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第1章
第100話《推しについてのトークだと勘違いするすずめ》
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声には出さないながらも、喜びを隠せない様子の巧斗さんを見て俺もつい微笑ましく思ってしまう。
(!やっぱり、推しが褒められたから嬉しいんだ。巧斗さんってなんだか雲の上のα!って感じだと思ってたけど、意外と芸能人とかアイドルに興味あったんだな。…なんだか親近感湧くかも。)
__これはますます、つばめに合わせたくなってきたな。
って…巧斗さんにはしばらく家に泊まらせてもらうだけなのに、いくらなんでもちょっと話が発展しすぎだよな?
なんだかこの人と話していると、ずっと連れ添ってきた恋人のような気分になるから不思議だ。
「ふふっ、でも巧斗さんってなんとなく妹と話が合いそう。実はうちの妹、鷲田タクトさんの大ファンなんだ。俺はそもそも妹に付き合ってOrion《α》の冠番組を見ていたようなものだから。」
思わず吹き出しながら、ふと巧斗さんの方を見やると、彼は何故か眉を下げながら急にスッ…と落ち着きを取り戻した。
「…妹さんに…?そうですよね…。妹さんとも話が合いそうで良かったです。いつかすずめのご家族と話す機会があれば嬉しいですね?」
(?巧斗さん、どうしたんだろう?急にまた穏やかな紳士モードに戻っちゃって…。)
面白いから、もう少し推しの話でテンションが上がっている姿を見ていたかったのに。
(まぁでも気持ちは分かるな。俺もちゅんちゅんマンの事を誰かに話す時だけは、つい我を忘れてテンションが上がるもん。)
◇◇◇
彼が冷静さを取り戻した事で、一旦脇に停まっていた車の走行が再開する…こともなく、そのままゆっくりした速度で最上階が雲の上まで突き抜けているタワーマンションの地下の立体駐車場に入っていった。
(ってちょっと待って!?この人さりげなく、とんでもない所に車を停めようとしてるんだけど!?…まさか巧斗さんって、さっきのマンションの住人なの!!?)
一瞬入る場所を間違えたのかなとも疑ったけど、駐車場入り口にあるセキュリティゲートを問題なく通過したという事は、ここの住人なのは間違いないようだ。
いや、あの0の数が桁違いの領収書を見た時点で、なんとなく高級物件に住んでそうだなとは思っていたけども…!
ここって多分この高層ビル街で一番家賃高いよな…?なんかもう駐車場からして近未来過ぎて様子がおかしいし…。
ここだけまるでゲーム等で見るサイバーパンクのような世界観だ。
「さて、すずめ。到着しましたよ。」
「あ、う、うん…。」
彼のあまりの富豪っぷりに動揺して、つい高額チョーカーを渡された時のような借りてきた猫状態に戻ってしまう。
(うう…さっきまでは巧斗さんの方が推しの話でテンションが上がったりして落ち着きが無かったように見えたのに、また立場が逆転してしまった…。)
すっかり紳士モードに戻った巧斗さんが、またいつもの如くエスコートをしようと車のドアを開けて俺に手を差し出してきたので、しおしおとその手に応える。
そして、車から降りて光り輝くド派手ピンク車を明るい所で改めて見た事で、俺はふと兄の車を思い出した。
「あ!そういえば、この車ってうちの兄の車とお揃いなんだよね。」
「ええ、そうでしたね!…少し癖が強すぎて中々この車を乗ってくれている人を見かけなかったので、とても嬉しいです。」
「ふふ、実はね、あの車はあの鷲田タクトさんのCMを見て買ったんだって。何でも俺がテレビに映る彼を見て「カッコいい…!」って呟いたのを、車のことだと勘違いしたんだって。嬉しいけど、ちょっと笑える話だよね?」
「っ!!」
軽い笑い話として兄のエピソードを巧斗さんに話したつもりが、彼は何故か突然息を詰まらせ、激しく咳払いを始めてしまった。
「ゴフッ!!ゴホッゴホッ!ゴホッ!」
「!?た、巧斗さん?大丈夫?!」
「コホン…。失礼…あまりに嬉しすぎて…俺とした事が動揺してしまいました…。」
やっとむせが落ち着いたかと思うと、王子様然とした態度が嘘のように口元を抑えてしゃがみこんでしまったので、背中をぽんぽんと叩く。
(ど、どうしたんだろ?ってこの人、まさかまた推しが褒められて喜んでる??)
