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2 Blue Brain BBomber

#2γ

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『ラボ』とは2046年現在、全国の「病院」に必ず併設されている異形駆除用の装備を開発・研究している半官、半民の機関だ。駆除課の主な業務は異形の駆除の他この研究機関と連携し、異形の『核』から様々な武器や防具を作りだし、それらを各支部に支給する事である。ここで開発された装備が駆除課で運用される。

『クロエ、クロエ聞こえるか?私だ』
「あっ、主任」
端末の向こうから聞こえてきたのはリョウコの声だった。
『聞いての通りだ、4日前にS河の養殖場に無断で入り込んだバカ共がBBQ中にソトン型に襲われて何人か行方不明になった件、覚えてるだろ?』
「はい、昨日の『外回り』はその行方不明者の捜索もかねていたんですよね?」
クロエが答えた。
『そうだ、そしてついさっきバカどものひとり……というか生存者の一人が『最後に残りの行方不明者がバンでT駅廃墟に逃走するのを見た』と今朝になって白状した。そこでお前達に行方不明者の捜索、並びに救助を命ずる』
「了解しました。場所は?」
『ここから4キロほど離れた駅前の廃ビル街を中心に捜索しろそこにいるはずだ』
「わかりました、では」

リョウコとの通信を終えると二人は早速『ラボ』を
出て行こうとした、その時
「おい、二人とも待て」
クマさんが呼び止めた。
「なんでしょう?」
「ちょっと付き合ってくれないか?」
「えっ?」
「君達の話を聞いて思いついた。突然で申し訳ないが開発中の新型『装備』をテストしてほしい」
「どゆこと?」
オクショウが尋ねる。
「つまり君達には実験台の役を頼もうと思ってな、ほら、以前『異形』の体組織を素材に使ったスーツを試作中だと話しただろう?」
「ああ、アレのことですね」
クロエが思い出したように言う。
「そう、あれだ。実は先日ようやくテストタイプが完成したのだが、このサイズのサンプルはまだ誰も試していない。だから君達が第一被験者となってくれ」
「なーるほど、そういうコトならお安い御用です♪」
「別に構いませんけど……」
声を揃えて承諾する二人
「おお、感謝するぞ二人とも。では早速だが……」
「主任」
「なんだ?」
「その『装備』ってどんなのですか?」
クロエが尋ねる
「ふむ、一言で言うと『超高性能』な防護服だ」
「ほう、それはすごい」
「しかも装着者の筋力や骨格に合わせて自在に変化してサイズ調整もできる優れものだ」
「へぇ~それは凄いなぁ~」
「さらに防御性能はクラーヴァ(牛)型のタックルに耐えるほどで……」
「そんなにスゴイんですか!?」
「あの、ちなみにそのスーツの素材は……」
クロエが尋ねる
「(……ん?)」
「……3年前にシベリアで捕獲された『異形』を原材料に使ってている。私のポケットマネーで買った。特許を20個ほど売ったがね」
「……」
「(それ絶対ヤバい奴やん)」
クロエは心の中でそう呟く
「どうだ?すごいだろう?」
「あははははは!」
「……はぁ……」
何故か大声で笑うオクショウとため息をつくクロエ
よし、早速で悪いが『装備』を準備するから少し待っててくれ。できたら別室に呼ぶ」
「はーい」
「あ、主任」
部屋を出て行こうとするクマを呼び止めるクロエ
「なんだ?」
「その新型『装備』は今すぐ着られるものなんですか?」
「いや、君達にはスーツを着る前に一度仮死状態になってもらう必要がある」
「え?」
「詳しいことは後で話すが……まあ、要するに『死ぬ』わけだ」
「……」
クマさんが説明を続ける。
「いいか?異形とは宿主に感染した特殊なウイルスが生命力を吸い取って成長したものだ。そして異形の『核』には宿主の生命情報が刻み込まれているはずだ。そこで私の開発した人工『核』に君達の生命情報を一度転写し、それを『装備』に組み込むという作業を行うんだ。その上で君達の死体に『装備』を着せる……簡単に言えば『ゾンビ化』みたいな感じだな」
「えっと……つまりアタシ達はこれから『異形』になるってコト?」
オクショウのドストレートな質問にクマが答える。
「心配しなくてもいい、あくまで一時的な処置だ。君達の生命情報は『核』に保存されT市をいるから、『ラボ』で蘇生措置を受ければ生き返れる。ただし
、その『装備』を着た状態で『核』を破壊された場合は二度と元には戻れないがな」
「うげぇ、怖っ」
呻くオクショウ
「それじゃあ機材を準備するから着替えて待っておけ」
そう言って部屋から出ていくクマさん。
残された二人は指示通り試着室で着替えた。
数分後、指示通りノーズロになりワンピースタイプの病衣に着替えた二人はクマさんに連れられて研究室を訪れた。「よし、早速だが『装備』を起動しよう」
クマさんが言った。
「この台の前に立ってくれ。なるだけ体を機械にくっつけてな」
クマの助手の男に案内され、二人は分厚いガラス窓で仕切られた奇妙な広さの別室にある装置の前に立たされた。
壁も天井も今まで見たことのない光沢のある素材でできているようだ。
「では、これより実験を開始する」
「実験開始!」
クマさんが言うと顔見知りの地味な顔の助手が機器を操作する。と室内に甲高いブザー音そして別室の地下から黒鉄色の分厚い金属の塊がせり上がってきた。
それは一見すると戦車のキャタピラのように見えたが、よく見ると無数の触手が生えているのがわかる。しかも先端の口のような部分からは赤黒い液体が滴っていた。
「わっ!」「ひゃあっ!?」思わず驚く二人。無理もない、いきなり得体の知れない物体が現れたのだから。
「なんだこれぇ!気持ちわる~!!」
オクショウが叫ぶ。
「大丈夫だ、こいつは私の自信作。名前は『ドゥオナ』だ!どうだ?かっこいいだろう!?」
「いや、そういう問題じゃないんだけど……」
クマの自慢げな紹介にクロエが突っ込む、
しかし当の本人はお構いなしの様子だった。
「さて、この装置で今から君達を『異形』に変異させるわけだが……」

