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自分の代わりはいくらでもいる
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月曜の朝に会社に出社した鈴子は、朝一番に部長の机に向かう。少し緊張して声の震えている鈴子だったが、「部長、お話が……」と声を掛けるのだった。
「西門さん……。時間が無いから手短に」
明らかな拒絶反応を示す部長に、鈴子は少し小声で話し出す。
「し、進退の事でご相談がありまして、少し時間を取って頂きたく……」
鈴子を怪訝な顔で見つめる部長は、朝だというのに既に脂ぎっている。はあーと大袈裟に溜め息を吐いた部長が鈴子に告げた。
「昼食後の午後1時になら時間が取れるから、第三会議室を押さえといてくれるか?」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
鈴子は笑顔で部長の机を離れるが、部長は無表情で鈴子が去る様子を見つめていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昼食後、鈴子は第三会議室に向かう。部屋に到着したが、まだ部長は来ていないようだった。鈴子はスマートフォンに書いた退職を申し出る例文を確認し、何度も声に出して練習する。その時、会議室のドアが開いて部長ともう一人の人物が中に入ってくるのだった。
「人事課長……。どうしてですか?」
鈴子の問いかけに無言の二人は、鈴子の向かいの席に座り、鈴子にも無言で着席するように催促する。
「西門さん、話ってなんだ?」
無表情の部長が口を開く。鈴子はビクッと震えたが、太股の上にある手にグッと力を入れて声をだした。
「い、一身上の都合で退職したいのですが……」
鈴子の言葉を聞き、ホーッとした表情の二人は急に笑顔になった。
「ああ、そういう事だったんだね。そうか、退職ね。うんうん、良かった」
「ぶ、部長……。そう言う言い方は……」
昨今は色々と難しいのだと人事課長が部長に告げ、部長も「ああ、そうだった」と口を噤む。きっと部長は鈴子が何かを訴えてくるか、面倒な事を起こすと勘ぐっていたのだろう。その為に人事課長を同席したのかもしれない。
「あ、あのう。8月いっぱいで退職できますか? 引き継ぎの問題もあると思いますので、無理なら9月でも……」
今は8月の頭だった。鈴子も無理を言っているのは分かっているが、女子社員の嫌がらせにもう飽き飽きしていたのだ。すると笑顔の人事課長が鈴子に告げる。
「大丈夫です。来週からお盆ですし、今年は一週間の休み。その後の約二週間は残っている有給と病欠で補充しますから、今週いっぱいの勤務で退職できます」
「え? そ、そうですか……。引き継ぎは?」
「そうですねえ。派遣の方を直ぐに呼びますので、その方に西門さんの後をお願いする事になりますね。今週中に引き継ぎマニュアルを作成して下さい。派遣の方と辞める前に会える可能性は低いので、説明は細かくお願いしますね」
呆気に取られている鈴子を見て部長が吐き捨てる様に告げた。
「西門さん。事務の仕事は替わりはいくらでも居るんだよ。君は特別じゃないんだ。替えのきく人間ってことさ。今の若い子は、自分が何か特別だと思っている節がある。なあ、君もそう思うだろう?」
部長が横にいる人事課長に話を振るが、人事課長は「ですから、そういう事を言っては……」と小声で部長に耳打ちしていた。
「まあ、何より。君が退職を選んでくれてこちらも助かったよ。後の詳しい退職手続きは人事部でやってくれ。私物の整理も金曜までに宜しく!」
笑顔の部長と苦笑いの人事課長が会議室を出て行くのを、ボーッと見つめる鈴子。暫く会議室に残った鈴子は、ただ無言で窓の外を見つめていたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えっと、今日からよろしくお願いします」
鈴子が徹也の店に着いたのは6時過ぎだったが、店には徹也とキッチンの田中しか居なかった。店内は満席でもなく、数人がバラバラに席に座って寛いでいた。
「ああ、鈴子ちゃん。助かるよ! バイトの子が風邪を引いたとかって急に休みで……」
