土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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マーブルマーブル感謝祭【6】

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「ああ………ベッドで死ぬまで眠り続けたい………」

 早朝、叩きつぶしたい気持ちになりながらも私はゆっくり身体を起こし、リンリン鳴っている憎き目覚まし時計を止めた。


 カーテンからさんさんと射し込む朝陽。

 本日も晴天なり。


 今は日課の鍛練をしているのか、既にベッドにはダークの姿はなかった。

 お弁当を作るため階下に降りると、すりすりと足元にアズキが甘えてきたので、カリカリを器に入れて、水を補充した。

「アズキ、美味しい?」

「ンニャンニャ」

「そう。良かったわねえ。じゃ、ママはお弁当と朝食の準備をするわね」

 そう言って軽く一撫ですると、厨房に入った。

「リーシャ様、まだお休みになってて下さいな。朝食は私がやりますから」

 ジュリアも既に起きて厨房で米を研いでいた。サリーたちは外出する前に手早く掃除を済ませるべく動いているようである。

 皆が働き者で助かるわ。
 修羅場になる度にこき使う主人を許してねえぇぇ。

「おはよ………朝食は任せるわ。でもお弁当は作らないと。ダークが楽しみにしてるから」

 ダークも子供たちも私の作るご飯が大好きである。外食より家で食べる事を好むので、手抜きが出来ないのはちょっと残念だが、嫌がられて外食ばかりを好まれても、それはそれで主婦としてショックだからね。

 料理ぐらいはちゃんとしないと本当に役立たずなだけのヒッキーになってしまう。

 私は、パシパシっと頬を叩いて冷蔵庫から玉子を取り出した。


◇  ◇  ◇


「………とりあえず、何かまた人口が増えてるな」

 ダークが鍛練の後のシャワーを終え、食堂へ降りてくると、テーブルを囲む面々を眺めてから私に声をかけた。


 そう。マイファミリー以外には、クッキング強制ブートキャンプに入れられたフランや娘のリアーナだけでなく、帰城した筈のレイモンド王子や王宮に宿泊中のジークライン王子、果ては私の兄マークスや弟ブライアンまでもがモシャモシャとご飯を掻き込んでいる姿がそこにはあった。

「お早う義弟(おとうと)よ!爽やかな朝だな!」

「ダーク義兄さん、お邪魔してます」

 軽く手を上げて挨拶して来た2人に頭を下げつつ、私に問いかけるような目を向けた。

「出るんですってよ、マークス兄様もブライアンも今日の大人競技。
 驚かそうと黙ってたらしいの」

 ご飯をよそった茶碗を渡しながら私は苦笑した。

 どうせなら一緒に会場入りしようという事で、ついでに可愛い甥っ子姪っ子たちの顔も見れるし、と朝食を食べがてら屋敷にやって来たらしい。

「なるほど………で、レイモンド王子とジークライン王子は?」

「僕は一緒に行こうとクロエに誘われまして。ついでにリーシャさんのご飯を頂いて試合への鋭気を養おうと。ねークロエ?」

「はい!そうなのですとーさま」

「………そうか」

「オレ………ぼくは、カイルたちときょうのエク?エキシビション?というのにでるように、とーさまとかーさまにいわれました。
 ゆうしょうしたダンスをまたみたいそうです。それならここからみんなでいったほうがはやいとおもいまして、ええ。
 ルーシーさん、ぼくキューリのおつけものをおかわりで」

「かしこまりました」

 シシャモをはむはむ食べていたレイモンド王子は、そう答えると空になった小皿をルーシーに渡した。

「ルーシーさん、僕はトーフの味噌汁を」

 ジークライン王子もさりげなくお代わりを所望している。


 パパンはインフルエンザになったので別邸でママンと療養中だそうである。

 孫にうつしたらまずいから、と涙を流しながら感謝祭を見に来るのは諦めたそうだ。

 うん、悪いけど来ないでね。
 インフルはすぐ拡がるから。
 安静、という名の隔離で早く治して頂きたいものである。母様ふぁいと。


 それにしても、何気にレイモンド王子もジークライン王子もウチの屋敷に馴染んでいるのがたちが悪い。

 何で朝っぱらから人ん家で遠慮もなしに食い散らかしているのだろうか。

 そして、使用人たちも兄弟も、前ほど動揺も緊張もなく、普通に受け入れてしまっている。

 
 これは、俗に言う『囲い込み』という奴ではないのだろうか?
 いや、慣れさせて外濠を埋める?埋める?

