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本編
-120- クズ男
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「やあ、初めまして。キャンベル商会副会長のヒューゴ=キャンベルです。どうぞよろしく」
「初めまして、こんばんは。アサヒ=ワグナーです」
よろしくしたくなくて、とっさに猫を被りそつない笑みで返しておく。
ヒューゴっつー名前も強そうな名前で、そこもなんだかいけ好かない。
何が一番いけ好かないかって、オリバーを上から下まで見た後に、何も言わず最初に俺に声をかけたところが一番いけ好かない。
はい、こいつ敵ー、ってくらいには瞬時に決定した、俺の中の俺が満場一致で敵認定だ。
『敵だと思う奴は手を挙げろ』で全員が全員挙手だ。
猫被ったいい子ちゃんな俺も、裏番長な俺も、出来る仕事人間な俺も、恋愛馬鹿な俺も、全部だ。
「へえ……勿体ないね」
「ヒューゴ、あんたはもうどっか行って、向こうで飲んで頂戴」
は?何が勿体ないって?
コナーが何かの危険を感じとってか、イラついたように離れろと手を振る。
「こんな見た目だけの男に落とされずとも、他にいただろうに」
「ヒューゴ!」
コナーの声が先か、俺の手が先か。
俺の手が奴の襟首掴む方が先だったかもしれねーな。
ははっ、柄にもなくすげー間抜け面だ。
驚いたか、バーカ。
人を見下すからだ、自信過剰野郎。
「っ?!」
「おい、もう一回言ってみろよ。あ?誰が見た目だけだって?」
「アサヒ!何してるんですっ」
慌てたようにオリバーが俺の肘を掴む。
楽しそうだった連中が俺らに注目して話も手も止めているのが分かった。
けどな、俺の沸点を瞬時にブちぎってきたのはそっちだぞ。
「良いんですよ、言いたいように言わせておけば。
手を放して下さい、ね?私は大丈夫ですから……アサヒ」
そんな風に言われちゃしょうがない。
言いたいようには言わせたくないが、渋々手を放す。
全く持って俺は納得してねーけどな、オリバーが真剣に懇願するからで。
俺が相手に視線を向けると相手がたじろぐように一歩下がった。
「なんだ……似た者同士か」
似たもの同士?
まあ、ある意味似たもの同士かもしれねえなあ。
手は止めたけぞ?
オリバーが言うから仕方なく、だ。
けどなあ、売られた喧嘩は何倍にしてでも返すぞ。
俺が口で負けたのはオリバーくらいだ。
「俺があんたに落ちるとでも思ったか?ごめんな?俺すげー面食いだから無理だわ」
「ッチ……大人しいかと思ったら、とんだ猫かぶりだな」
あー……元の世界で良くされた反応だ。
こいつも、見てくれいい俺のことを、ただ味見がしかたかっただけらしい。
相手が本気になるのをゲームの様に楽しむタイプだ。
「見た目も中身も中途半端なやつよりはずっとマシだろ?」
「それは俺のことか?」
ははっ……やっぱ自信過剰なナルはいってんな。
見た目をけなされると余裕ないくらいには怒りが湧くらしい。
「ねえ、ちょっと本当にやめてくれる?
今日は絡まないって言ったでしょ?向こういきなさいよ、追い出されたいの?」
「喚くなよ、コナー」
「謝りなさいよ!」
「悪かったよ」
「そうじゃないでしょ!」
「ヒューゴ」
俺の前でコナーがキレた。
ヒートアップしそうな迫力で、俺の怒りが行き場を無くす。
これはこれで、まずいんじゃないか?って思うも、愛斗が静かにヒューゴの名前を呼んだ。
名前だけだが、なんつーかそれだけで愛斗に皆の視線が集まるくらいには独特の重みというか凄みというか……なんかこう、うまく言えねーけど、迫力みたいなものがあった。
「オリバーさんと旭さんに謝って、ちゃんと」
「……失礼な態度を取り申し訳ありませんでした」
「謝罪を受け入れます」
オリバーがいつものように穏やかな声で告げる。
けど……ああ、こいつ結構内心怒ってるな、って思ったのは俺だけじゃないだろうな、コナーも分かってるようだ。
謝罪を受け入れますって言いはしたけど、許しているかは別問題だしな。
「もういいわ……出てって」
「嘘だろ?」
「本気よ」
「……わかったわかった」
ぜんぜん反省してなさそうなヒューゴとかいう奴は、さっき話していた奴へと二三事何か告げてから店を後にする。
「いやな思いをさせてしまってごめんなさい」
「や、俺が興味本位で見たいっつったのがそもそも原因だし、先に手出したのは俺だからな」
「あれでも仕事は完璧なのよ……」
「勿体ねえのは愛斗の方だろ」
「本当にね。選択間違えたかしら?」
「でも、俺───」
愛斗が口を開いて、先を言うのを躊躇するように閉じた。
「どーした?」
「俺……人から見ると、どうしようもないようなクズ男が好きで」
「は?」
「あ……えーと、普段自信過剰で偉そうにしてる男の情けない様を見るのが好きで」
「おいおい」
マジか。
愛斗も結構、なんつーか、感覚が人よりかなり個性的じゃねえか?
「もー愛斗趣味が悪すぎるわ!10日間くらいお預けさせたら良いんじゃないかしら?」
「3日で許してあげて」
「なら、3日間は私の相手ね」
「……わかった」
「あら、嬉しい」
ふんわりと笑う愛斗は、ちょっと嬉しそうだ。
え、3日間って、コナーの3日間って大丈夫なのか?
