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第1章
第71話《第二次審査開始》
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「さて、今からプロポーズ開始と相成りますが、伊集院さんは誰をご指名されるのでしょうか?また、相手役がエキストラか否かについてもここで宣言してください。」
「はい!え、っと僕は兼ねてよりお付き合いさせていただいている医学部3年の木津月人さんを指名したいです…!なので、エキストラじゃなくて本当の告白です。彼には、そろそろ次のステップに進みたくて__番、とか…。」
第二次審査が正式に始まり、司会者が審査の前に出場者に、加点対象になるかどうかの質問を行っている。
「おお、それはそれは…。ではこれが成功すれば、+10000ptとなりますので是非頑張ってください!では木津月人さん、もし会場にいらっしゃいましたらこちらまでお越しいただければと思います!」
出場者の返答を受けて、司会が観客席に向かって相手の人がいるかどうか呼びかけると、客席から一人の男前な男性が悠然と立ち上がり、ステージに登壇した。
呼ばれたα男性が伊集院さんから熱烈なプロポーズを受け、番契約について了承すると、熱烈なハグとキスをかわし、観客の一部から黄色い声が沸き起こった。
『きゃぁぁ!素敵!』
『僕もあんな風に番に求められたい~!』
『来年私もオメコン出てみようかなぁ…!』
ただ、やはりΩの人達が限定的に盛り上がっているだけで、大多数の観客が盛大な拍手は送りながらも、歓声の方は第一審査と比べると少なめだった。
(なるほどな。こういう感じで審査が進んでいくのか。)
しかし、今の出場者は難なくプロポーズを成功させたが、加点対象になるにも意外とハードルが高いな。
まず彼氏もしくは相手が観客席にいて、なおかつステージまで上がってもらって、更に告白も受け入れてもらって公衆の面前でキス&ハグをする…。
もしかしたらこの伊集院さんっていう人とひなぐらいしか成功しないのではないかと不安に思ってしまう。
しかし、そんな俺の杞憂を他所に、その後エントリーナンバー3番4番5番と、順調に相手役エキストラ無しのプロポーズが成功して、会場は盛大な拍手を淡々と送り続けたのだった。
『なぁ、これ面白いか?』
『うーん…。内容も皆似たり寄ったりだし、なにしろ変化がないからなんとも…。』
『ガチ告白成功に10000ptボーナスって実質意味ないだろ。皆当たり前のように成功してるじゃねーか。もう後半だぜ?』
『さっきからイチャイチャちゅっちゅばかり見せられてて砂糖吐きそう…。』
『そもそも美人Ωからの愛を断るαを探す方が難しいよね。』
『これ、ほんとΩとαだけが楽しいイベントって感じ。』
『出場者達が悪くないのは分かってるけど、流石に立て続けにα様連れてきていちゃつかれたらモヤモヤするよね…。』
ただ、やはりΩやα以外の人達がイマイチ盛り上がっていない様子で、中にはなんとなくムカつくと言ったように、ちょっとした不満を持ち始めている人もいるようだった。
◇◇◇
引き続きコンテストを眺めながら観客の反応になんとなく耳を傾けていると、突然『すずめちゃーん!』と微かに俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
何事かとあたりを見渡すと、俺の席列の横端にシマちゃんが立っていて、口元に両手を添えながら精いっぱいのひそひそ声で『ちょっと来て~!へるぷ!みー!』と俺を呼んで手招きしていた。
シマちゃんからの呼び出しなので素直に応じて席を立つと、そのまま手を引かれてコンテストの控室に辿りつく。
(まさかコンテスト中に呼び出されるなんて…何の用だろう…?)
「ハァハァ…、いやーすずめちゃんが見つかってよかったぁ~。めっちゃ探したよ~!」
「シマちゃんたら一体どうしたの?そんなに気を切らせて…」
どうやらシマちゃんは他の出場者の審査中ずっと俺を探していたようで、控室に辿りつくなり膝に手をついている。
落ち着いて話を聞こうと、控室にあるパイプ椅子に腰をかけると、シマちゃんも隣の席に大人しく座ってすぅと息を吸って口を開いた。
「それが災難でさぁ、ほんとあの司会者、信じらんないんだよ!僕がコンテスト自薦だった事も、出場者紹介で《〇×大学の白百合》って紹介してって頼んだ事も全部バラされるし最悪!あれ絶対悪意あるよ!極めつけにあのバランス崩壊も悪趣味も良い所なルール変更でしょ?もう一瞬アイツを思いっきり踏んづけてやろうかと思ったよね!!」
司会者に対する不満を怒涛の勢いで愚痴った後、分かり安く頬を膨らませて涙目でふんふんと地団太を踏みはじめたシマちゃんに心から同情してしまう。
「うん、全部聞いてたし見てたよ…。本当に酷かったよねアレ…。」
「やっぱりすずめちゃんもそう思うよね?!もう、今度また司会が変なことしたらこってり絞り切ってやるから!」
あまりに可哀そうで共感しながら相槌を打っていると、シマちゃんが突如俺の手をガッと両手で掴んだ。
「それでね、すずめちゃんにお願いがあるんだけどいいかな~って…。」
「え、勿論いいよ!俺に出来る事があるなら何でも言って!」
「あ、ほんと!?ありがとー!やっぱり持つべきものはすずめちゃんってね♪♬」
この流れでNOと言える友達なんていないだろうと、ほぼノータイムで頷くと、シマちゃんは突然ケロっとした声で感謝の意を示しながら思いっきり俺に抱き着いてすり寄ってくる。
彼に元気が出てよかったと安心しつつも、あまりの切り替えの早さに、
(シマちゃん…?まさか、今の嘘泣きじゃないよね?)
