異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

日夏

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本編

-104- 自己嫌悪 オリバー視点

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ひとりで部屋に戻ると、罪悪感がひしひしと押し寄せてきます。

先に戻りますね、私がそう言ったときのアサヒは、驚いた後、戸惑うように、わかった、とだけ返事を返しました。

アサヒが悪いわけでなく、私が悪い、それはわかってます。
アサヒからの手紙が欲しい、言う機会はいくらでもあったのです。
ただ、私が意気地無しだっただけです。

言えば、アサヒは書いてくれたでしょう。
毎日会ってるだろ?まあ、でも欲しいなら書いてやるよ、そう言いながらも書いてくれたことでしょう。
それも、やると言ったら、中途半端でなく、きっちりやる真面目さです。
どんなことでも適当に手を抜くことをせず、今出来る最善を尽くそうとする。
きっと、アサヒからの手紙は、ちゃんと心のこもったものになるはずです。

レターセットまで選びに選んで買いこんで、その際にはタイラーとソフィアまで巻き込んだのに、なのに肝心の言葉が言えずにいました。

父上や母上、伯父上は家族ですから、仕方ありません。
ですが、私より先に、コナーへ私用の手紙を出すのは、どうしても仕方ないとはと思えなかったのです。


アサヒの言い分もわかります。
自分の手の届く範囲なら、全部残らず拾って助けるような性格です。
ますます好きになります。
私のことを、損してばかりと言いますが、アサヒの方がいらない苦労を自ら拾い上げてると思います。

帰ったら続きを…と約束しましたが、私が出来る状態じゃないですね。
嫉妬心で、アサヒに酷いことをしてしまいそうです。
そうしたところで、アサヒはその行為をきっと受け入れてしまう。
何故なら、心のどこかで、私に捨てられること、飽きられることに怯えがあるから。
本人に自覚があるかないかはわかりませんが、きっと、アサヒがこれまで歩んできた経験がそうさせるのでしょう。

そんな心配はいらないのだとわかって貰いたくて、日々私なりに愛情をを注いでいます。
それはもう、他人から見たらさぞ鬱陶しい程に。

そんな私を言葉や仕草で咎めても、本気で嫌がってるわけじゃなくて恥ずかしがってるだけなので、本当に可愛らしくて…だから、私はますます付け上がってしまうのです。

今まで、顔だけが取り柄で、この顔に愛されるのがステイタスかのような扱いでした。
欠点だらけの私です。
その欠点を知る度、彼らの私を見る目はだんだんと変わっていき、最終的には、つまらないという理由で、振られる始末。

私の欠点をも受け入れてくれたのは、アサヒがはじめてなんです。
苦手なことは、無理してやらなくていい、と。
人に任せればいいんだ、と。
もっと得意なことをしていればいい、と。

仕事中、説明下手な私の話をちゃんと聞いてくれますし、ごちゃごちゃと散らかったような分かりづらい答えでも、綺麗に整理して、足りないものは補ってくれます。
それも、ちゃんと私の意図を汲んで。
メリットデメリットも聞き出してちゃんと理解して、何を売りにして、相手にどうアプローチするのかまで。

私は薬草を育て、薬を研究して作り出すのは得意ですが、説明するのも、売るのもとても苦手です。
むしろ、それしかないと言えるでしょう。
アサヒは、そのための自分だと言ってくれます。

私が見た目に反して運動神経皆無で、剣も攻撃魔法も全く出来ない軟弱さを知っても驚きだけだったようです。
ならば、俺が守るから、と。

今まで要求されるばかりの恋愛でしたから戸惑いもありますし、自分でもどうしたらいいのかわからなくなって、苦しくなることもあります。

今苦しいのは、私だけじゃない。
きっとアサヒも苦しんでいるはず。
私の態度で苦しむアサヒ。

アサヒはとても泣き虫です。
強いのに、泣き虫です。
悲しいことでも、嬉しいことでも、すぐに感動して涙を見せます。

3日目の夜にはじめて見せてくれた涙に、初めて抱いたときに見せてくれた涙。
きっと、生涯忘れることは無いでしょう。

これからも泣かせてしまうかもしれませんが、想像すると、嬉しさが込み上げます。
そんな気持ちに、より自分自身のやるせなさが募るのです。



私も私のできるところでアサヒを守りたい。
願わくば、私が、アサヒにとって心から安心出来る存在であるように。

そう思っているのに。
先程の私の態度は、アサヒを不安にさせてしまったはずです。


今夜は無理やりにでも、もう寝てしまいましょうか。

明日は朝起きたら、すぐに先程の態度を謝って、それから、アサヒからの手紙が欲しいとお願いしてみましょう。
コナーに手紙を書く前に、私への手紙を書いて貰いましょう。
そうしたら、コナーへの手紙も快く受け入れられるはずです。

自己嫌悪に苛まれているだけじゃ、何も変わりません。
誰かの助けを待つのではなくて、私からから行動しなくては。
アサヒに対してだけは、譲れない気持ちがあるのですから。

明日の予定が定まったからでしょうか。
少しだけ息をするのが楽になりました。


今日は、もう浄化で済ませてしまいましょう。
まだ少しモヤのかかるこの気持ちも、一緒に浄化出来たら楽なのに。
そんな気持ちを抱えながら、ひとり眠りにつくのでした。





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