「ありゃ、仮病だ!」
キッチンの田中がムッとしながら発言するが、徹也は「まあまあ」と優しくなだめる。
「うちは軽食しかないから、この時間は余り込まないんだけど、夕食後にここでおしゃべりして行く人がいて、ちょこっと後で少し増える感じかな」
「そうなんですね。じゃあ、仕事を覚えるには好都合な感じですね」
ニコッと笑う鈴子を見て「か、可愛い!」と手を口元に持って行き悶絶している徹也を、田中が呆れた顔で見つめていた。
「鈴子ちゃんってさあ、小動物系だよね? ぎゅーってしたくなる感じ? なあ、田中くん?」
キッチンの田中は無視をしてキッチンの中に入ってしまう。取り残された鈴子と徹也は「えっと……、じゃあ取り敢えずテーブル番号を覚えようか」と業務の話を真面目にする事となった。
店の閉店は午後10時で、鈴子は閉店後に少し残って掃除や片付けの説明を受けていた。既に時間は午後10時半を回っていたのだ。徹也が申し訳なさそうに鈴子に伝える。
「初日は早くに帰そうと思ったのにごめんね。遅くなったけど大丈夫?」
「はい、そう遠くない所に住んでいますので」
「えっと、元町だったよね? でもあの辺って店とかビルばかりだけど……」
鈴子は少し考えた後に言いにくそうに口を開く。
「ええ、まあ、知り合いの店のビルに住んでます……」
「彼氏とか?」
いきなりの徹也の質問に、バッと顔が赤くなる鈴子は「ち、違います!」と慌てる。その素振りを意味ありげに見つめる徹也は「そういう事にしておこう」と呟いたのだった。
「鈴子ちゃん、当面は仕事帰りの月水金でお願い! うちの定休日は火曜日ね。週末は取り敢えず今はバイトの子が居るから大丈夫。おいおい、日数を増やしていこう。来月からはもっと働いてもらうからね。じゃあ、気をつけて!」
鈴子はまだ昼間は会社に行くのだからと気にしてくれる徹也。会社へは今週行けばもう行かなくても良いように会社がなんとかする現状だったが、何故か恥ずかしくてそれを言えないでいた鈴子。それを口にしてしまえば、自分は価値のない替えの利く人間だと認めてしまうようで言えなかったのだ。
月曜日の午後11時前だと言うのに、店の外の通りには人通りがあり鈴子は驚く。派手な身なりの集団が、「今から飲みに行くぞ~!」と騒いでいた。煌びやかな髪の色、個性的な髪型に服装。鈴子は不思議そうにその集団を見ていた。
自分がOLをして家と会社の往復をしていた時には会わなかった人種だ。自分とは住む世界の違うその者達が鈴子の側を通り過ぎる時に、ふと目に付いたのが一人の人物の首元に入っていた刺青だった。よく見ると、他の何人かにもワンポイント的に刺青が入っているようだった。
「共通点があった……」
鈴子はクスっと笑い家路についたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「随分遅いお帰りだな」
鈴子がジェイの店に着いたのは夜の11時過ぎだった。店は既に閉まっていたが、鍵を持っていた鈴子は店の鍵を開けて中に入ると、閉店している筈の店の中でジェイが座って待っていたのだった。
「あ、閉店後の説明とかあって。ごめん……」
ジェイの側を急いで走り去ろうとした鈴子だったが、簡単にジェイに捕獲されてしまう。捕まえられた鈴子は、椅子に座るジェイの太股の上に載せられた。鈴子は恥ずかしく直ぐ側にあるジェイの顔を見れなくて、わざとそっぽを向いて目を合わせないようにする。
「どうして目を見ない? やましいことでもあるのか?」
「はあ? そんなの無いし……。やましいって……」
するとジェイは鈴子の穿いていたズボンのファスナーに手を掛けて、手際よくズボンを脱がしていく。「え? ええ?」と鈴子が驚いている間に、鈴子はショーツだけになっていた。
「治療の時間だろ?」
「はあ? だから、そんな治療はいらないの!」
ジェイの胸をポカポカ叩く鈴子だったが、ジェイは真顔で鈴子に答える。
「俺は鈴子の彫り師だ。鈴子の健康チェックは仕事の一環だよ。肌の状態も見ないといけない」
さも当たり前だと言わんばかりの顔のジェイは、鈴子を抱き上げてテーブルの上に載せた。冷たいテーブルが背中に触れる鈴子は、ブルッと震えるが、それは何かを期待しての震えのような気がしてくる。鈴子はゴクリと喉を鳴らしたのだった。
