
「じゃあ、万が一何かあったら、ちゃんと隠さずに言ってね?健康なことは一番大切なことだと思うから」
「かしこまりました」
さっそく運び込まれたばかりの体重計にのってみる。
この世界に来てから美味しいものをたくさん食べているのに、前より殆ど動いていないから増えてるかもしれない。
そう思ったけれど、体重はぜんぜん変わらなかった。
思えば、そうそう増えにくい体質だった。
ジャンクなものを食べても、旅行で贅沢しても、必要以外なものは出ていくのか、体重増加にはつながらなかった。
逆に気を付けていないと、減りはする。
舞台の集中稽古や、公演が長かったりすると、きちんと食べないと減ることがあった。
筋肉はつきにくい、体重も増えにくい、身体は細いまま。
羨む人もいるかもしれないけれど、あまり褒められた体質でもないと思う。
でも、変わらないなら変わらないで、適正体重だ。
こっちの世界に来てから最初はストレスもあったかもしれないけれど、今はそれもない。
「いっぱい食べてるのに、変わってない」
「それはようございました」
今日は天気も気候も良かったから、セバスの勧めで初めてガゼボで頂いた。
薔薇が間近で綺麗に見えるし、香りもとっても良かった。
凄く気持ちがいい場所だ。
ロブとロンにも話が出来たし、ひとりでぼうっとするよりずっと有意義な時間だった。
「重かったでしょう?ありがとう」
「いいえっ!」
「自分らは身体強化が取りえですから!」
まったりとお茶の時間を終えた後は、少しだけ時間があるからそのまま今咲いている薔薇について色々と教えて貰いながら、お庭を案内して貰った。
そうしてるうちにすぐに運送ギルドを通して体重計が届いたんだ。
大きさは、セオが言ったように大きくて、僕が想像していたようにばね式のものだ。
けれど、医療装置でもアンティーク調でどことなくシックでお洒落な見た目が部屋に馴染みやすい。
これなら、高級感のある脱衣所に置かれていても浮かないですむ。
重さはかなりの重さがあるみたいで、運送ギルドの職員二人で運んでくれたよ。
前にセオが言ったように、今日は体ががっしりしている職員だった。
重い荷物を運ぶのには慣れているみたいだ。
いやな顔せず、荷馬車から脱衣所のところまで運んでくれた。
運送ギルドは、帝国内全土を滞りなく回るため、管理は領の管轄から外れて独立している組織だと聞いたけれど、だからこそギルド内の規定は厳しいようだ。
職員さんも礼儀正しい。
まあ、このエリソン侯爵領で一番のエリソン侯爵へ運搬するのだから、礼儀正しく貴族相手に慣れた人たちなんだろうな。
セバスは終始厳しい表情を向けていたけれど、まだセオも帰宅していないし、万が一のことがある場合は僕を守るのはセバスの役目だったろうから、そのせいかな。
ふたりが屋敷を出て、扉が閉まると、セバスはほっとしたように息を吐いた。
屋敷に人を招き入れるのは、僕が思っている以上に注意が必要なんだってことを今更ながらに感じた。
ちらりと僕を見るセバスの目はもうすでに優しいいつもの表情だ。
「さっそく試されますか?」
「うん」
ロビーから、元来た階段をのぼりながらセバスに続く。
「レン様、運送ギルドから物が運ばれた際は、出迎えも搬入の指示も見送りも必要はありませんよ。このセバスにお任せください」
「あ、そっか……ごめんなさい、届いたのが嬉しくて一緒に出ちゃった」
僕が大人しく談話室か自室にいたら、そもそもセバスが目を光らせる必要なんてなかったんだろうな。
つい、元の世界と同じように、宅急便気分で出ちゃったのは良くなかった。
セバスが僕を止める時間もなかったはずだ。
「謝ることはございません。運送ギルドへのレン様の印象は更に上がったことでしょう」
「でも、セバスにいらない気を遣わせてしまったから。次から気を付けるね」
「ご配慮いただきありがとうございます」
「ううん」
「アレックス様が、不思議がっておりましたが……体重計の必要性をお聞きしても?」
「え?毎日量りたいからだけど……」
必要性って言われるとちょっと困る。
体重計は体重を量る以外に、機能がない。
「僕のもといたところでは、日々の健康を保つために体重を毎日量る習慣があったんだ。
勿論、全員が全員じゃないと思うけれど、僕は毎日量っていたよ。
役者だったし、体系維持にも繋がったから」
「そうでしたか」
「うん。それに短期で急に体重が増えたりだとか、逆に減ったりだとか。
そういう時は、病気なんかを疑う一つの目安になると思うし、数値で目にするのってわかりやすいから」
「なるほど」
「あとね、毎日量るだけで、ダイエット効果があるっていう論文なんかもあったよ?」
「なんと!そのような効果がおありでしたら、体重計ももっと貴族間に普及するかもしれません」
セバスが驚いたように口にする。
うーん……僕はまだ出会った人は少ないけれど、テイラー商会のあの商会長はでっぷりしてた。
元の世界の健康診断の結果だったら、迷わずメタボ判定だ。
見た目だけじゃなくて、色んな数値に注意が出そう。
贅沢をしている貴族だと、やっぱりでっぷりするものかもしれない。
「そういえば、こっちの世界には健康診断ってないの?」
「健康診断ですか?」
「うん、病気になっていたり、身体に不調がないかを調べるの。元の世界では、仕事をしていたら一年に一度するのが義務付けられてたよ?」
「そうでしたか。レン様のいた場所では、随分健康にも重視されていたようですね」
「うん。こっちにはないの?」
「そうですね。騎士や魔道士ですと、年に一度、体力や視力、魔力量などを調べる検査がありますが、その他はとくには」
「赤ちゃんもないの?」
「そうですね、ございませんね。貴族の場合は、幼児期や妊娠後は定期的に医師に健康状態を確認される家もあるかと思いますが、それもでも家によって様々です。
病気がちな方も、裕福な家限定でしょう」
「そうなんだ」
うーん……今すぐどうこうできる問題じゃないけれど、健康診断はあったほうがいいなあ。
病気が進行してからじゃ遅いもん。
「このセバスの目が腐らない限りは、家の者の健康状態は問題ありません」
「そうなの?」
「病気でも早い段階で見抜けます。レン様はすこぶる健康体ですよ、勿論アレックス様も、この家の使用人もです。ご安心ください」
「セバスも健康?自分のものは見えるの?」
「はい、自身のものも見えますよ」
「じゃあ、万が一何かあったら、ちゃんと隠さずに言ってね?健康なことは一番大切なことだと思うから」
「かしこまりました」
さっそく運び込まれたばかりの体重計にのってみる。
この世界に来てから美味しいものをたくさん食べているのに、前より殆ど動いていないから増えてるかもしれない。
そう思ったけれど、体重はぜんぜん変わらなかった。
思えば、そうそう増えにくい体質だった。
ジャンクなものを食べても、旅行で贅沢しても、必要以外なものは出ていくのか、体重増加にはつながらなかった。
逆に気を付けていないと、減りはする。
舞台の集中稽古や、公演が長かったりすると、きちんと食べないと減ることがあった。
筋肉はつきにくい、体重も増えにくい、身体は細いまま。
羨む人もいるかもしれないけれど、あまり褒められた体質でもないと思う。
でも、変わらないなら変わらないで、適正体重だ。
こっちの世界に来てから最初はストレスもあったかもしれないけれど、今はそれもない。
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「それはようございました」
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