土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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マーブルマーブル感謝祭【2】

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【ダーク視点】

「はい、お次の方は………おや。シャインベック家のお坊っちゃまとお嬢様に………レイモンド王子によく似た御友人まで」

 受付で名前を聞きながら紅白に分けてハチマキを渡していた電気屋のオヤジが、俺の顔を見て笑顔を見せた。

 商店街の人たちは、俺に優しい。
 リーシャが俺の事を買い物の度に持ち上げまくって話をしているようで、ここ数年は、

『リーシャちゃんと子供たちを一番大切にしている、思いやりのある人柄の練れた素晴らしいパパ』

 みたいなこそばゆいイメージを与えているようで、昔のような冷たい目を向けられることも殆どなくなった。

 確かにリーシャも子供たちも一番大切にしてるが、俺は聖人のような人間ではない。

 そんなに人柄が練れているならしょっちゅう向けられるリーシャへの羨望や憧憬の眼差しに苛つく事もないのに。

「よくにててなまえもレイモンドともうします」

 レイモンド王子がお辞儀をしてハチマキを受け取る。

「はははっ、やだなぁ冗談ばっかし………ねえダークの旦那?」

「いや、レイモンド王子だ。うちの子たちの友人でな。今回同じチームで参加したいのだが」

「………え?本当にレイモンド王子なのですか?」

 急に怯えた様子のオヤジに、アナが笑いかけた。

「う?だいじょーぶよ。レイモンドさまこんなかおしてるけどおこってないよ」

「そうですよ。こんなかおですけどかなりゴキゲンです」

 カイルも頷きながら援護している。

 無意識にディスるのは止めて欲しい。
 レイモンド王子は気にしてないようで、

「そうです。いつもおこっているようにおもわれますが、そうでもないのです」

 などと返している。

「は、はあそうですか。ーーーじゃ、じゃあ皆さん赤チームでお願いします」

 オヤジからまとめてハチマキを受け取ると、アーネストが確保しておいてくれたエリアに向かう。

「旦那様!こちらでございます!」

 アーネストの声のする方を見ると、若干顔を青ざめさせたアーネストが必死でぶんぶん手を振っていた。

(うん、なかなか見やすいところを取れたじゃないか………結構な人なのに、な………)

 と子供たちを連れて行くと、見覚えのある奴らが何故か我が家の隣のラグマットを囲んでいる。

「指揮官どの、おはようございます!」

 敬礼をしながら王宮詰めのアランたちが挨拶をしてきた。
 もうイヤな予感しかしない。

「やあ、いい天気で良かったよね」

 チクショウやっぱりか。

「とーさま!かーさま!」

 レイモンド王子がたたたっ、とナスターシャ妃殿下の胸に飛び込んだ。

「ご機嫌麗しくライリー殿下………」

 爽やかに声をかけてくるライリー殿下と、笑顔で手を上げたナスターシャ妃殿下に頭を下げる。

 アーネストが顔色悪い訳だ。


 そして、何故かもう1人。


「おとう………シャインベック指揮官どの。酷いではありませんか、こんな大事なイベントを教えて下さらないなんて!」

 今お義父さんとか言いかけなかったかクソ王子。

「ジークライン王子………いえ、こんな小さな町のイベントに、遠くから来て頂くのも心苦しいですし」

「水臭いではありませんか。私とシャインベック家との仲で」

 おいどんな仲だ。まだ何にもないぞ何にも!

「あ!ジークさま!」

 クロエがジークラインを見つけて嬉しそうに駆け寄った。

「きょうもあいかわらずキレーですねえ。おめめのごちそうです」

 ニギニギと握手をしながらクロエがポポポと頬を染める。

「クロエだけだよそんな事言ってくれるのは。感謝祭の事、教えてくれてありがとう。明日は僕も競技に参加するから応援してね」

「はいもちろんです!」

 ………犯人はクロエか。

 舌打ちしたいような気分で隣のマットに腰を下ろす。

(旦那様………いつの間にかジークライン様が私を見つけて隣にマットを敷いたと思ったら、あれよあれよで殿下と妃殿下までいらっしゃいまして。私の心臓が持たないのですが)
 
 小声で呟きながらアーネストが俺に悲壮な顔で訴えた。

(俺も辛いが今さらどうにもならん。心を無にして耐えよう)

 ハチマキをみんなに結んでやりながら小声で返す。


 すると、カラーンカラーン、と鐘の音がして、開催の挨拶でリーシャが拡声器を持って現れた。

 ああ、俺の癒し。俺の女神。


 周囲にマットを敷いた観客から溜め息が漏れ聞こえる。

「いやいつみても相変わらず美しいな」

「なんか今日は美しさもいつにも増して、何と言うか儚げな感じで、心が締め付けられるな………」

「ああ儚げ儚げ。思わず守ってやりたい気持ちにさせられるな、人妻なのに」

「………あんなに綺麗に生まれたかったわぁ」

 家族だから分かる。
 あれは儚げなのではなく疲れがMAXで本当に儚くなりそうなのだ。

 ついでに言うと、リーシャは自分の事を綺麗だとか毛ほども思ってない。
 こんな事を周りで言われてると知れば、鳥肌を立てて嫌がるだろう。

「ご来場の皆さま、ようこそいらっしゃいました!第1回マーブルマーブル感謝祭でございます。今日と明日はご友人、ご家族と奮ってご参加頂き、楽しみましょう!
 今回は僭越ながら、金一封か私が作りましたケーキが賞品として上位の方にご希望で選んで頂けます。見本を運営ブースの前に出しておりますので、よろしければご覧頂ければ有り難いです。
 参加者にはクッキーをお渡ししてますので受け取って下さいませ。
 そして皆さまのーーー」

 話している途中で俺を見つけたリーシャは花が綻ぶように笑ったが、隣を見て一瞬目を見開いて、さりげなく視線を逸らされた。
 

「み、皆さまの力一杯の応援を子供たちにお届け下さるようお願い致します!」

 拍手喝采の中、お辞儀をしつつリーシャが運営ブースのあるカフェに戻って行く。

 俺には分かる。

 ジークライン王子やライリー殿下たちを見て、子供たちが出るギリギリまで表に出ないつもりだ。



 先日、子供たちの舞台で両サイドを王族に囲まれた時のリーシャの気持ちが痛いほど分かった。

 これは、かなりの苦行だ。

 溜め息をつきたい気持ちで、俺は横で楽しそうに語らうジークライン王子とクロエを見つめるのだった。


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