「さあ、今日の舐める治療を始めようか……」
ニヤリと笑ったジェイが舌で鈴子に絶頂を何度も与え、あっという間に夜が更けていくのだった。
「西門さん……。時間が無いから手短に」
明らかな拒絶反応を示す部長に、鈴子は少し小声で話し出す。
「し、進退の事でご相談がありまして、少し時間を取って頂きたく……」
鈴子を怪訝な顔で見つめる部長は、朝だというのに既に脂ぎっている。はあーと大袈裟に溜め息を吐いた部長が鈴子に告げた。
「昼食後の午後1時になら時間が取れるから、第三会議室を押さえといてくれるか?」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
鈴子は笑顔で部長の机を離れるが、部長は無表情で鈴子が去る様子を見つめていた。
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昼食後、鈴子は第三会議室に向かう。部屋に到着したが、まだ部長は来ていないようだった。鈴子はスマートフォンに書いた退職を申し出る例文を確認し、何度も声に出して練習する。その時、会議室のドアが開いて部長ともう一人の人物が中に入ってくるのだった。
「人事課長……。どうしてですか?」
鈴子の問いかけに無言の二人は、鈴子の向かいの席に座り、鈴子にも無言で着席するように催促する。
「西門さん、話ってなんだ?」
無表情の部長が口を開く。鈴子はビクッと震えたが、太股の上にある手にグッと力を入れて声をだした。
「い、一身上の都合で退職したいのですが……」
鈴子の言葉を聞き、ホーッとした表情の二人は急に笑顔になった。
「ああ、そういう事だったんだね。そうか、退職ね。うんうん、良かった」
「ぶ、部長……。そう言う言い方は……」
昨今は色々と難しいのだと人事課長が部長に告げ、部長も「ああ、そうだった」と口を噤む。きっと部長は鈴子が何かを訴えてくるか、面倒な事を起こすと勘ぐっていたのだろう。その為に人事課長を同席したのかもしれない。
「あ、あのう。8月いっぱいで退職できますか? 引き継ぎの問題もあると思いますので、無理なら9月でも……」
今は8月の頭だった。鈴子も無理を言っているのは分かっているが、女子社員の嫌がらせにもう飽き飽きしていたのだ。すると笑顔の人事課長が鈴子に告げる。
「大丈夫です。来週からお盆ですし、今年は一週間の休み。その後の約二週間は残っている有給と病欠で補充しますから、今週いっぱいの勤務で退職できます」
「え? そ、そうですか……。引き継ぎは?」
「そうですねえ。派遣の方を直ぐに呼びますので、その方に西門さんの後をお願いする事になりますね。今週中に引き継ぎマニュアルを作成して下さい。派遣の方と辞める前に会える可能性は低いので、説明は細かくお願いしますね」
呆気に取られている鈴子を見て部長が吐き捨てる様に告げた。
「西門さん。事務の仕事は替わりはいくらでも居るんだよ。君は特別じゃないんだ。替えのきく人間ってことさ。今の若い子は、自分が何か特別だと思っている節がある。なあ、君もそう思うだろう?」
部長が横にいる人事課長に話を振るが、人事課長は「ですから、そういう事を言っては……」と小声で部長に耳打ちしていた。
「まあ、何より。君が退職を選んでくれてこちらも助かったよ。後の詳しい退職手続きは人事部でやってくれ。私物の整理も金曜までに宜しく!」
笑顔の部長と苦笑いの人事課長が会議室を出て行くのを、ボーッと見つめる鈴子。暫く会議室に残った鈴子は、ただ無言で窓の外を見つめていたのだった。
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「えっと、今日からよろしくお願いします」
鈴子が徹也の店に着いたのは6時過ぎだったが、店には徹也とキッチンの田中しか居なかった。店内は満席でもなく、数人がバラバラに席に座って寛いでいた。
「ああ、鈴子ちゃん。助かるよ! バイトの子が風邪を引いたとかって急に休みで……」
「ありゃ、仮病だ!」
キッチンの田中がムッとしながら発言するが、徹也は「まあまあ」と優しくなだめる。
