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3章:幼年期で終り
第7話
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「あ、豊橋から電話だ。終わったみたいだな。もしもし?」
「おい鳴海。桜のスマホは電源が切れているのか? 堀田から桜に電話したが、圏外または電源断の音声案内だそうだ」
「了解。桜に確認しておくよ。で? とこちゃんのスキルはどうだった?」
「俺の想定を超えた能力だった、と答えておこう。少なくとも50mの距離において、堀田が選んだ図面の内容を、位置関係含め全て正確に言い当てた」
「そうか…。了解。ありがとう。次は、僕からとこちゃんに電話をかけるよ」
「ああ。それと、常滑が妙な事に気付いたらしい。お前に直接話をするそうだ」
「妙なこと? なんだろう…。わかったよ」
「俺たちの役目は果たした。後は任せた。ブチッ」
「鳴海くん、とこちゃんのスキルは確認できたって?」
「うん、豊橋が驚いていたくらいだよ。あと、桜のスマホ、電源が切れてるんじゃないかってさ」
「え? あ? そう? わかった」
「さて…。とこちゃんに電話をするか。あ、桜、封筒から適当に2枚紙を出してくれるかな。で、そのうちの1枚をとこちゃんに電話が繋がる前に覚えてほしいんだ」
「ええっと…うん。わかった。覚えるね。1枚目は…っと」
「口に出さなくていいよ。覚えたら、教えて欲しい」
「…うん、大丈夫だよ。覚えた」
「OK。覚えた内容は、僕がとこちゃんに電話をかけたら忘れて欲しい」
「え~…覚えたり忘れたり、そんな器用な事はできないよ~」
「あ、とこちゃん? そっちの準備は大丈夫かな?」
「うちはいつでも準備万端だでよ。はよお題を出してちょー」
「桜、さっき取り出した、もう1枚の方に書かれている内容を、頭の中に思い浮かべて貰えるかな?」
「…うん。思い浮かべたよ」
「とこちゃん、今、桜が頭に思い浮かべている内容がわかったら、教えてくれるかな?」
「なんだねこれ。読み上げればいいかね?」
「そう、読み上げてほしい」
「えっと…。『16+24+5=54』。ん? 計算まちがっとりゃーすがね。桜ねえちゃんが計算間違えとるかね?」
「ええ…あたし、書いてある通りに思い浮かべただけなのに…」
「とこちゃん、正解だよ。その計算式は、わざと間違えてあるんだ」
「なんだね? 鳴海にいちゃんのいたずらかね?」
「むう…鳴海くんのいじわる…」
「桜、答えを自分の頭の中で訂正してくれるかな?」
「ん? あ、はい。わかったよ…。はい、直した」
「とこちゃん、今度はどうかな?」
「あっ、答えが変わったがね。45になりょーでるがや」
「よしOK。じゃあ、もう1問。今、桜が思い浮かべたのは、実は、2枚中の2枚目のメモだったんだけれど、桜がさっき読んだ1枚目のメモの内容はわかるかな?」
「1枚目? 1枚目があったかね」
「1枚目があったんだ。でもそれはわからないみたいだね」
「うん、わからせんでよ。うちの超能力で読めるのは、たった今、その人が頭に思い浮かべている内容だけだでよ」
(仮説は間違っていなかったみたいだな。やはり、リアルタイムな内容しか読み取れない)
「とこちゃん、ありがとう。じゃあ、1枚目のメモの内容を、今から桜が頭に思い浮かべるから、その内容がわかったら、教えて」
「承知したでよ」
(桜、1枚目に覚えた内容を、心の中で声に出して読み上げてほしい。あと、読む時のイントネーションを、関西弁でお願いしたい)
(こ、心の中でね…って、関西弁? な、なんで…)
(いいから、頼む。検証に必要なんだ)
(う、うまくできるかな…。それに、えっと…なんだっけ。あ、そうそう」
「とこちゃん、今、桜が思い浮かべているもの。わかるかな?」
