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第1章
第136話《ミスターコン最終審査準備の一幕》
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相田君は、自分の選んだドレスを褒められたと思ったのか、満足そうに笑みを浮かべ、巧斗さんに向かって親指を立てた。
「へへっ!俺のセンスが分かるだなんて、流石っすね!でも、こんなに可愛い衣装でも妥協しないところがマジでかっこいいっす!よーし、もっと頑張って探すぞ!」
「ふふ、ありがとう。では、俺も負けずに衣装探し頑張らないといけませんね?丁度今が11時なので、11時10分までにそれぞれで良いと思った衣装を選んで、そこの試着スペースにて集合しましょう。」
「よっしゃぁ!誰が一番センスが良いか勝負っって事っすね?!」
「あ、それいいね!俺も賛成!」
巧斗さんの提案に相田君はにかっとした笑顔で返事をして、俺もその勢いに乗せられて、張り切って衣装ラックを丁寧に見て回ることにした。
◇◇◇
___そして、それから衣装保管室を回ること9分、なんと俺は未だに良さげな衣装を探し出せずにいた。
(どうしよう。ここって、衣装の種類は多いけど、その分ザ・文化祭みたいなネタ枠デザインも多くて意外と見て回るの時間がかかるな…。)
約半分くらいのラックを見てまわったのだが、結局フリルとリボンまみれの女児向けのドレスみたいな衣装や、兄や巧斗さんの車のようなビカビカ発光する蛍光ピンクのレザー状のドレス等、明らかにネタ枠な衣装しか見つからず、待ち合わせの時間に迫っていた。
(うーん…。これ以上衣装探しに時間をかけるのも効率が悪いし、いっそ巧斗さんが選んだドレスにかけるしかないか…。)
私服から考えても常時全身ヒョウ柄の相田君は置いといて、常にカッコいい服しか着ない巧斗さんのセンスは信用できる。
あと数十秒で集合時間になるので、ここはもう諦めて、手ぶらで二人と合流しようと思ったところで、奇跡的にも俺は目を引く一着を見つけた。
(!!この衣装なら巧斗さんにぴったりかも…!)
俺が咄嗟に握ったそれは、黒を基調としたシスター服とゴシックドレスの中間のようなデザインで、体のラインをほどよく隠し、とても落ち着いた退廃的な雰囲気を持っていた。
顔の上半分が隠れるように、黒いレースのベールも付属品として付いていて、まさしく大人のレディって感じで全体のバランスがとてもいい。
(最終審査の評価基準が《愛らしさ》のみだから、それからはちょっと逸れるけど、審査員(観客)達がルールにあまりこだわってないのは昨日の審査で分かったし、無理に可愛さを追求するより、巧斗さんに似合うものを選んだほうが絶対いいよな?)
俺は天啓を得たように、その衣装を手に取って、既に衣装を選び終わって試着スペース前に立っている巧斗さんと相田君の所に急いで向かう。
「巧斗さんっ!良い感じの衣装見つけたから、ちょっと着てみて!」
早速試しに巧斗さんにこのドレスを試着してもらうと、思った通り絶世の美人が出来上がって、あまりの完成度に通りすがりの人もちらちらとこちらを見てくる。
《す、すげぇ、あそこの試着スペース、めっちゃ美人がいる…!》
《ああ…あのスキンヘッドのデカい兄ちゃん場所変わってくんねぇかな…》
《ひええぇ、目がつぶれる…。》
《可憐なのと華麗なのと…どっちもええなぁ。選べねぇ…。》
(おお!周りの反応も良い感じだ!)
「おおっ、こ、これは…!可愛さはこの際置いていて、圧倒的に美しいっす!俺的には、これが一番ベストだと思うっす!!」
「ええ、この衣装なら動きやすいですし、デザインも洗練されて美しく、顔が隠れるのも素晴らしい。すずめ、よく見つけてくれましたね。これにしましょう。」
職業柄、慣れた動きで、その場で華麗にターンをしながら満足げにしている巧斗さんに、通りすがりの人達からパチパチと拍手と歓声が上がり、俺も思わず嬉しくなる。
「えへへ。喜んでもらえてよかった!あ、でもまだ巧斗さんと相田君の選んだ衣装を見てないよね?そっちの方が良い可能性もあるし、一回試着してみようよ。」
相田君はともかく巧斗さんが選んだものだったら、俺が選んだものよりも良い可能性があるので、一回全部試着するように提案すると、何故か巧斗さんは自分が選んだ衣装をサッと後ろに隠した。
「?巧斗さん?」
「いえいえ!俺自身がすずめの選んだドレスが気に入ったのですから、是非これでいきましょう。」
「お、俺も義兄さんが選んだやつより巧兄に似合う衣装は無いと思うっすよ!!!」
「え、そ、そうかな?」
俺が選んだドレスが思いのほか好評で、思わず嬉しくなりながらも、巧斗さんと相田君がそれぞれ自分が選んだドレスを返却しに行くのを見ていると、ふと二人が手にしている衣装が目に入った。
巧斗さんが持っていたのは、さっき見かけてすぐに「これはないな」と判断した、例の車の如くピカピカと発光する蛍光ピンクのレザー状のドレスで、一瞬目を疑った。
(え?巧斗さん…もしかしてあのドレスを着るつもりだったのか?!)