「あ、主任」
部屋を出て行こうとするクマを呼び止めるクロエ
「なんだ?」
「その新型『装備』は今すぐ着られるものなんですか?」
「いや、君達にはスーツを着る前に一度仮死状態になってもらう必要がある」
「え?」
「詳しいことは後で話すが……まあ、要するに『死ぬ』わけだ」
「……」
クマさんが説明を続ける。
「いいか?異形とは宿主に感染した特殊なウイルスが生命力を吸い取って成長したものだ。そして異形の『核』には宿主の生命情報が刻み込まれているはずだ。そこで私の開発した人工『核』に君達の生命情報を一度転写し、それを『装備』に組み込むという作業を行うんだ。その上で君達の死体に『装備』を着せる……簡単に言えば『ゾンビ化』みたいな感じだな」
「えっと……つまりアタシ達はこれから『異形』になるってコト?」
オクショウのドストレートな質問にクマが答える。
「心配しなくてもいい、あくまで一時的な処置だ。君達の生命情報は『核』に保存されT市をいるから、『ラボ』で蘇生措置を受ければ生き返れる。ただし
、その『装備』を着た状態で『核』を破壊された場合は二度と元には戻れないがな」
「うげぇ、怖っ」
呻くオクショウ
「それじゃあ機材を準備するから着替えて待っておけ」
そう言って部屋から出ていくクマさん。
残された二人は指示通り試着室で着替えた。
数分後、指示通りノーズロになりワンピースタイプの病衣に着替えた二人はクマさんに連れられて研究室を訪れた。「よし、早速だが『装備』を起動しよう」
クマさんが言った。
「この台の前に立ってくれ。なるだけ体を機械にくっつけてな」
クマの助手の男に案内され、二人は分厚いガラス窓で仕切られた奇妙な広さの別室にある装置の前に立たされた。
壁も天井も今まで見たことのない光沢のある素材でできているようだ。
「では、これより実験を開始する」
「実験開始!」
クマさんが言うと顔見知りの地味な顔の助手が機器を操作する。と室内に甲高いブザー音そして別室の地下から黒鉄色の分厚い金属の塊がせり上がってきた。
それは一見すると戦車のキャタピラのように見えたが、よく見ると無数の触手が生えているのがわかる。しかも先端の口のような部分からは赤黒い液体が滴っていた。
「わっ!」「ひゃあっ!?」思わず驚く二人。無理もない、いきなり得体の知れない物体が現れたのだから。
「なんだこれぇ!気持ちわる~!!」
オクショウが叫ぶ。
「大丈夫だ、こいつは私の自信作。名前は『ドゥオナ』だ!どうだ?かっこいいだろう!?」
「いや、そういう問題じゃないんだけど……」
クマの自慢げな紹介にクロエが突っ込む、
しかし当の本人はお構いなしの様子だった。
「さて、この装置で今から君達を『異形』に変異させるわけだが……」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「なんだ?」
「あの、私達が『異形』に変わるのはわかりましたけど、具体的にはどうやって変異するんですか?まさか変身するとか言わないですよね!?」
「いや、そんな大袈裟なものでもない。ただ君達には精神を集中してもらうだけだ。その部屋自体が転写装置の役目を果たす。先ほど説明した通り、まず君達の意識を『人工核』に一時的にコピーする。次に君達の肉体を『ドゥオナ』に喰わせる。そしてに『ドゥオナ』の内部(なか)で変異した君達の肉体に意識を転写した『人工核』を植え付ければば完了だ。作業は全て『ドゥオナ』の内部で行われる」
なんか、凄いことになってますね……」
クロエが呆れたように呟いた。