「うちは軽食しかないから、この時間は余り込まないんだけど、夕食後にここでおしゃべりして行く人がいて、ちょこっと後で少し増える感じかな」
「そうなんですね。じゃあ、仕事を覚えるには好都合な感じですね」
ニコッと笑う鈴子を見て「か、可愛い!」と手を口元に持って行き悶絶している徹也を、田中が呆れた顔で見つめていた。
「鈴子ちゃんってさあ、小動物系だよね? ぎゅーってしたくなる感じ? なあ、田中くん?」
キッチンの田中は無視をしてキッチンの中に入ってしまう。取り残された鈴子と徹也は「えっと……、じゃあ取り敢えずテーブル番号を覚えようか」と業務の話を真面目にする事となった。
店の閉店は午後10時で、鈴子は閉店後に少し残って掃除や片付けの説明を受けていた。既に時間は午後10時半を回っていたのだ。徹也が申し訳なさそうに鈴子に伝える。
「初日は早くに帰そうと思ったのにごめんね。遅くなったけど大丈夫?」
「はい、そう遠くない所に住んでいますので」
「えっと、元町だったよね? でもあの辺って店とかビルばかりだけど……」
鈴子は少し考えた後に言いにくそうに口を開く。
「ええ、まあ、知り合いの店のビルに住んでます……」
「彼氏とか?」
いきなりの徹也の質問に、バッと顔が赤くなる鈴子は「ち、違います!」と慌てる。その素振りを意味ありげに見つめる徹也は「そういう事にしておこう」と呟いたのだった。
「鈴子ちゃん、当面は仕事帰りの月水金でお願い! うちの定休日は火曜日ね。週末は取り敢えず今はバイトの子が居るから大丈夫。おいおい、日数を増やしていこう。来月からはもっと働いてもらうからね。じゃあ、気をつけて!」
鈴子はまだ昼間は会社に行くのだからと気にしてくれる徹也。会社へは今週行けばもう行かなくても良いように会社がなんとかする現状だったが、何故か恥ずかしくてそれを言えないでいた鈴子。それを口にしてしまえば、自分は価値のない替えの利く人間だと認めてしまうようで言えなかったのだ。
月曜日の午後11時前だと言うのに、店の外の通りには人通りがあり鈴子は驚く。派手な身なりの集団が、「今から飲みに行くぞ~!」と騒いでいた。煌びやかな髪の色、個性的な髪型に服装。鈴子は不思議そうにその集団を見ていた。
自分がOLをして家と会社の往復をしていた時には会わなかった人種だ。自分とは住む世界の違うその者達が鈴子の側を通り過ぎる時に、ふと目に付いたのが一人の人物の首元に入っていた刺青だった。よく見ると、他の何人かにもワンポイント的に刺青が入っているようだった。
「共通点があった……」
鈴子はクスっと笑い家路についたのだった。
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鈴子がジェイの店に着いたのは夜の11時過ぎだった。店は既に閉まっていたが、鍵を持っていた鈴子は店の鍵を開けて中に入ると、閉店している筈の店の中でジェイが座って待っていたのだった。
「あ、閉店後の説明とかあって。ごめん……」
ジェイの側を急いで走り去ろうとした鈴子だったが、簡単にジェイに捕獲されてしまう。捕まえられた鈴子は、椅子に座るジェイの太股の上に載せられた。鈴子は恥ずかしく直ぐ側にあるジェイの顔を見れなくて、わざとそっぽを向いて目を合わせないようにする。
「どうして目を見ない? やましいことでもあるのか?」
「はあ? そんなの無いし……。やましいって……」
するとジェイは鈴子の穿いていたズボンのファスナーに手を掛けて、手際よくズボンを脱がしていく。「え? ええ?」と鈴子が驚いている間に、鈴子はショーツだけになっていた。
「治療の時間だろ?」
「はあ? だから、そんな治療はいらないの!」
ジェイの胸をポカポカ叩く鈴子だったが、ジェイは真顔で鈴子に答える。
「俺は鈴子の彫り師だ。鈴子の健康チェックは仕事の一環だよ。肌の状態も見ないといけない」
さも当たり前だと言わんばかりの顔のジェイは、鈴子を抱き上げてテーブルの上に載せた。冷たいテーブルが背中に触れる鈴子は、ブルッと震えるが、それは何かを期待しての震えのような気がしてくる。鈴子はゴクリと喉を鳴らしたのだった。
「さあ、今日の舐める治療を始めようか……」
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