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大事な子

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 奈菜と環に散々着せ替え人形にされた鈴子は、グッタリと疲れて店内のソファーに座っている。自分には関係無いと思っていたジャンルの服、ゴスロリやパンクな服を着せてもらって、少し未知なる世界の扉を開けた鈴子だったが、普段から着ようとはまだ思えないでいた。


「全部似合ってたし、買うよ」


 ジェイが環に告げているのを聞いて「いや、こんなに買えないから!」とジェイを引き留める。


「俺が買うんだよ。だから気にするなって」

「はあ? 何言ってるのよ、買って貰う理由もないし」


 そんな二人のやり取りを冷めた目で見る奈菜が鈴子をに耳打ちするのだ。


「こういう時は、彼ピーに花を持たせてやるのよ」


「彼ピー」と言う言葉にボッと顔が赤くなる鈴子は「彼氏じゃないですから!」と声を上げてしまうのだった。


 シーンと店内が静まりかえり、環がジェイを哀れむように見つめる。ジェイは素知らぬ顔をして支払いを済ませ、購入した服が入る大きな紙袋を持ってそそくさと店内から出て行った。


「あーあ、スネークが怒った! 鈴子が悪い!」

「ははは……。まあまあ。鈴子、またおいで! そやなあ、今度は一人でな」


 環がウインクを鈴子にするが、鈴子は苦笑いで何も言い返せなかったのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 店を出ると直ぐに奈菜のスマートフォンが鳴り、奈菜は「第二候補の彼ピーから呼び出し」と笑顔でジェイと鈴子を残して去って行く。気まずい雰囲気の二人はその場に少し立ち尽くすが、ジェイが「行くぞ」と言いスタスタと歩き出したので、鈴子は黙ってジェイについて行くことにした。


「ジェイ……、怒ってるの?」

「……別に」


 ジェイの冷たい声に急に寂しさを覚えた鈴子は、スッと手を伸ばしてジェイの手を握る。予期していなかった出来事に驚いたジェイは、一瞬ビクッとしながら鈴子を見つめる。


「な、何だよ……。コレは何だ」

「何だかジェイが何処かに行ってしまいそうだったから……。やなの……」


 ジェイをグッと見上げる鈴子の目は潤んでおり、捨てられた子犬のようになっていたのだった。


「ん……ぁ、もう!」


 ジェイは日中の街中だというのに鈴子の唇を奪う。激しく鈴子の唇に覆い被さるジェイの唇は、驚いた鈴子が押しのけようともビクともしない。反対に逃げられないようにジェイは鈴子の頭を押さえて、更に激しく口内を犯していくのだ。


 偶然にも人通りが少ない裏通りだったが、時々すれ違う人々がギョッとして目を逸らす様子が鈴子の視界の片隅に映る。


 湿った音と共に細い糸を引きながら、離れがたそうに距離が取られていく互いの唇。鈴子も既に顔を火照らせて、うっとりとジェイの青い瞳を見つめていた。


「今すぐ帰るぞ……」


 ジェイの店までの二人は無言だった。しかし、手はギュッと繋がれていて、決して離れることは無かったのだ。


 店に上がっていく階段も、二人は手を繋いだまま離れない。少し汗ばんできた互いの手だったが、汗を拭くために手を離すことさえしたくないとでも言うように、がっしりと「恋人つなぎ」のままだ。


 鍵が掛かっている店を開け、中に入った二人は、店のドアを閉めたと同時に唇を重ね合わせる。


 チュプ チュプと湿った音が室内に鳴り響き、互いの舌を絡め合わせる。ジェイの長い舌は鈴子の喉奥にたどり着き、舌に付いているピアスが鈴子の喉奥を刺激した。生き物のように動くその舌は、鈴子の歯列をなぞり出した。


 ジェイは鈴子の口内を堪能する。いつも甘い匂いのする鈴子は、口の中も甘い蜜の味がしていた。きっと桃のミネラルウォーターを常に飲んでいるからなのだろうと、ジェイはクククと笑い出すのだ。


「何がおかしいの?」


 不思議な顔の鈴子がジェイを見つめる。火照った頬は桃色でプックリと膨らみ、目はトロンと潤んでいる鈴子の様子に、ジェイは「か、可愛い!」と言いながら頬に噛みついた。


「いやーん。何! 噛んじゃ、やぁー」


 プクプクのほっぺたは思ったよりも柔らかく、ジェイは何度もハムハムと甘噛みする。暫くふざけて鈴子を噛んでいたジェイだったが、ゆっくりと鈴子を見つめ直し、優しく鈴子に問いかける。


「鈴子は俺の大事な子だよ。今まで他人をこんな風に思った事は無い」


 ニコッと微笑むジェイの青い瞳がキラキラと光って見えた鈴子は、「綺麗、ジェイの目に吸い込まれそう……」と呟きジェイの目に唇を重ねる。


「俺は皆と違うこの目が大嫌いだった……。でも、鈴子が綺麗と言ってくれるなら、少しは好きになれるかもな」

「ジェイは素敵だよ、全部。金色の地毛だってとても綺麗。白くてスベスベの地肌も素敵。もちろん、刺青も綺麗。長い手足も全部、何もかも……(好き)」


 最後の言葉は声に出さずに心の中に留めた鈴子は、笑顔でジェイを見つめる。ジェイの顔はクシャッと崩れていて、頬に伝う何かに気が付いた鈴子は、それを自身の舌でペロッと舐めるのだった。


 ジェイを抱き寄せてソファーに座る鈴子は、声を殺して咽ぶジェイを優しく包む。鈴子の太股に顔を埋めるジェイの涙で鈴子のジーンズが濡れていく。頭を撫でてジェイをなだめる鈴子は、ジェイがその内スウスウと寝息を立てている事に気が付くのだった。


「え? 寝ちゃったの? もう、大きなお子ちゃまだなあ……」


 鈴子は寝ているジェイを起こさない様に、そのままで自分もソファーで眠ることにしたのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 鈴子は深い眠りの中で誰かに身体を弄られていた。その人物の手の動きは艶めかしく、的確に鈴子の「イイ所」を刺激する。


(誰? お義父さん? いやーーーー! あぁ……、待って、誰? 違う……この指はお義父さんじゃない! ハアハア……、あぅ……じぇ……ジェイ?)


「……ジェイ!」


 鈴子が目を覚ますと、鈴子を後ろから抱きしめながら自身の指を、愛蜜で濡れた卑肉で抜き差しするジェイが居た。


「ん? 起きたのか鈴子。まあ、起こすためにやってたんだけどな」


 ジェイの太い指は既に三本も鈴子の中に入っていて、鈴子の愛蜜でテラテラと光っていた。


「やぁ……、ジェイ。抜いて! ああああ! だ、ダメなのーーーー」


 起きたのならばと容赦ない激しさで指を抜き差しするジェイは、鈴子の耳朶を甘噛みしながら「イケよ……」と耳元で囁く。


 そのジェイの低音ボイスにゾクッときた鈴子は、ビクッと大きく震えながら仰け反る。


「あふぁぁぁ! い、イクぅぅぅ! イッちゃうのぅーーーー!」


 その時鈴子の秘部からピューッと卑猥な蜜が飛び出すのだった。


「良い子だよ、鈴子。上手にイケたね……」


 ニヤリと笑うジェイは、鈴子の愛蜜で濡れた指をペロッと舐める。


 すっかりと形勢逆転してしまった鈴子とジェイ。先ほどまで咽び泣いていた男は消え去り、妖しく光る青い目を持つ美しい男が、支配欲むき出して鈴子を見つめているのだった。
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