土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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王族フラグは踏んでも踏んでも立ち上がる。

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 変態王子とジークライン王子が無事に帰国してくれたので、我が家には平穏な日々が戻ったように思えた。



 パパンとママンが遊びに来た時に、オブラートで包みまくり、

「もしかすっとクロエってば大人になったら隣国の第2王子に嫁ぐかもしんねーよ。
 うんにゃクロエの方が惚れちまったみてぇでよー。
 いやーギリまで頑張っては見るけどもよー、ほれ、こればっかりは親がどうこう言ってもどうもならん事もあるっしょ(意訳)」

 と打ち明けといたが、一瞬の沈黙の後、

「いや、皇太子の方が格好いいだろう?何で第2王子なんだ?」

 とパパンが目を見開いた。

 ふん。顔はどうあれ、私の目の黒い内はあんな変態に娘はやれん。
 ま、一生黒いけどな私の目は。わははははっ。

 守秘義務があるので真実を言えないのが辛いところではある。

 ただ、守秘義務がなかったところで

《何故変態だと分かったのか?》

 という一番重要な部分を説明するには、私の黒ピタのミニワンピに網タイツ、赤のピンヒールにロウソクをタラり~ん靴をお舐めオホホホホ等という、闇歴史を語らなくてはならない。

 んなもん封印に決まっているだろう。


「ねえクロエ~、ちょっといらっしゃーい」

 居間のテーブルでジークラインへ送る絵をちまちま描いていたクロエが、とてとてと私のところへやって来た。

「クロエは、ギュンター王子とジークライン王子、どっちが格好いいと思う?」

「ジークラインさま」

「じゃあ父様とジークライン王子ならどっち?」

「とーさまがいちばん。でもとーさまはかーさまのだんなさまでクロエのとーさまだからダメなの。
 つぎにかっこいいひとはジークラインさま。キレーなの」

 ポポポ、と頬を染めて照れる娘を見てパパンが愕然とした顔をした。

「ちなみに、じいじは?」

「じいじもかっこいいの。
 クロエは、ばあばとかーさまみたいにやさしくてかっこいいだんなさまがほしいの」

 ママンも唖然とした顔でクロエを眺める。

「母様もそう思うわ。でも、これからもっと沢山格好いい男の子が現れるかも知れないから、ジークライン王子だけじゃなくて周りもよーく見なさいね。まだ大人になるまで時間はいっぱいあるんだから」

「あい。でもジークラインさまがいいの」

「(ちっ)………まあそうなの。じゃ、ジークライン王子へのお絵描き続けて来ていいわよ」

「あい」

 テーブルに戻っていくクロエの背中を見ながら、

「………まあ、こう言う事よ」

 と私は苦笑した。

「美的感覚が正常………いえちょっと一般的ではないの。私と一緒で中身を見るタイプだと思って欲しいわ」

「クロエが、クロエが隣国の王族に嫁ぐかも知れないと?
 ただでさえウチの国でも王子の嫁候補アリ地獄状態みたいになってるのに、ちょっと会わないうちにどうしたらそんな王族ホイホイみたいな事になってるんだいリーシャ?
 でもクロエに格好いいと言われてじいじは嬉しいっ………ああこの複雑な思いを一体どうすればっ」

 哀しみと喜びが絡み合ったような顔でパパンは髪をガシガシ掻き回した。


 余談だが、この国でも「つまんでホイホイ」という名称で台所用の黒く輝く虫取り粘着テープが売られている。ホイホイは全世界の共通語なのだろう。


「まあまだ先の話よ。クロエが別の人を好きになったらそれまでだし。一応話だけは父様達に通しておかないと、と思って」

「………驚きはしたけど、まあリーシャがダークと結婚した時から、予想はしてたわ」

 ママンはそう言うと、にっこり笑い、

「でも、グラハムもダークも優しくて素敵な旦那様なのは間違いないし。
 クロエが捕まえたいと思うならいいんじゃない?応援しましょ。
 もう正直、リーシャみたいな可愛い娘を生んだ時から、絶対に国レベルのゴタゴタが起きると思ってたもの。
 たまたまリーシャはそうなる前にダークと結婚したけど、ゴタゴタの心配が孫にスライドしただけの話よ。
 先の事は気にしない気にしなーい。
 そんなに心配ばっかりしてると禿げるわよグラハム」

「っ、パトリシアひどいじゃないか!まだ毛根は元気いっぱいだよ。少年の肌ぐらいぴっちぴちだからね。本当だよ?」

「ぴちぴちな少年もいつかはオッサンになりジー様になるのよパパ。
 良いじゃないの。焼け野原のように禿げ散らかしたとしても、それを理由に離婚はしないわよ私。だから安心して禿げちゃっていいわよ?」

「だから禿げないよまだ!
 それより、ほっ、他の理由があるのかいママッ?」

 パパンが目を潤ませたが、私はママンのこういう良く言えば懐の深い、悪く言えば大雑把な性格が大好きだ。
 モノの考え方が私と似ている。
 血は争えないものだわね、とつくづく思う。


「………おい、もしかしてアナも、レイモンド王子に惚れてたりするのか?」

 パパンが訊ねたが、私は首を横に振った。

「アナはあんまりそう言う乙女チックなタイプではないわね、まだ」


 何しろ現在の興味はアーネストの尾行である。


「気がつくと背後の鉢植えの陰にいたり、ソファーの後ろから覗いていたりするので御座いますよ」

 ハッハッハ、と嬉しそうに笑って報告された時には、相変わらずウチの子はミステリーサークルみたいだわと思った。

 謎が謎を呼ぶうちに、元の謎がどうでもよくなる新たな謎が生まれるのだ。


 何かこそこそと「しゅばらしい」「なるほど」などともっともらしく頷きながらメモ用紙に書き付けていたみたいで、落ちていたメモをアーネストが拾ってみたら、『○』とか『▲』『×』だのと謎めいた記号が書かれていたそうだ。きっと自分が書けるものを使っただけだと思う。

 覆面調査員ごっこでもしているのだろうか。子供というのは時に突拍子もない事をやるが、特にアナは頻度が高い。

 だけどアナ、老け専までは認めるけど、3歳からの看取り専は許さないわよ。
 結婚適齢期になる頃に寝たきりか土に還ってるかも知れない儚い婿は要らないわ母様。



 そんなある意味では通常運転な我が家に、王宮からの呼び出しがかかったのは、それから2日後の事だった。




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