異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

日夏

文字の大きさ
135 / 198
本編

-135- 毛生え薬

しおりを挟む
コポコポと液体の沸騰する音がやけに耳に響く。
こうしたらどうか、との口出しは出来ても、実際の調合に関しちゃ横で見守るだけが殆どだ。
偶に、取ってほしいものがあれば言ってくるくらいで。
だが、俺がいること自体に意味がある。
俺がいるだけで、オリバーの魔力が2割ほど増すからだ。


シリルん家に行って、その帰りにデートをした日から、一日が経った。
昨日は、帰宅後早速作りたいと思ったが、『明日にしましょう』と言われてしまった。
まあ、あれだ。
昨日から作り始めたら、二人して夜中まで没頭していただろう。
俺もオリバーもやり始めると何かしらの結果を求めちまう傾向がある。
そりゃあ、俺は、日が回る前には明日にするか、という選択が出来る。

だが、そんな時間になれば、大人しく寝るという一択で。
大人しく寝るってことは、睡眠ってことだ。
あまり怠惰なことはしたくない。
朝のルーティンのなにかしらを削らなくちゃならない事態はできる限り遠慮したい。

そんなわけで『明日にしましょう』と笑顔で言われちまったが、『明日にしましょう』ってことは、『今夜はしましょう』
と言っているようなもんで。
1日おきにしてるっつったって、昨日したら今日はしないっていう決まりがあるわけじゃないし、続けてやったって別にいいわけだ。

溜めてやるより小出しにされた方がいい。
セックスの体力と持久力っつーのは、普段の運動とどっか違う。
オリバー相手じゃ、全力出されたら大変なことになる。
そうそうそんなことにはならないけど、それはそれで喜んでる俺は、すっかり恋愛馬鹿になっちまってる。

あ。
そういや、神器の生態について、結局聞けてない。
俺もすっかり忘れてたし、オリバーも忘れてるだろうな。
タイラーより先にオリバーに聞かないと、タイラーの小言が飛ぶに違いない。
今日こそ聞いておこうと思いながら、薬瓶に移し替えるオリバーの横顔を見つめる。
ほんと、マジで作りがいいよなーずっと見てられる。

「……そんなに見つめられると手元が狂いそうです」
「頑張れー」
「………」

頑張れと言えたのは、オリバーが手元から視線を逸らさなかったからだ。
そのまま流し目で見られでもしたら、俺にはそんな余裕はなかったに違いない。

何か言いかけて、オリバーの口が閉じる。
と、同時目を見開いて薬瓶をしげしげと見つめている。
俺もそちらへと視線を移し……おう、出来ちまった。

「本当に出来ましたね」
「もっと時間かかると思った」
「最初の2つも全く効果がないというわけではありませんしね、寧ろ、あれはあれで抜け毛に特化してますから、別の商品になりそうです」
「だな。ってなると……あとは使用感か。実際に試してみてからだな」

くん、と匂いを嗅いでも、ハーブ系の香りだけに思えるがよく分からん。
すぐ隣から良い匂いがしてくるからだ。
熱い薬瓶を素手で持つわけにもいかない。

「ちょい離れて」
「なぜ?」
「お前の良い香りでよくわかんねーからだよ」
「ああ、なるほど」

納得したオリバーは、笑いながら手袋をつけた手で使い終わった機材を片付け始めた。

もう一度嗅ぐ。
うん、ハーブ系のすっきりする香りだけだ。
磯臭さは一切ない。
ハーブの香りもキツくないから使いやすいはずだ。

「3つ目に至っては、昆布の臭いはほぼ消えたと思いますが」
「ああ、良いと思う。えーすげーじゃん、オリバー!これきっと商品化したらめちゃくちゃ売れるぞ」

褒め言葉と共に深い口付けを送る。
これだけ試せば結構疲れただろうし、魔力も消費しただろうし。
浄化するのも辛い……かどうかはわからねえけど、まあ、やっといて良くなることはあっても、悪くなることはねえだろうしな。

俺は魔力譲渡中がよくわからん。
魔力が体感的に抜けたと分かったのは、あのおはぎが憑依した時だけだ。
オリバーとの口付けは、ただ、気持ちがいいだけだ。
心も、身体も、両方。

「ありがとな」
「……お礼を言うのは私の方では?」
「お義父さんへのプレゼントにしたいがためだったし、まんま私欲だし」
「ああ、それで。てっきり―――」
「っキスのお礼じゃねーっての」

楽しそうに笑うオリバーを目に、気分も機嫌も良さそうでほっとする。
魔力も満たされただろう。

「タイラーはふさふさですし、別邸の方で試して貰いましょうか。
薬剤鑑定から、効き目があることは確かですし、副作用があることも無いと思いますが、どの程度の期間で目に見える変化がでるかは分かりかねますから」
「わかった」





しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

過労死で異世界転生したら、勇者の魂を持つ僕が魔王の城で目覚めた。なぜか「魂の半身」と呼ばれ異常なまでに溺愛されてる件

水凪しおん
BL
ブラック企業で過労死した俺、雪斗(ユキト)が次に目覚めたのは、なんと異世界の魔王の城だった。 赤ん坊の姿で転生した俺は、自分がこの世界を滅ぼす魔王を討つための「勇者の魂」を持つと知る。 目の前にいるのは、冷酷非情と噂の魔王ゼノン。 「ああ、終わった……食べられるんだ」 絶望する俺を前に、しかし魔王はうっとりと目を細め、こう囁いた。 「ようやく会えた、我が魂の半身よ」 それから始まったのは、地獄のような日々――ではなく、至れり尽くせりの甘やかし生活!? 最高級の食事、ふわふわの寝具、傅役(もりやく)までつけられ、魔王自らが甲斐甲斐しくお菓子を食べさせてくる始末。 この溺愛は、俺を油断させて力を奪うための罠に違いない! そう信じて疑わない俺の勘違いをよそに、魔王の独占欲と愛情はどんどんエスカレートしていき……。 永い孤独を生きてきた最強魔王と、自己肯定感ゼロの元社畜勇者。 敵対するはずの運命が交わる時、世界を揺るがす壮大な愛の物語が始まる。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

処理中です...