浮気αと絶許Ω~裏切りに激怒したオメガの復讐~

飴雨あめ

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第1章

第101話《マンションに到着する二人》

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数十秒ほど背中をさすっていると、彼はもう一度咳払いをして、恥ずかしそうに立ち上がり、車に一旦寄りかかった。

「巧斗さん、もう大丈夫なの?」 
「え、ええ。…すずめには格好の悪いところばかり見せてしまいましたね。」

少し照れくさそうに笑っているのが黒マスクにサングラス越しでもわかる。

「では行きましょうか。俺の心臓が持たないので、部屋に着くまでは話題を変えましょう…。」
「うん…?分かった。」

推しの話でそこまでなるか…?とも思ったけど、本当に胸を抑えていたので、慌てて別の話題に話を変えて、雑談をしながらマンションの入り口まで向かったのだった。


◇◇◇


「すごい…。俺、こんなお洒落なエントランス見た事ないよ…。」


駐車場を通ってそこから直通のエントランスに到着すると、真っ先に感嘆の声をあげる。

今、俺の目の前には、滝が流れる緑豊かな中庭が見える高さ数メートルのガラス張りの壁と、その手前に広がる黒、ブラウン、金を基調としたモダンなラウンジが広がっていた。

もう既にエントランスホールからして、俺と総一郎が住んでいたマンションとは規模が10倍程度違う。



(これは…いっそパソコンの壁紙にしたいくらいの絶景だ。)


あまりにキョロキョロしすぎると、一緒にいる巧斗さんに恥をかかせてしまうかもしれないと思いつつも、今までこういった世界とは無縁だったので、見られるうちに見ておきたいという好奇心が抑えられない。

ラウンジ内にはカウンターがあり、数人のコンシェルジュがこちらに向かって礼をしてくるので、俺も咄嗟に頭を下げる。


「お帰りなさいませ、鷲ノ宮様!こちらのお綺麗な方はお連れ様でいらっしゃいますか?」 
「はい。その件について少しオーナーに話を通しておきたいのですが…同居人が増えるということで、許可をいただきたく。…ええ、…実はですね…」


声をかけられた巧斗さんは軽くお辞儀を返した後、コンシェルジュに小声で何かを伝えはじめた。
すると、コンシェルジュは満面の笑みで素早く返答する。


「なんと…!かしこまりました…!おめでとうございます!!では、オーナーをお呼びしますので、少々お待ちくださいませ。」



(ん?おめでとうございます…?よく分からないけど…でもそっか、たしか同居人が増えるときって許可がいるんだっけ?)

総一郎と同棲していた経験から、賃貸契約では同居人が増える際に大家さんに申請が必要だというのは薄々知っていたが、たとえ数日間だけの宿泊であっても、きちんと許可を取る巧斗さんは流石だ。


俺が感心している間に、コンシェルジュがオーナーを呼びに行き、それから1分も経たないうちにマンションのオーナーと思われる人物が大急ぎですっ飛んできた。




「鷲ノ宮様…!!この度はおめでとうございます…!あまりの喜びに、私めも自分のことのように喜ばしく思っております!同居の件については、もちろん喜んで許可させていただきますとも!

__ささっ、霧下様!こちらが当マンションの全施設に自由に出入りできるキーカードです。これ一つで、プール、スカイラウンジ、展望室、図書館、三ツ星レストラン、スタディルーム、露天風呂、サウナ、ジム、全て無料でご利用いただけますので、どうぞご活用くださいませ!」


オーナーは満面の笑みで巧斗さんに挨拶した後、怒涛の勢いで俺に輝くカードキーを渡しながら、設備の説明を次々と話してきた。

(え!?俺がこんなの貰っちゃってもいいの?!充実した施設に行けるのはかなり魅力的だけど…)

想定外にスムーズに同居の許可が下りたことにも驚いたが、あまりの歓迎ぶりにも驚かされる。


「あの…すみませんが、たった数日だけの滞在でこれを受け取るのは申し訳n…」
「すずめ、もし良ければ次の休みの日にでも色々とここの施設を回りませんか?このマンションの設備はどれも最高ですよ。」

「そうですとも!特に《露天風呂》や《プール》なんかは夜景も綺麗ですし、私めと致しましても一番おすすめですよぉ!」


家賃も払えないのにこれは受け取れないと、一旦はカードキーを返そうとしたのだが、
巧斗さんとオーナーに話をさえぎられてしまった。


「!夜景…。それは一度見てみたいな…」


展望室やスカイラウンジ等もあるのになぜ《露天風呂》と《プール》がお勧めなのかは分からないが、高い所と夜景は大好きなのでつい気になってしまう…。


「ふふ、決まりですね。次の休みがとても楽しみです。…では今日はもう遅いですし、休息も必要ですから早い所帰りましょう。オーナー、俺達はここで失礼しますね。…以前ご相談いただいた件については前向きに検討させていただきます。」

「!!!ありがとうございます…!是非お待ちしておりますとも~!!!」


巧斗さんが去り際に言った意味深な言葉と、オーナーの満面の笑みを背に、俺はもらったカードキーに申し訳ない気持ちを抱きつつも、彼と共にラウンジを後にして、静かなエレベーターに乗り込んだ。
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