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第1章
第137話《ダンスの打ち合わせ&兄を伝言係にする総一郎》
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巧斗さんは手に取った衣装を返し終えると、コンテストまでまだ時間があるからという事で一旦試着していたドレスを脱ぐ。
そしてその後、俺たちは先程巧斗さんと二人でたこ焼きを食べた東屋の近くの人通りの少ない広いスペースを使って、ダンスの打ち合わせを開始した。
まず、相田君が自分で振り付けをしたダンスをスマホで流す曲と一緒にお手本として披露し、巧斗さんがそれを模倣して踊るという流れだ。
__流石元アイドルというべきか、巧斗さんは一発で振り付けを覚え、最初から華麗に踊ってみせた。
相田君は相田君で、これまでこの日のために準備してきたことが分かる熟練度で、振り付けも女性役は美しく、男性役は雄々しく迫力があり、決してネタに走らず真剣に勝負しようという意志が感じられる。
「相田君も巧斗さんもすごい…!ダンスのクオリティも高いし、振り付け考えるのにも相当力いれたんじゃない?」
思わぬダンスの完成度に心からの拍手を贈りながら、声を掛けると相田君が照れくさそうに頭をかく。
「いやぁ、へへっ!ありがとうございます!俺も本気で勝ちに行くつもりだったんで、実は結構前から気合い入れて準備してたんす!
それにしても、巧兄の踊りの方が半端ないっすよ!自分が考えた振り付けでも完璧に仕上げるには一か月以上必要だったのに、まさか一発で覚えちゃうなんて尊敬っす…!!本当に何者っすか!?」
「いやいや、長介君の考えた振り付けが、しっかりとした軸を持っていてわかりやすかったからですよ。君はダンスの振付師にもすごく向いているんじゃないかな?」
「え?!そうっすかね!!?そう言ってもらえると自信つくっす~!色々、本とか動画とか見たりして頑張ったかいがあるってもんすよ!!!」
振り付けを絶賛されて大喜びする相田君を見て、俺も素直にその努力と才能に感心した。
巧斗さんは元アイドルとしてプロの振り付けにも沢山触れてきたはずだが、その彼がここまで言うのだから、相当な努力をしてダンスの基礎を学びながら振り付けを作ったのだろう。
つばめとの仲を俺と兄に認めてもらうために、コンテスト優勝を本気で目指して、審査に向けてここまで仕上げてきた相田君の愛情と熱意は並大抵ではない。
(これは、面食いのつばめが相田君にここまで惚れこむ理由が分かるよなぁ…。ほぼ顔に釣られて総一郎を選んだ結果、散々馬鹿にされた挙句、結局愛されなかった俺とは大違いだ。)
それから二人は男性役女性役に分かれ、曲をまるごと一本通してダンスを踊ったが、まるでテレビで見るよう完璧なコンビネーションだった。
(この二人がタッグを組んで挑むのなら、きっと良い結果が出るに違いない。)
俺だけではなく、相田君と巧斗さんも踊りながら柔らかな笑みを浮かべつつ、お互いに勝利への確かな自信を宿していた。
ピロン♪
ほっと力を抜いて、二人の練習を鑑賞するために東屋の椅子に腰をかけると、ふとスマホからメッセージの通知音が鳴った。
(?誰だ?総一郎とひなは通知オフにしてるから違うだろうし…って、お兄ちゃんからだ!)
《なぁ、すずめ。今鷹崎君が兄ちゃんの所まで来て、「すずめと中々連絡がつかないから12時10分に第一校舎の入り口で待ち合わせするように言っておいてください」って言ってきたんだけど、なんて返したらいい??》
兄からのメッセージを確認した途端、視界がぐらっとした。
例のあいつらからじゃない事にホッとした途端これだ。
多分さっき巧斗さんが総一郎からの着信を迷惑電話に設定したので、総一郎が俺に電話をかけた時に《おかけになった電話は~》的なアナウンスがかかったのかもしれない。
(…あいつめ…。まさか俺との連絡にお兄ちゃんを通してくるとはなんと厄介な…。これじゃ、《行かない!》と断るのも兄に変に不審がられるし、かといって素直に行くのだけは絶対に嫌だし、無視する訳にもいかないし…どうしたものか。)
昨日の夜にひなを煽ったことをそこまでして叱りたいのか、ただ単に巧斗さんから自分の物を取り戻したいだけなのか……。
一体何があいつをここまでしつこくさせる原動力なのかは分からないが、ここは最近流行りの便利な日本語を使ってやり過ごすしかないな。
《お兄ちゃん、伝言ありがとう!総一郎君には「行けたら行くかも」って言っておいて。》
__行けたら行く。
これは、一見待ち合わせ場所に行くことに肯定的だと見せかけて、別に行かなくても一切責められる謂れが無い魔法の言葉なのだ。
(これでよしっと。…12時前後には第一校舎付近に近寄るのは避けておこう。一瞬焦ったけど、こうすることで逆に総一郎に出くわさずに済んでむしろラッキーかもしれないな。)
それに、これで少しでも総一郎のコンテストへの準備の時間が潰せれば儲けものだ。
そしてその後、俺たちは先程巧斗さんと二人でたこ焼きを食べた東屋の近くの人通りの少ない広いスペースを使って、ダンスの打ち合わせを開始した。
まず、相田君が自分で振り付けをしたダンスをスマホで流す曲と一緒にお手本として披露し、巧斗さんがそれを模倣して踊るという流れだ。
__流石元アイドルというべきか、巧斗さんは一発で振り付けを覚え、最初から華麗に踊ってみせた。
相田君は相田君で、これまでこの日のために準備してきたことが分かる熟練度で、振り付けも女性役は美しく、男性役は雄々しく迫力があり、決してネタに走らず真剣に勝負しようという意志が感じられる。
「相田君も巧斗さんもすごい…!ダンスのクオリティも高いし、振り付け考えるのにも相当力いれたんじゃない?」
思わぬダンスの完成度に心からの拍手を贈りながら、声を掛けると相田君が照れくさそうに頭をかく。
「いやぁ、へへっ!ありがとうございます!俺も本気で勝ちに行くつもりだったんで、実は結構前から気合い入れて準備してたんす!
