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本編
-251- ブラックダイヤ
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「そして、最後、中央にございますのがブラックダイヤでございます。
誰しもが価値のあるもの、とわかるのは、ダイヤが定番です。
こちらはまだ最終カットが済んでおりませんので、カットのご要望にもお応えできますよ」
「そっか、やっぱりダイヤが定番なんだね」
「そうですね、こちらのふたつと比べても、存在自体が強みになることでしょう。
色味が均一であり、濃い中にもほんのわずかな透明度があるのが特徴です。
このほんのわずかな透明度があることで、カットの違いによって様々に表情を変えるブラックダイヤでございます。
ブラックダイヤは小さくても漆黒のダイヤがもっともその価値があると言われてございますが、カットによってそれ以上の輝きを生むことが可能です」
だったら、やっぱり黒ダイヤがいいな。
宝石に疎い貴族というのはたくさんいそうだ。
貴族のご夫人なら、ブラックスターサファイヤやオーロラピーコックの凄さもすぐにわかるかもしれないけれど、分かる人ほど真意も分かる人がいると思う。
分からない人ほど、セオの存在を軽視しがちになるはずだ。
「僕は、真ん中のブラックダイヤがいいと思うんだけれど、アニーとセバスはどう?」
「そうですね、どれも素晴らしいものですが、私もブラックダイヤに一票。
価値のわからない者ほど、セオを軽んじるでしょうから」
「ブラックダイヤでしたら、誰しもが一目で価値のあるものだとわかりますわ。
私もブラックダイヤがよろしいかと思います」
「決まりだね!」
「カットはこちらからお選びください」
そう言ってご夫人が図面と、実際のカットが施されたダイヤを広げてくれる。
ただし、ダイヤの色は無色透明だ。
楕円、涙型、四角、とあるけれど、やっぱりダイヤならではの均等ラウンドタイプのが良いかな。
でも、それだと全体的にカット面が少ない気がする。
カットが一番の多くて綺麗に輝いてそうなのは丸みのある四角いタイプだ。
うーん……宝石の知識なんて、フランス旅行先で有名ブランドの本店に入った時に母さんが話していた言葉だけだけど、どういうのが良いんだったっけ?
すごーく詳しく話してくれたんだけれど、興味があまり持てなかったから、しっかり覚えてないや。
もっとちゃんと聞いておけばよかったよ。
アンティークのダイヤに価値があるのは、一粒の大きさと純度だって言ってたな。
たしか、一粒からとれる方が貴重だからもっとテーブルが小さかった気がする。
だからといって重さとか見た目とかを重視せずに、光の反射で輝きが綺麗に見えるものが良いな。
折角この石で作ってもらうんだ。
動きによって輝きが多い方が良いよね、セオ、良く動くもん。
「この形を軸に、カット面を増やすことは出来る?もっと上のテーブルを小さくして、逆に下は気持ち大き目に」
「新しくカットを作る……ということでしょうか?」
「一番輝きが多そうなのは、カットの面が多い、このちょっと四角いものだよね?」
「はい、こちらのカットがおすすめですし、3年前に出来上がり実際に商品化したカットでございます」
「うん、他のカットに比べて面が多いし、とても綺麗だと思う。
でも、ほんの少し左右非対称じゃない?このラウンド型の左右対称で、且つ同じように輝きが多いのがいいんだ」
「ご要望もあって、幾度と試しているのですが光の反射がうまくいかず、納得のものが仕上がったことがありません」
「うーん……上下中心は八角形だったはずだから……、セバス、紙とペンある?」
「はい、ご用意いたします」
下の形はなんとなく覚えてる。
たしか、八角形の延長に放射線状に線を引いて円で囲み、その円周と線の中央を起点としてくの字に線を足していたはずだ。
「値までわからないけれど、底はこんな感じだったはず。上も八角形で、一辺から三角にして、それを繋いでーーーこんな感じだったかなあ。
あと、側面も削ってたはず。こんな感じ。うる覚えでごめん……うーん、うまくいくかは分からないし、やっぱり今あるカットからーーー」
「いいえ。いいえ、レン様!これでしたら上手くいくかもしれませんわ!」
夫人が身を乗り出して、興奮気味に答えてくる。
瞳がキラキラと輝いて、とても嬉しそうだ。
「以前、近いようなものを作って失敗しましたの。でも、ここのテーブルをもう少しずらせば……ええ、ええ、綺麗に輝くはずです!どうか試させてください。
勿論、ぶっつけ本番ではなく、別の石で試してから入らせていただきますので!」
最初は委縮していたように思えた夫人は、ダイヤのカットの話をしたら凄く生き生きと語ってくれた。
本来、明るい性格をしているんだろうな。
年配の女性に対して失礼かもしれないけれど、少女のような可愛さがある。
「申し訳ございません。家内は元職人でございまして」
オーナーが謝ってくるけれど、優しそうな目で夫人を見てる。
恥ずかしそうにはにかむ夫人はやっぱり可愛く見える。
このオーナー夫婦、凄く仲が良いんだろうなあ。
僕もアレックスとずっと仲良く寄り添っていきたいな。
「ううん、うまくいきそうなら嬉しいよ」
「職人ならではの立体的な、確かな目を家内は持っております。年で職を離れ、今は職人を育てる側へ回りましたが、おかげで店には腕の良い職人がおります。
