土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

文字の大きさ
105 / 256

親善試合【5】

しおりを挟む
【ダーク視点】

「勝者、ダーク・シャインベック!」

 味方の応援席から歓声が上がり、フウッと息がこぼれた。

 隣国のムキムキの大男が参りました、と頭を下げた。

「伊達に管理官まで出世した御方ではないですな」

「そちらも手が痺れるほどの怪力で、もう少し粘られたら危なかったです」

「またまた!上手いことを仰る」

 控え室に戻りながら、笑った大男にバンバンと背中を叩かれたが、結構本気で痛い。

「また機会があれば宜しく頼みますぞシャインベック殿」

 陽気に隣国の控え室へ消えていく男と入れ違いに、ウチ側の控え室からヒューイが出てきた。

「おう。お疲れ。勝ったのか?」

「何とかな」

「おめでとさん。
 ちぇっ、やっぱり2回戦はお前かよ。
 じゃあ俺は1回戦を華麗に勝って、ミランダとシャーロッテに『パパ素敵!』って言って貰わねえとな」

「まあ頑張れ。だが甘くみると怪我するぞ。俺の相手もかなり強かった」

「りょーかい」

 控え室に戻りいったん汗を流した後、急いでヒューイの試合を観に行く。

 まだ序盤だったようだが、見ると相手の力量はちょっとヒューイにとっては格下だった。
 普段は余裕のある時しかやらないゆったりした剣さばきで軽くいなしていた。

 俺はひと安心して、二階のテラスを眺めた。先ほどリーシャがあそこから俺の試合を観ていてくれたのだ。

 リーシャが観てくれていると思うだけで、自分でも思った以上の力が出せた気がする。やはり夫としてはカッコいい所も見て欲しいという気持ちがあるので、勝ててホッとして見上げると、何故かテラスの縁に頭をガンガン打ち付けていた。

 あの女神をも恐れをなす美貌になんて無茶なことを、と一瞬ケガしてないかと血の気が引いたが、さっきのは気を取り直す為の儀式か何かだったようで、今はけろりとした顔でヒューイの勝利に拍手をしている。

 そして、何故か嬉しそうに高笑いをしているように見える。謎だ。

 しかしリーシャの笑顔はいつもいつも可愛い。

 ウチの奥さんは時々行動が読めない所があるが、そこもまたたまらなくいいのである。


 子供たちの方を見ると、お義父さん達と一緒にぱちぱちと拍手をしており、周りの人々からうっとりとした目で溜め息をつかれていた。

 自分の子とは思えない位、贔屓目を抜いても可愛すぎるから仕方ないのだが、アナやクロエを見る男達の眼差しは、確実に未来の息子の嫁、自分の妻候補のような邪なモノを感じる。

 ロリコンなど死ねばいいのに。

 思わずお義父さんの口癖が移ってしまい苦笑した。




 二回戦はヒューイと戦い、奴も本気で来たので俺も手抜きは出来なかった。

 何とか勝ったから良いようなものの、奴も鍛練を怠ってない事が分かり、ますます自分も油断できないなと気持ちを新たにする。

 二階のテラスを見上げると、リーシャが拍手をしながら投げキッスをこっそり送ってくれたので、笑って俺も投げキッスを返したら、遠くでも分かる位に赤くなっていた。
 見られているとは思ってなかったらしい。

 不細工な俺に投げキッスを送ったり返されて照れるのはウチの奥さん位である。

 大体閨であんなことやこんなことまでしているのに何故未だに照れるのか不思議だが、神様はどうしてこんな奇跡のような存在を俺のところに使わして下さったのか。

 ああもう本当に可愛すぎてどうしてくれよう。




 三回戦、準決勝である。
 これで勝てばBグループの勝者と決勝戦だ。

 相手は隣国の騎士で俺よりもうんと若い。多分20歳を越えた辺りだろう。伸び盛りといったところか。

 幾ら鍛えているとはいえ、俺は39のオッサンなので、若さ故の無尽蔵な体力ととことん付き合うほどの無茶は出来ない。
 まだ決勝戦だってあるのだ。

 幸いな事に、あちら側がつまらない判断ミスをして俺に連撃を許してしまった為、お陰で勝利をもぎ取れた。

 リーシャを見ると、嬉しそうに拍手をして手を小さく振るに留めていた。

 投げキッスがバレたのが恥ずかしかったのだろう。気づかない振りをしていれば良かったと反省した。

 でもあんなに綺麗で可愛い奥さんに投げキッスされて無視できるか。否(いな)。



 さて決勝戦は、と相手を確認すると、やはりというかギュンター王子である。

 大きな口を叩くだけの事はあったらしい。




 決勝戦で顔を合わせたギュンターは、

「リーシャ夫人、弟が言うだけの事はあったね。余りの美しさに驚いたよ。女神の評判もだてじゃないね。いやほんと勿体ないなあ人妻だとは」

 と話しかけてきた。

「ありがとうございます」

(大きなお世話だよ)