それにしても、巧兄の踊りの方が半端ないっすよ!自分が考えた振り付けでも完璧に仕上げるには一か月以上必要だったのに、まさか一発で覚えちゃうなんて尊敬っす…!!本当に何者っすか!?」
「いやいや、長介君の考えた振り付けが、しっかりとした軸を持っていてわかりやすかったからですよ。君はダンスの振付師にもすごく向いているんじゃないかな?」
「え?!そうっすかね!!?そう言ってもらえると自信つくっす~!色々、本とか動画とか見たりして頑張ったかいがあるってもんすよ!!!」
振り付けを絶賛されて大喜びする相田君を見て、俺も素直にその努力と才能に感心した。
巧斗さんは元アイドルとしてプロの振り付けにも沢山触れてきたはずだが、その彼がここまで言うのだから、相当な努力をしてダンスの基礎を学びながら振り付けを作ったのだろう。
つばめとの仲を俺と兄に認めてもらうために、コンテスト優勝を本気で目指して、審査に向けてここまで仕上げてきた相田君の愛情と熱意は並大抵ではない。
(これは、面食いのつばめが相田君にここまで惚れこむ理由が分かるよなぁ…。ほぼ顔に釣られて総一郎を選んだ結果、散々馬鹿にされた挙句、結局愛されなかった俺とは大違いだ。)
それから二人は男性役女性役に分かれ、曲をまるごと一本通してダンスを踊ったが、まるでテレビで見るよう完璧なコンビネーションだった。
(この二人がタッグを組んで挑むのなら、きっと良い結果が出るに違いない。)
俺だけではなく、相田君と巧斗さんも踊りながら柔らかな笑みを浮かべつつ、お互いに勝利への確かな自信を宿していた。
ピロン♪
ほっと力を抜いて、二人の練習を鑑賞するために東屋の椅子に腰をかけると、ふとスマホからメッセージの通知音が鳴った。
(?誰だ?総一郎とひなは通知オフにしてるから違うだろうし…って、お兄ちゃんからだ!)
《なぁ、すずめ。今鷹崎君が兄ちゃんの所まで来て、「すずめと中々連絡がつかないから12時10分に第一校舎の入り口で待ち合わせするように言っておいてください」って言ってきたんだけど、なんて返したらいい??》
兄からのメッセージを確認した途端、視界がぐらっとした。
例のあいつらからじゃない事にホッとした途端これだ。
多分さっき巧斗さんが総一郎からの着信を迷惑電話に設定したので、総一郎が俺に電話をかけた時に《おかけになった電話は~》的なアナウンスがかかったのかもしれない。
(…あいつめ…。まさか俺との連絡にお兄ちゃんを通してくるとはなんと厄介な…。これじゃ、《行かない!》と断るのも兄に変に不審がられるし、かといって素直に行くのだけは絶対に嫌だし、無視する訳にもいかないし…どうしたものか。)
昨日の夜にひなを煽ったことをそこまでして叱りたいのか、ただ単に巧斗さんから自分の物を取り戻したいだけなのか……。
一体何があいつをここまでしつこくさせる原動力なのかは分からないが、ここは最近流行りの便利な日本語を使ってやり過ごすしかないな。
《お兄ちゃん、伝言ありがとう!総一郎君には「行けたら行くかも」って言っておいて。》
__行けたら行く。
これは、一見待ち合わせ場所に行くことに肯定的だと見せかけて、別に行かなくても一切責められる謂れが無い魔法の言葉なのだ。
(これでよしっと。…12時前後には第一校舎付近に近寄るのは避けておこう。一瞬焦ったけど、こうすることで逆に総一郎に出くわさずに済んでむしろラッキーかもしれないな。)
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