そして、その隣を見ると、相田君も蛍光では無いものの、これまたさっき俺が即ボツにした、ピンクのリボンとフリルがふんだんにあしらわれた女児が着るようなドレススカートを手にしていた。
(…あ、危ない!…危うくあの二つのドレスのどちらかを巧斗さんが着る事になる所だった…。)
俺は二人のドレスを見た瞬間、時間内になんとか自分が良さげなドレスを選べたことに、心底胸を撫でおろしたのだった。
「へへっ!俺のセンスが分かるだなんて、流石っすね!でも、こんなに可愛い衣装でも妥協しないところがマジでかっこいいっす!よーし、もっと頑張って探すぞ!」
「ふふ、ありがとう。では、俺も負けずに衣装探し頑張らないといけませんね?丁度今が11時なので、11時10分までにそれぞれで良いと思った衣装を選んで、そこの試着スペースにて集合しましょう。」
「よっしゃぁ!誰が一番センスが良いか勝負っって事っすね?!」
「あ、それいいね!俺も賛成!」
巧斗さんの提案に相田君はにかっとした笑顔で返事をして、俺もその勢いに乗せられて、張り切って衣装ラックを丁寧に見て回ることにした。
◇◇◇
___そして、それから衣装保管室を回ること9分、なんと俺は未だに良さげな衣装を探し出せずにいた。
(どうしよう。ここって、衣装の種類は多いけど、その分ザ・文化祭みたいなネタ枠デザインも多くて意外と見て回るの時間がかかるな…。)
約半分くらいのラックを見てまわったのだが、結局フリルとリボンまみれの女児向けのドレスみたいな衣装や、兄や巧斗さんの車のようなビカビカ発光する蛍光ピンクのレザー状のドレス等、明らかにネタ枠な衣装しか見つからず、待ち合わせの時間に迫っていた。
(うーん…。これ以上衣装探しに時間をかけるのも効率が悪いし、いっそ巧斗さんが選んだドレスにかけるしかないか…。)
私服から考えても常時全身ヒョウ柄の相田君は置いといて、常にカッコいい服しか着ない巧斗さんのセンスは信用できる。
あと数十秒で集合時間になるので、ここはもう諦めて、手ぶらで二人と合流しようと思ったところで、奇跡的にも俺は目を引く一着を見つけた。
(!!この衣装なら巧斗さんにぴったりかも…!)
俺が咄嗟に握ったそれは、黒を基調としたシスター服とゴシックドレスの中間のようなデザインで、体のラインをほどよく隠し、とても落ち着いた退廃的な雰囲気を持っていた。
顔の上半分が隠れるように、黒いレースのベールも付属品として付いていて、まさしく大人のレディって感じで全体のバランスがとてもいい。
(最終審査の評価基準が《愛らしさ》のみだから、それからはちょっと逸れるけど、審査員(観客)達がルールにあまりこだわってないのは昨日の審査で分かったし、無理に可愛さを追求するより、巧斗さんに似合うものを選んだほうが絶対いいよな?)
俺は天啓を得たように、その衣装を手に取って、既に衣装を選び終わって試着スペース前に立っている巧斗さんと相田君の所に急いで向かう。
「巧斗さんっ!良い感じの衣装見つけたから、ちょっと着てみて!」
早速試しに巧斗さんにこのドレスを試着してもらうと、思った通り絶世の美人が出来上がって、あまりの完成度に通りすがりの人もちらちらとこちらを見てくる。
《す、すげぇ、あそこの試着スペース、めっちゃ美人がいる…!》
《ああ…あのスキンヘッドのデカい兄ちゃん場所変わってくんねぇかな…》
《ひええぇ、目がつぶれる…。》
《可憐なのと華麗なのと…どっちもええなぁ。選べねぇ…。》
(おお!周りの反応も良い感じだ!)
「おおっ、こ、これは…!可愛さはこの際置いていて、圧倒的に美しいっす!俺的には、これが一番ベストだと思うっす!!」
「ええ、この衣装なら動きやすいですし、デザインも洗練されて美しく、顔が隠れるのも素晴らしい。すずめ、よく見つけてくれましたね。これにしましょう。」
職業柄、慣れた動きで、その場で華麗にターンをしながら満足げにしている巧斗さんに、通りすがりの人達からパチパチと拍手と歓声が上がり、俺も思わず嬉しくなる。
「えへへ。喜んでもらえてよかった!あ、でもまだ巧斗さんと相田君の選んだ衣装を見てないよね?そっちの方が良い可能性もあるし、一回試着してみようよ。」
相田君はともかく巧斗さんが選んだものだったら、俺が選んだものよりも良い可能性があるので、一回全部試着するように提案すると、何故か巧斗さんは自分が選んだ衣装をサッと後ろに隠した。
「?巧斗さん?」
「いえいえ!俺自身がすずめの選んだドレスが気に入ったのですから、是非これでいきましょう。」
「お、俺も義兄さんが選んだやつより巧兄に似合う衣装は無いと思うっすよ!!!」
「え、そ、そうかな?」
俺が選んだドレスが思いのほか好評で、思わず嬉しくなりながらも、巧斗さんと相田君がそれぞれ自分が選んだドレスを返却しに行くのを見ていると、ふと二人が手にしている衣装が目に入った。
巧斗さんが持っていたのは、さっき見かけてすぐに「これはないな」と判断した、例の車の如くピカピカと発光する蛍光ピンクのレザー状のドレスで、一瞬目を疑った。
(え?巧斗さん…もしかしてあのドレスを着るつもりだったのか?!)
そして、その隣を見ると、相田君も蛍光では無いものの、これまたさっき俺が即ボツにした、ピンクのリボンとフリルがふんだんにあしらわれた女児が着るようなドレススカートを手にしていた。
(…あ、危ない!…危うくあの二つのドレスのどちらかを巧斗さんが着る事になる所だった…。)
俺は二人のドレスを見た瞬間、時間内になんとか自分が良さげなドレスを選べたことに、心底胸を撫でおろしたのだった。
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