や、他人がどうこう言うことじゃねーのかもしれないけど、ちょっと心配にはなるぞ。
「初めまして、こんばんは。アサヒ=ワグナーです」
よろしくしたくなくて、とっさに猫を被りそつない笑みで返しておく。
ヒューゴっつー名前も強そうな名前で、そこもなんだかいけ好かない。
何が一番いけ好かないかって、オリバーを上から下まで見た後に、何も言わず最初に俺に声をかけたところが一番いけ好かない。
はい、こいつ敵ー、ってくらいには瞬時に決定した、俺の中の俺が満場一致で敵認定だ。
『敵だと思う奴は手を挙げろ』で全員が全員挙手だ。
猫被ったいい子ちゃんな俺も、裏番長な俺も、出来る仕事人間な俺も、恋愛馬鹿な俺も、全部だ。
「へえ……勿体ないね」
「ヒューゴ、あんたはもうどっか行って、向こうで飲んで頂戴」
は?何が勿体ないって?
コナーが何かの危険を感じとってか、イラついたように離れろと手を振る。
「こんな見た目だけの男に落とされずとも、他にいただろうに」
「ヒューゴ!」
コナーの声が先か、俺の手が先か。
俺の手が奴の襟首掴む方が先だったかもしれねーな。
ははっ、柄にもなくすげー間抜け面だ。
驚いたか、バーカ。
人を見下すからだ、自信過剰野郎。
「っ?!」
「おい、もう一回言ってみろよ。あ?誰が見た目だけだって?」
「アサヒ!何してるんですっ」
慌てたようにオリバーが俺の肘を掴む。
楽しそうだった連中が俺らに注目して話も手も止めているのが分かった。
けどな、俺の沸点を瞬時にブちぎってきたのはそっちだぞ。
「良いんですよ、言いたいように言わせておけば。
手を放して下さい、ね?私は大丈夫ですから……アサヒ」
そんな風に言われちゃしょうがない。
言いたいようには言わせたくないが、渋々手を放す。
全く持って俺は納得してねーけどな、オリバーが真剣に懇願するからで。
俺が相手に視線を向けると相手がたじろぐように一歩下がった。
「なんだ……似た者同士か」
似たもの同士?
まあ、ある意味似たもの同士かもしれねえなあ。
手は止めたけぞ?
オリバーが言うから仕方なく、だ。
けどなあ、売られた喧嘩は何倍にしてでも返すぞ。
俺が口で負けたのはオリバーくらいだ。
「俺があんたに落ちるとでも思ったか?ごめんな?俺すげー面食いだから無理だわ」
「ッチ……大人しいかと思ったら、とんだ猫かぶりだな」
あー……元の世界で良くされた反応だ。
こいつも、見てくれいい俺のことを、ただ味見がしかたかっただけらしい。
相手が本気になるのをゲームの様に楽しむタイプだ。
「見た目も中身も中途半端なやつよりはずっとマシだろ?」
「それは俺のことか?」
ははっ……やっぱ自信過剰なナルはいってんな。
見た目をけなされると余裕ないくらいには怒りが湧くらしい。
「ねえ、ちょっと本当にやめてくれる?
今日は絡まないって言ったでしょ?向こういきなさいよ、追い出されたいの?」
「喚くなよ、コナー」
「謝りなさいよ!」
「悪かったよ」
「そうじゃないでしょ!」
「ヒューゴ」
俺の前でコナーがキレた。
ヒートアップしそうな迫力で、俺の怒りが行き場を無くす。
これはこれで、まずいんじゃないか?って思うも、愛斗が静かにヒューゴの名前を呼んだ。
名前だけだが、なんつーかそれだけで愛斗に皆の視線が集まるくらいには独特の重みというか凄みというか……なんかこう、うまく言えねーけど、迫力みたいなものがあった。
「オリバーさんと旭さんに謝って、ちゃんと」
「……失礼な態度を取り申し訳ありませんでした」
「謝罪を受け入れます」
オリバーがいつものように穏やかな声で告げる。
けど……ああ、こいつ結構内心怒ってるな、って思ったのは俺だけじゃないだろうな、コナーも分かってるようだ。
謝罪を受け入れますって言いはしたけど、許しているかは別問題だしな。
「もういいわ……出てって」
「嘘だろ?」
「本気よ」
「……わかったわかった」
ぜんぜん反省してなさそうなヒューゴとかいう奴は、さっき話していた奴へと二三事何か告げてから店を後にする。
「いやな思いをさせてしまってごめんなさい」
「や、俺が興味本位で見たいっつったのがそもそも原因だし、先に手出したのは俺だからな」
「あれでも仕事は完璧なのよ……」
「勿体ねえのは愛斗の方だろ」
「本当にね。選択間違えたかしら?」
「でも、俺───」
愛斗が口を開いて、先を言うのを躊躇するように閉じた。
「どーした?」
「俺……人から見ると、どうしようもないようなクズ男が好きで」
「は?」
「あ……えーと、普段自信過剰で偉そうにしてる男の情けない様を見るのが好きで」
「おいおい」
マジか。
愛斗も結構、なんつーか、感覚が人よりかなり個性的じゃねえか?
「もー愛斗趣味が悪すぎるわ!10日間くらいお預けさせたら良いんじゃないかしら?」
「3日で許してあげて」
「なら、3日間は私の相手ね」
「……わかった」
「あら、嬉しい」
ふんわりと笑う愛斗は、ちょっと嬉しそうだ。
え、3日間って、コナーの3日間って大丈夫なのか?
や、他人がどうこう言うことじゃねーのかもしれないけど、ちょっと心配にはなるぞ。
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