異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

日夏

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本編

-18- 何も知らない

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次に目が覚めた時は、豪華なベッドの中だった。
窓の外はすっかり日が暮れかけていて、紫がかった空を背に家々の屋根が黒く影となって主張していた。
服も少し大きめのパジャマに、同じ色のズボン。
どちらも絹のような手触りだった。

おかしい、と思ったのは、起き上がった時だ。
尻とちんこを確認したら、貞操帯はなかった。
まさか夢なのか?と思ったが、よく見るとちんこと腰に痕がついているから、実際にははまっていたようだ。

すぐには取れないとかいってたのに、取れたのか?
それともまさかとは思うが、何日も眠ってた、なんてことないよな?
……取れないとか言って、実はとれるもんだったとか。
だとしたら、流石に奴を嫌いになりそうだ。

コンコン
「はい」
軽快なノックに、返事をすると、奴が入ってきた。
相変わらずいい匂いをまき散らしているが、今は白衣を着てはいなかった。
仕立てのよさそうな白いシャツに、同じく仕立てのよさそうなベージュのパンツを身についけている。

まだ名前も聞いていない。
なんだかずいぶん疲れていそうだ。

「ああ、起きてましたか。体調はどうですか?」
「ん、悪くない」
「なら、良かったです」

うっすらと笑われて、なんだか無理してそうに見えた。
…なんか隠してんのか?

「あんたの方が体調悪そうだけど…大丈夫なのか?」
「…ええ、少し魔力を使いすぎただけですから
それより、思ったより早く魔道具がとれてよかった」

魔道具、貞操帯のことか。
安堵するように言うから、取るのに苦労でもしたのだろうか。
魔力を使いすぎるっていうのはよくわからないが、俺の貞操帯を取るために使ったって言うんなら…申し訳ないな。

たしか、神器は魔力供給に長けてるんだったはずだ。
俺には何か出来ることがあるんじゃないか?

「俺に出来ることはあるか?」
「…貞操保護具は外れましたが、ここに、私といてくれますか?」
「俺は、お前の神器なのか?」
「ええ、そうです」

そうか、あのルーカスとかいう銀髪野郎が選んだ相手がこいつか。
それだけは、褒めてやろう。
だが、これだけ豪華なところに住んでるんだ、貴族だろうし、俺と近いだろうこの年。

「…恋人は?」
「いません」

マジか。
この顔で、この声で、この匂いで、貴族なのに恋人がいない?
俺にはかなりの優良物件に思えるが。

「結婚は?」
「していませんし、したこともありませんが、あなたとなら」
「………」

はいよろこんで、って言いたくなるが、ぐっとこらえる。
なぜってまったく状況がつかめていないからだ。
どんなに自分好みで好きになってしまった相手であっても、そんな会ってすぐ結婚、はい、オッケーとは言えないだろうが。
元の世界だったら詐欺案件だ。

あれだけ口が回ったんだ、リップサービス……じゃ、なさそうだな。
目の前の男が何やら少し思い詰めていそうなので、これだけは言っておくことにした。

「一緒にいたいから、面倒見てくれ」
「っ!……はい、はいっ!喜んで!」

驚いた顔をした後に、嬉しそうに笑うからなんだかこそばゆい。
こいつ、こんななりだし、あんなことしたからかなり器用そうに見えたが、実はそうでもないんじゃないか?
…面倒見るのがこいつじゃなくて、俺がこいつの面倒を見ることになるかもしれないっていう嫌な予感がするが、もう返事をしちまった後だ。
しかも、そうなったらそうなったで、楽しそうだと思う自分がいる。

「それと、俺はお前の名前もまだ知らないし、この世界のことも知らないし、俺に何が出来るかも全然なんも知らない」
「あ。すみません……名乗ってもいませんでした」
「だから、色々教えてくれ」
「はい」
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