「よし、そろそろ始めるぞ」
クマさんの指示に従い二人は台の前で胸を前に突き出し磔のような体勢になる。
と、天井からほんのりとリンゴの香りがする無色透明なガスが吹き出してきた。
(あ……いい匂い..)
ふわりとした心地よい感覚に包まれる二人。
「これは?」
「安心しろ、リラックス効果のある特殊ガスだ、これ自体に害はない」
「えー?ホントかぁ……?」
「……」
不安そうな表情を浮かべるクロエだったが、やがて体中に不思議な感覚を覚えた。
「ん……」「うぅっ……」体が熱くなり、同時に少し息苦しくなる。
「あ……なに、コレ……?」
「あつい……あついよぉ……」
二人の全身に汗が滲む。
「おい、オクショウ……お前の肌、真っ白になってるぞ」
「え?」
オクショウが言われて自分の腕、病衣を捲って脚を見ると確かに全身が死体のように真っ白くなっている。
「うわ、すっげ!このまま家に帰りたい!」
「なんだよこれ!?」
驚く二人を尻目にクマは淡々と続ける。
『よし、準備が整った。これで君達の肉体は死んだし意識のコピーも終わった。そのマウトゥガスのお陰でな。後は『ドゥオナ』に喰わせれば君は完全な異形となる。気休めだが痛覚も死んで痛みは感じないはずだ、あっ、喰われてるときは何か楽しいことを考えるんだ。来週のアド街のこととか、な』

「いや、アド街の何を楽しめって言うんですか!?」
クマの説明に突っ込みを入れるクロエ。
『まあいい、じゃあいくぞ』
「ああもう、こうなったらヤケクソだ!」
「お願いします……」
二人が覚悟を決めると同時に再び部屋にブザーが鳴り響いた。
ゴクリと唾を飲み込む二人。
次の瞬間、異形のような咆哮をあげ『ドゥオナ』が身じろぎした そして身幅ほどある口を開いた機械仕掛けの怪物が二匹の獲物に襲いかかった。
(……こいつどこから声出して吼えてんだ?)
喰われる直前クロエはそんなどこか場違いなことを考えていた。
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