 うまい言葉を思いつけないが、どちらにせよあまりよろしくない展開である。


 だが、この問題を掘り下げるためには私は現在、体力値が大幅に減少している。レベル1の勇者みたいなもんである。
 スライムのワンパンで戦闘不能になる、か弱いレディーだ。

 まあレディーがスライムにワンパンを食らう状況というのが想像できないけども。

 ………よし、この光景は心身喪失状態でよく覚えていないという事でデリート処理しよう。
 忘れたらいけない事すらよく忘れる、脳のメモリー機能が故障中の私には容易いことだ。
 

 味噌汁をすすりながら、今日の大人競技が平穏無事に終わる事だけを願い、都合のいい時だけお願いする神様にも祈って、明日から迎えるファミリー水入らずののどかな暮らしだけを思い描く事にした。



 お弁当とクッキーやパウンドケーキを馬車へ積み込んだ後、皆で馬車に乗り込んで会場に出発した。………と言っても30分もかからない近場だけど。

 お菓子の馬車に2人分の空きスペースがあったので、私は夫婦で乗り込んだ。

 ダークの隣でずーっとゴロゴロ咽を鳴らして甘えて栄養補給させてもらう。胸板厚いわ眩しいわイケメンだわ眩しいわ優しいわ眩しいわ………まあつまりは目には優しくないが、心には優しい私の必須癒しアイテムである。

「ウチの奥さんが朝から俺を堕落させようと誘惑する」

 胸板にすりすりと頬を寄せてると、ダークが私の頭を撫でながら呟いた。

「人聞きが悪いわね。誘惑じゃなくて癒されてるのよ。エネルギー源の補給ぐらいさせてちょうだい。暖かいし」

「暖炉扱いだった」

「暖炉はこんなエロ格好よくもないし、いい声もしてないし、キスも出来ないわよ?こうやって手も繋げないし」

「………ああ、このまま屋敷に戻って寝室へ連れ込みたい。ウチの奥さんの言動が破壊力ありすぎて困る………」

「ウチの旦那様は妻を甘やかしすぎるわね。色っぽい話はともかく、今日の借り物競争は別に1位とか考えないでいいから、怪我にだけ気をつけて楽しんでね?」

「1位になれるかは借り物次第だが、出来るだけ勝ちたいな」

「マークス兄様たちは何に出るのかしらね?」

「さっき聞いたら、義兄さんは借り物競争と大体100メートル走、ブライアンは友人とリレー、ジークライン王子は綱引きと借り物競争だった」

「あら、借り物競争が人気なのね」

「そうらしいな。だから尚更勝ちたい」

 私はダークの頬にキスをして、

「ほら、勝利の女神なんでしょ。これで頑張れる?」

 とイタズラっぽく笑った。

「………こっち」

 トントン、と唇を指差すダークは後光が射すほどのとんだセクシーダイナマイトである。
 思わず防御機能が働き糸目になる。

「あまりリーシャからはしてくれないしな」

「何だか恥ずかしいのよね………」

 ダークの目元を手で隠して、てい、と唇にキスをした。

「これでいい?」

「………うん、まぁリーシャにしては頑張ったと思うが、色気も素っ気もないな」

「昼間は健康的なのが良いと思うわ」

「よしそれじゃ1つ、子供たちにいいところ見せられるよう祈っててくれ、女神様」

「分かったわ!」

 そんな話をしてる間に会場へ到着した。




 そして、ここから大人げない大人競技がスタートする事になると私が気づくのは、大分時間が経ってからの事であった。




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