家内がこう言ってますので、必ず良いものをお届けいたします、是非」
「うん、よろしくね」
誰しもが価値のあるもの、とわかるのは、ダイヤが定番です。
こちらはまだ最終カットが済んでおりませんので、カットのご要望にもお応えできますよ」
「そっか、やっぱりダイヤが定番なんだね」
「そうですね、こちらのふたつと比べても、存在自体が強みになることでしょう。
色味が均一であり、濃い中にもほんのわずかな透明度があるのが特徴です。
このほんのわずかな透明度があることで、カットの違いによって様々に表情を変えるブラックダイヤでございます。
ブラックダイヤは小さくても漆黒のダイヤがもっともその価値があると言われてございますが、カットによってそれ以上の輝きを生むことが可能です」
だったら、やっぱり黒ダイヤがいいな。
宝石に疎い貴族というのはたくさんいそうだ。
貴族のご夫人なら、ブラックスターサファイヤやオーロラピーコックの凄さもすぐにわかるかもしれないけれど、分かる人ほど真意も分かる人がいると思う。
分からない人ほど、セオの存在を軽視しがちになるはずだ。
「僕は、真ん中のブラックダイヤがいいと思うんだけれど、アニーとセバスはどう?」
「そうですね、どれも素晴らしいものですが、私もブラックダイヤに一票。
価値のわからない者ほど、セオを軽んじるでしょうから」
「ブラックダイヤでしたら、誰しもが一目で価値のあるものだとわかりますわ。
私もブラックダイヤがよろしいかと思います」
「決まりだね!」
「カットはこちらからお選びください」
そう言ってご夫人が図面と、実際のカットが施されたダイヤを広げてくれる。
ただし、ダイヤの色は無色透明だ。
楕円、涙型、四角、とあるけれど、やっぱりダイヤならではの均等ラウンドタイプのが良いかな。
でも、それだと全体的にカット面が少ない気がする。
カットが一番の多くて綺麗に輝いてそうなのは丸みのある四角いタイプだ。
うーん……宝石の知識なんて、フランス旅行先で有名ブランドの本店に入った時に母さんが話していた言葉だけだけど、どういうのが良いんだったっけ?
すごーく詳しく話してくれたんだけれど、興味があまり持てなかったから、しっかり覚えてないや。
もっとちゃんと聞いておけばよかったよ。
アンティークのダイヤに価値があるのは、一粒の大きさと純度だって言ってたな。
たしか、一粒からとれる方が貴重だからもっとテーブルが小さかった気がする。
だからといって重さとか見た目とかを重視せずに、光の反射で輝きが綺麗に見えるものが良いな。
折角この石で作ってもらうんだ。
動きによって輝きが多い方が良いよね、セオ、良く動くもん。
「この形を軸に、カット面を増やすことは出来る?もっと上のテーブルを小さくして、逆に下は気持ち大き目に」
「新しくカットを作る……ということでしょうか?」
「一番輝きが多そうなのは、カットの面が多い、このちょっと四角いものだよね?」
「はい、こちらのカットがおすすめですし、3年前に出来上がり実際に商品化したカットでございます」
「うん、他のカットに比べて面が多いし、とても綺麗だと思う。
でも、ほんの少し左右非対称じゃない?このラウンド型の左右対称で、且つ同じように輝きが多いのがいいんだ」
「ご要望もあって、幾度と試しているのですが光の反射がうまくいかず、納得のものが仕上がったことがありません」
「うーん……上下中心は八角形だったはずだから……、セバス、紙とペンある?」
「はい、ご用意いたします」
下の形はなんとなく覚えてる。
たしか、八角形の延長に放射線状に線を引いて円で囲み、その円周と線の中央を起点としてくの字に線を足していたはずだ。
「値までわからないけれど、底はこんな感じだったはず。上も八角形で、一辺から三角にして、それを繋いでーーーこんな感じだったかなあ。
あと、側面も削ってたはず。こんな感じ。うる覚えでごめん……うーん、うまくいくかは分からないし、やっぱり今あるカットからーーー」
「いいえ。いいえ、レン様!これでしたら上手くいくかもしれませんわ!」
夫人が身を乗り出して、興奮気味に答えてくる。
瞳がキラキラと輝いて、とても嬉しそうだ。
「以前、近いようなものを作って失敗しましたの。でも、ここのテーブルをもう少しずらせば……ええ、ええ、綺麗に輝くはずです!どうか試させてください。
勿論、ぶっつけ本番ではなく、別の石で試してから入らせていただきますので!」
最初は委縮していたように思えた夫人は、ダイヤのカットの話をしたら凄く生き生きと語ってくれた。
本来、明るい性格をしているんだろうな。
年配の女性に対して失礼かもしれないけれど、少女のような可愛さがある。
「申し訳ございません。家内は元職人でございまして」
オーナーが謝ってくるけれど、優しそうな目で夫人を見てる。
恥ずかしそうにはにかむ夫人はやっぱり可愛く見える。
このオーナー夫婦、凄く仲が良いんだろうなあ。
僕もアレックスとずっと仲良く寄り添っていきたいな。
「ううん、うまくいきそうなら嬉しいよ」
「職人ならではの立体的な、確かな目を家内は持っております。年で職を離れ、今は職人を育てる側へ回りましたが、おかげで店には腕の良い職人がおります。
家内がこう言ってますので、必ず良いものをお届けいたします、是非」
「うん、よろしくね」
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