と、変に勘ぐってしまったのだった。
「はい!え、っと僕は兼ねてよりお付き合いさせていただいている医学部3年の木津月人さんを指名したいです…!なので、エキストラじゃなくて本当の告白です。彼には、そろそろ次のステップに進みたくて__番、とか…。」
第二次審査が正式に始まり、司会者が審査の前に出場者に、加点対象になるかどうかの質問を行っている。
「おお、それはそれは…。ではこれが成功すれば、+10000ptとなりますので是非頑張ってください!では木津月人さん、もし会場にいらっしゃいましたらこちらまでお越しいただければと思います!」
出場者の返答を受けて、司会が観客席に向かって相手の人がいるかどうか呼びかけると、客席から一人の男前な男性が悠然と立ち上がり、ステージに登壇した。
呼ばれたα男性が伊集院さんから熱烈なプロポーズを受け、番契約について了承すると、熱烈なハグとキスをかわし、観客の一部から黄色い声が沸き起こった。
『きゃぁぁ!素敵!』
『僕もあんな風に番に求められたい~!』
『来年私もオメコン出てみようかなぁ…!』
ただ、やはりΩの人達が限定的に盛り上がっているだけで、大多数の観客が盛大な拍手は送りながらも、歓声の方は第一審査と比べると少なめだった。
(なるほどな。こういう感じで審査が進んでいくのか。)
しかし、今の出場者は難なくプロポーズを成功させたが、加点対象になるにも意外とハードルが高いな。
まず彼氏もしくは相手が観客席にいて、なおかつステージまで上がってもらって、更に告白も受け入れてもらって公衆の面前でキス&ハグをする…。
もしかしたらこの伊集院さんっていう人とひなぐらいしか成功しないのではないかと不安に思ってしまう。
しかし、そんな俺の杞憂を他所に、その後エントリーナンバー3番4番5番と、順調に相手役エキストラ無しのプロポーズが成功して、会場は盛大な拍手を淡々と送り続けたのだった。
『なぁ、これ面白いか?』
『うーん…。内容も皆似たり寄ったりだし、なにしろ変化がないからなんとも…。』
『ガチ告白成功に10000ptボーナスって実質意味ないだろ。皆当たり前のように成功してるじゃねーか。もう後半だぜ?』
『さっきからイチャイチャちゅっちゅばかり見せられてて砂糖吐きそう…。』
『そもそも美人Ωからの愛を断るαを探す方が難しいよね。』
『これ、ほんとΩとαだけが楽しいイベントって感じ。』
『出場者達が悪くないのは分かってるけど、流石に立て続けにα様連れてきていちゃつかれたらモヤモヤするよね…。』
ただ、やはりΩやα以外の人達がイマイチ盛り上がっていない様子で、中にはなんとなくムカつくと言ったように、ちょっとした不満を持ち始めている人もいるようだった。
◇◇◇
引き続きコンテストを眺めながら観客の反応になんとなく耳を傾けていると、突然『すずめちゃーん!』と微かに俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
何事かとあたりを見渡すと、俺の席列の横端にシマちゃんが立っていて、口元に両手を添えながら精いっぱいのひそひそ声で『ちょっと来て~!へるぷ!みー!』と俺を呼んで手招きしていた。
シマちゃんからの呼び出しなので素直に応じて席を立つと、そのまま手を引かれてコンテストの控室に辿りつく。
(まさかコンテスト中に呼び出されるなんて…何の用だろう…?)
「ハァハァ…、いやーすずめちゃんが見つかってよかったぁ~。めっちゃ探したよ~!」
「シマちゃんたら一体どうしたの?そんなに気を切らせて…」
どうやらシマちゃんは他の出場者の審査中ずっと俺を探していたようで、控室に辿りつくなり膝に手をついている。
落ち着いて話を聞こうと、控室にあるパイプ椅子に腰をかけると、シマちゃんも隣の席に大人しく座ってすぅと息を吸って口を開いた。
「それが災難でさぁ、ほんとあの司会者、信じらんないんだよ!僕がコンテスト自薦だった事も、出場者紹介で《〇×大学の白百合》って紹介してって頼んだ事も全部バラされるし最悪!あれ絶対悪意あるよ!極めつけにあのバランス崩壊も悪趣味も良い所なルール変更でしょ?もう一瞬アイツを思いっきり踏んづけてやろうかと思ったよね!!」
司会者に対する不満を怒涛の勢いで愚痴った後、分かり安く頬を膨らませて涙目でふんふんと地団太を踏みはじめたシマちゃんに心から同情してしまう。
「うん、全部聞いてたし見てたよ…。本当に酷かったよねアレ…。」
「やっぱりすずめちゃんもそう思うよね?!もう、今度また司会が変なことしたらこってり絞り切ってやるから!」
あまりに可哀そうで共感しながら相槌を打っていると、シマちゃんが突如俺の手をガッと両手で掴んだ。
「それでね、すずめちゃんにお願いがあるんだけどいいかな~って…。」
「え、勿論いいよ!俺に出来る事があるなら何でも言って!」
「あ、ほんと!?ありがとー!やっぱり持つべきものはすずめちゃんってね♪♬」
この流れでNOと言える友達なんていないだろうと、ほぼノータイムで頷くと、シマちゃんは突然ケロっとした声で感謝の意を示しながら思いっきり俺に抱き着いてすり寄ってくる。
彼に元気が出てよかったと安心しつつも、あまりの切り替えの早さに、
(シマちゃん…?まさか、今の嘘泣きじゃないよね?)
と、変に勘ぐってしまったのだった。
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