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1:はじまりはじまり
夜の森は怖いんだが?
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俺は書き写した地図を見ながら廊下を抜け、外に出た。
部屋にあった灯りがちょうどよくランタン代わりになるものでラッキーだ。
こういうご都合のいいところはソシャゲのままらしい。
城の裏側にある森。神殿の方に向かってその森に入っていく。
(そういえば、俺がアレクシと出会ったのもこの森の中と聞いたような)
(うーん、ゲームの始まりってああだっけ? 神殿に落ちるんじゃなかったか?)
どこまでがゲームと同じでどこからが違うのか分からない。
自分の攻略対象が分からない不安で、かなり混乱しているのかもしれなかった。
(確かこの森の奥に泉があって……)
嫉妬ステータスが分かるアイテムは虹色の宝石のついたブレスレットだったはずだ。
ちょっとそういうのが乙女ゲームっぽいよなあと思いつつプレイしていた記憶がある。
とにかく、ゲームとは違って人の感情が数字で見えないのは不便で仕方がない。攻略対象がわからない限り、とりあえずのアイテムは必要だ。俺は明日からのイベントに備えて装備を整える冒険者の気分だった。
夜の冷えた空気が頬を撫でる。ぶるりと体が震えてしまい、はあと息を吐いた。
鬱蒼とした夜の森は、静かな風のせいか、不穏なざわめきに揺れていた。
(ランベールが妙なことを言っていたな)
『魔獣が出るやもしれませんよ』
確かに魔獣がいて魔法が使える世界線ではあったはずだが、シナリオに魔獣が出てくるのは各皇子と結ばれかけてからの外的要因として、だったはずだ。
それに城と神殿、つまり王宮の敷地内は広大とはいえ、しっかりと結界が張られていて、魔獣は出入りできなくなっている。……はずだ!
要するに、二人の恋愛を盛り上げるために出てくる障壁の一つでしかないって認識。本編でもバトルシーンなんてイケメン皇子たちのスチルであるぐらいだし。魔獣なんてものを具体的に思い描けなかった。現実世界でいうところのクマみたいなもんだろうか?
……いや、それは出会った瞬間、完全にアウトじゃね??
(ま、まあ……大丈夫だろ。出ない出ない!)
少し冷えた空気に不安になるものの、俺は強い気持ちをもって森の奥に進んでいく。
この森の泉は木々が開けたところにあるはず。
「……あった!」
わずかな光に導かれて俺は明るい方へ進んでいく。
小さな泉は大きな月に照らされ、水面が光り輝いていた。
「うわ……綺麗……」
思わずそんな言葉がでて、俺は泉の近くにゆっくりと歩み寄る。少し背の高い草とぬかるみが不安定だった。
たしかこの近くでアイテムとして拾ったはずなのだ。それこそ月が出ている夜、草むらで何かが光って……
(ん?)
自分がいるのと反対側、ちらりとした反射に気づいてそちらを見ると、そこに少し大きな影があった。
……人だ。誰がこんな時間にこんなところに?と思うも、相手も向こうを向いていてよく見えない。
(誰だ……? 髪は長そうな……)
その瞬間、向こうが先にこちらに気づき、ばっと振り返る。
「誰だ!?」
その大きな声に驚き、思わず後ずさると……
「うわっ!?」
俺は「なにものか」に足をとられ、そのまま逆さに吊り上げられてしまった。
部屋にあった灯りがちょうどよくランタン代わりになるものでラッキーだ。
こういうご都合のいいところはソシャゲのままらしい。
城の裏側にある森。神殿の方に向かってその森に入っていく。
(そういえば、俺がアレクシと出会ったのもこの森の中と聞いたような)
(うーん、ゲームの始まりってああだっけ? 神殿に落ちるんじゃなかったか?)
どこまでがゲームと同じでどこからが違うのか分からない。
自分の攻略対象が分からない不安で、かなり混乱しているのかもしれなかった。
(確かこの森の奥に泉があって……)
嫉妬ステータスが分かるアイテムは虹色の宝石のついたブレスレットだったはずだ。
ちょっとそういうのが乙女ゲームっぽいよなあと思いつつプレイしていた記憶がある。
とにかく、ゲームとは違って人の感情が数字で見えないのは不便で仕方がない。攻略対象がわからない限り、とりあえずのアイテムは必要だ。俺は明日からのイベントに備えて装備を整える冒険者の気分だった。
夜の冷えた空気が頬を撫でる。ぶるりと体が震えてしまい、はあと息を吐いた。
鬱蒼とした夜の森は、静かな風のせいか、不穏なざわめきに揺れていた。
(ランベールが妙なことを言っていたな)
『魔獣が出るやもしれませんよ』
確かに魔獣がいて魔法が使える世界線ではあったはずだが、シナリオに魔獣が出てくるのは各皇子と結ばれかけてからの外的要因として、だったはずだ。
それに城と神殿、つまり王宮の敷地内は広大とはいえ、しっかりと結界が張られていて、魔獣は出入りできなくなっている。……はずだ!
要するに、二人の恋愛を盛り上げるために出てくる障壁の一つでしかないって認識。本編でもバトルシーンなんてイケメン皇子たちのスチルであるぐらいだし。魔獣なんてものを具体的に思い描けなかった。現実世界でいうところのクマみたいなもんだろうか?
……いや、それは出会った瞬間、完全にアウトじゃね??
(ま、まあ……大丈夫だろ。出ない出ない!)
少し冷えた空気に不安になるものの、俺は強い気持ちをもって森の奥に進んでいく。
この森の泉は木々が開けたところにあるはず。
「……あった!」
わずかな光に導かれて俺は明るい方へ進んでいく。
小さな泉は大きな月に照らされ、水面が光り輝いていた。
「うわ……綺麗……」
思わずそんな言葉がでて、俺は泉の近くにゆっくりと歩み寄る。少し背の高い草とぬかるみが不安定だった。
たしかこの近くでアイテムとして拾ったはずなのだ。それこそ月が出ている夜、草むらで何かが光って……
(ん?)
自分がいるのと反対側、ちらりとした反射に気づいてそちらを見ると、そこに少し大きな影があった。
……人だ。誰がこんな時間にこんなところに?と思うも、相手も向こうを向いていてよく見えない。
(誰だ……? 髪は長そうな……)
その瞬間、向こうが先にこちらに気づき、ばっと振り返る。
「誰だ!?」
その大きな声に驚き、思わず後ずさると……
「うわっ!?」
俺は「なにものか」に足をとられ、そのまま逆さに吊り上げられてしまった。
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