…巧斗さんって、案外感情が全部動きに出るタイプで面白い人なのかもしれない。
(!やっぱり、推しが褒められたから嬉しいんだ。巧斗さんってなんだか雲の上のα!って感じだと思ってたけど、意外と芸能人とかアイドルに興味あったんだな。…なんだか親近感湧くかも。)
__これはますます、つばめに合わせたくなってきたな。
って…巧斗さんにはしばらく家に泊まらせてもらうだけなのに、いくらなんでもちょっと話が発展しすぎだよな?
なんだかこの人と話していると、ずっと連れ添ってきた恋人のような気分になるから不思議だ。
「ふふっ、でも巧斗さんってなんとなく妹と話が合いそう。実はうちの妹、鷲田タクトさんの大ファンなんだ。俺はそもそも妹に付き合ってOrion《α》の冠番組を見ていたようなものだから。」
思わず吹き出しながら、ふと巧斗さんの方を見やると、彼は何故か眉を下げながら急にスッ…と落ち着きを取り戻した。
「…妹さんに…?そうですよね…。妹さんとも話が合いそうで良かったです。いつかすずめのご家族と話す機会があれば嬉しいですね?」
(?巧斗さん、どうしたんだろう?急にまた穏やかな紳士モードに戻っちゃって…。)
面白いから、もう少し推しの話でテンションが上がっている姿を見ていたかったのに。
(まぁでも気持ちは分かるな。俺もちゅんちゅんマンの事を誰かに話す時だけは、つい我を忘れてテンションが上がるもん。)
◇◇◇
彼が冷静さを取り戻した事で、一旦脇に停まっていた車の走行が再開する…こともなく、そのままゆっくりした速度で最上階が雲の上まで突き抜けているタワーマンションの地下の立体駐車場に入っていった。
(ってちょっと待って!?この人さりげなく、とんでもない所に車を停めようとしてるんだけど!?…まさか巧斗さんって、さっきのマンションの住人なの!!?)
一瞬入る場所を間違えたのかなとも疑ったけど、駐車場入り口にあるセキュリティゲートを問題なく通過したという事は、ここの住人なのは間違いないようだ。
いや、あの0の数が桁違いの領収書を見た時点で、なんとなく高級物件に住んでそうだなとは思っていたけども…!
ここって多分この高層ビル街で一番家賃高いよな…?なんかもう駐車場からして近未来過ぎて様子がおかしいし…。
ここだけまるでゲーム等で見るサイバーパンクのような世界観だ。
「さて、すずめ。到着しましたよ。」
「あ、う、うん…。」
彼のあまりの富豪っぷりに動揺して、つい高額チョーカーを渡された時のような借りてきた猫状態に戻ってしまう。
(うう…さっきまでは巧斗さんの方が推しの話でテンションが上がったりして落ち着きが無かったように見えたのに、また立場が逆転してしまった…。)
すっかり紳士モードに戻った巧斗さんが、またいつもの如くエスコートをしようと車のドアを開けて俺に手を差し出してきたので、しおしおとその手に応える。
そして、車から降りて光り輝くド派手ピンク車を明るい所で改めて見た事で、俺はふと兄の車を思い出した。
「あ!そういえば、この車ってうちの兄の車とお揃いなんだよね。」
「ええ、そうでしたね!…少し癖が強すぎて中々この車を乗ってくれている人を見かけなかったので、とても嬉しいです。」
「ふふ、実はね、あの車はあの鷲田タクトさんのCMを見て買ったんだって。何でも俺がテレビに映る彼を見て「カッコいい…!」って呟いたのを、車のことだと勘違いしたんだって。嬉しいけど、ちょっと笑える話だよね?」
「っ!!」
軽い笑い話として兄のエピソードを巧斗さんに話したつもりが、彼は何故か突然息を詰まらせ、激しく咳払いを始めてしまった。
「ゴフッ!!ゴホッゴホッ!ゴホッ!」
「!?た、巧斗さん?大丈夫?!」
「コホン…。失礼…あまりに嬉しすぎて…俺とした事が動揺してしまいました…。」
やっとむせが落ち着いたかと思うと、王子様然とした態度が嘘のように口元を抑えてしゃがみこんでしまったので、背中をぽんぽんと叩く。
(ど、どうしたんだろ?ってこの人、まさかまた推しが褒められて喜んでる??)
…巧斗さんって、案外感情が全部動きに出るタイプで面白い人なのかもしれない。
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