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七話 現実が繋がる時

彼の狙いは

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 固まった俺を和らげてくれたのは、頭を撫でる東郷さんの手だった。

「これから正代君は強化合宿や選手権の誘いが増えると思う。それは君に実力があるだけでなく、その体を狙っている者がこの業界にいるからだ」

 昨日の関係者たちの言動を見れば、東郷さんの言うことは嘘ではないと分かる。未だに信じられない思いでいっぱいだが……。

 少し思考が動くようになり、俺はふと気づいたことを口にする。

「まさか……東郷さんは最初からそれが目的で、俺を指名したのですか?」

 この強化合宿に参加したのは、東郷さんからの要請があったから。
 そして合流した後の距離の近さを思い返せば、そう考えるのが自然になってしまう。

 しばらく東郷さんは本音が読めない目で俺を見つめてから、わずかに首を横に振った。

「……いや。俺は強くなろうとする君を傷つけ、その芽を摘もうとする輩から守りたかっただけだ。俺が望むのはただひとつ。君の成長……それだけなんだ」

 優しく真っ直ぐな眼差し。考えが読めずとも、嘘を言っているようには見えない。

 こんなに東郷さんが俺に望むことがあっただなんて。

 羞恥とは別の熱が俺の胸をじわりと熱くする。
 すべてを信用する訳にはいかないが、今は東郷さんの好意に甘えよう。

 おかしな状態になっているが、俺を常敗にしている東郷さんが俺の成長を期待してくれている。これほど光栄で嬉しいことはない。

 俺は気だるい体を起こし、腰の状態を確かめる。散々抱かれて腰の深い所がまだ埋まっているような違和感がある。だが問題はない。起きて動き出せばやがて気にならなくなる。

 一糸まとわぬ姿である現実を直視して気は遠のくが、済んだものは仕方がない。前へ進むしかないのだから。

 先にベッドを抜け出した東郷さんは、近くのテーブルに置いていたペットボトルの水を俺に渡してから背を向けた。

「先にシャワーを浴びて準備させてもらう。朝食が終わってから、また乱取りに付き合って欲しい」

「分かりました」

「……切り替えが早いな。その柔軟な姿勢は感心する」

 満足げに東郷さんは頷くと、俺に近づいて軽い口付けを与えてくる。

「また君のことを深く知りたいな。今度は薬もなく、俺が相手だと認識した上で……」

 ……もしかして、悪ノリしているのか? あの東郷さんが?

 戯れの言葉だと分かっていても、意識させられることを言われると顔が熱くなってしまう。

 耐えきれず両手で顔を覆って唸っている俺の耳に、東郷さんの静かな笑いがずっと残り続けた。
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