 内心の不快を押し隠して一礼する。

「よろしくね。君に勝ったら彼女から花束を受け取って頬にキスして貰えるんだろう?頑張ろうっと」

 ニヤリと笑うと剣を構えた。


 隙がない。強い。


 俺も構えて剣を受けながら、嫌な奴だが全力で行かないと負ける、と必死に攻撃をかわす。


 永遠にも思われた時間は、ギュンターの育ちの良さと、強いが故の傲慢さが勝敗を分けた。

 俺の勝ちを諦めない雑草精神がヤツの隙を見逃す筈もなく、踏み込んで剣を払う。

「くっ!」

 とギュンターの声がして、持っていた剣を落とし、俺の勝利が確定した。


 しかし、流石に疲れた。
 ギュンターは荒い息をつく俺に一礼すると、

「残念だったよ。次はウチの国で親善試合をやろうね。リーシャ夫人も一緒に招待するから是非。それじゃーね」

 と笑顔で控え室へ戻って行った。
 


※   ※   ※



 リーシャから花束を貰い、頬にキスをしながら、小声で、

「約束守ってくれてありがと。愛してる」

 と囁いてくれたので、俺の疲れも吹っ飛んだ。

「………おう」

 相変わらずウチの奥さんはクソ可愛い。





 閉会式後、子供たちやお義父さんたちとも合流し、屋敷に帰ろうと馬車へ乗り込んだところで、お義父さん達が増えた分だけちょっと馬車にゆとりがなくなった。

「じゃあ皆は一足先に帰ってて貰えるかしら?
 私とルーシーは商店で今夜のご馳走の買い物をしたいから、1時間後にいつもの馬車溜まりのところへ迎えを寄越してくれればいいわ」

「もう夕方になるが女性だけで大丈夫か?」

 いくらルーシーがかなり出来るメイドとは言え、俺は少々心配になる。

「やあね。買い物だけだし、暗くなる前には迎えの馬車で帰るのよ。今日の料理は張り切って作りたい気分なのよ。だってダークの優勝祝いだもの!」

 リーシャの極上の笑みに俺は、

「………分かった。それじゃ1時間後にアレックと一緒に迎えに来るから。後でな」

「分かったわ。じゃまたね」

 手を振って中央通りの商店へ向かうリーシャとルーシーを見送って、俺たちは屋敷に戻った。


 一日人の沢山いる所でわーわー騒いで疲れたのか、爆睡している子供たちをサリーとミルバに任せ、お義父さんとお義母さんに留守を頼むと、アレックと俺は再び馬車でリーシャ達を迎えに戻るのだった。

 



しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 異世界転生をするものの、物語の様に分かりやすい活躍もなく、のんびりとスローライフを楽しんでいた主人公・マレーゼ。しかしある日、転移魔法を失敗してしまい、見知らぬ土地へと飛ばされてしまう。  全く知らない土地に慌てる彼女だったが、そこはかつて転生後に生きていた時代から1000年も後の世界であり、さらには自身が生きていた頃の文明は既に滅んでいるということを知る。  そして、実は転移魔法だけではなく、1000年後の世界で『嫁』として召喚された事実が判明し、召喚した相手たちと婚姻関係を結ぶこととなる。  人懐っこく明るい蛇獣人に、かつての文明に入れ込む兎獣人、なかなか心を開いてくれない狐獣人、そして本物の狼のような狼獣人。この時代では『モテない』と言われているらしい四人組は、マレーゼからしたらとてつもない美形たちだった。  1000年前に戻れないことを諦めつつも、1000年後のこの時代で新たに生きることを決めるマレーゼ。  異世界転生&転移に巻き込まれたマレーゼが、1000年後の世界でスローライフを送ります! 【この作品は逆ハーレムものとなっております。最終的に一人に絞られるのではなく、四人同時に結ばれますのでご注意ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】

処理中です...