「ようけ聞こえとるでよ」
「そうか、聞こえてる、んだね。じゃあ、教えてくれるかな?」
「『はるわあけぼの ようようしろくなりゆく やまぎわ』。なんのこっちゃ? それに桜ねえちゃんの心の声も、発音がへんちくりんだったでよ」
「正解。ありがとう。桜のメモには歴史的仮名遣いで書いてあるから、とこちゃんの能力が、声にしろ文字にしろ絵にしろ、頭に思い浮かんだ物をそのまま見たり聞いたりできる力だとわかったよ。実験はこれで完了だ。とこちゃんの超能力は、僕たちが思っていたよりも凄い能力だったよ」
「鳴海にいちゃんが納得してくれてよかったでよ。あ、あと、気になった事があらすのだけど、話してもいいかしゃん?」
「そっか、豊橋が言ってたっけ。いいよ。何が気になってるの?」
「鳴海にいちゃんの後ろのゴンドラに乗っとらっせる女の人だがね。心の声が聞こえていりゃーすけど、もしかして超能力の話をしとらせんかね? さっきからスキルがどうの、って言っとりゃーすわ」
「僕の後ろのゴンドラだって…? 桜、ちょっといいかな?」
「ん? どうしたの?」
「こっちから見ている事を気づかれないように、僕の後ろのゴンドラに乗っている人を、僕の肩越しに確認して欲しいんだ」
「後ろのゴンドラ? だったら、あたしたちが観覧車に乗ったあとからずっと、誰かに電話をかけているみたいだけれど。女の子が1人だけで乗ってるよ」
「女の子が1人だけで? 年齢はどのくらいかな」
「どうだろうな~。中学生か、高校生じゃないかな。あたしたちと同じくらいかもね」
「まさか…スキル発現者か…? だとしても、1人で電話をしながら観覧車に乗っている状況が理解できない。確かに密室にできるから、聞かれたくない長電話にはもってこいな環境だけれど…。偶然なんだろうか。かといって、ゴンドラを降りてから話しかけるのも不自然だ…」
「ねえ鳴海くん。もし、とこちゃんや国府ちゃんみたいなスキル発現者であれば、あたしたちに危害を加える事はないんじゃないかな? もしかすると、何か新しい情報を聞き出せるかもよ?」
「確かに…それは一理あるな。逆に、僕らに危害を加え得るスキル者がいるとすると…あっ!」
「鳴海にいちゃん、どうするかね。ほうっておくかね。もうすぐ観覧車が1周してまうでよ」
「とこちゃん、僕の後ろのゴンドラの女の人だけれど、名前はわかるかな?」
「名前かね? それはわからせんでよ。自分の名前を心の中で言っとりゃせんもん」
「そうか、わかった。ありがとう。僕は今から豊橋に電話をかけるから、とこちゃんはそのまま女の人の心の声を聞き続けて欲しい」
「了解したでよ。ゴンドラ1周したら、先に降りて待っとるでよ。ブチッ」
「おい鳴海。桜のスマホは電源が切れているのか? 堀田から桜に電話したが、圏外または電源断の音声案内だそうだ」
「了解。桜に確認しておくよ。で? とこちゃんのスキルはどうだった?」
「俺の想定を超えた能力だった、と答えておこう。少なくとも50mの距離において、堀田が選んだ図面の内容を、位置関係含め全て正確に言い当てた」
「そうか…。了解。ありがとう。次は、僕からとこちゃんに電話をかけるよ」
「ああ。それと、常滑が妙な事に気付いたらしい。お前に直接話をするそうだ」
「妙なこと? なんだろう…。わかったよ」
「俺たちの役目は果たした。後は任せた。ブチッ」
「鳴海くん、とこちゃんのスキルは確認できたって?」
「うん、豊橋が驚いていたくらいだよ。あと、桜のスマホ、電源が切れてるんじゃないかってさ」
「え? あ? そう? わかった」
「さて…。とこちゃんに電話をするか。あ、桜、封筒から適当に2枚紙を出してくれるかな。で、そのうちの1枚をとこちゃんに電話が繋がる前に覚えてほしいんだ」
「ええっと…うん。わかった。覚えるね。1枚目は…っと」
「口に出さなくていいよ。覚えたら、教えて欲しい」
「…うん、大丈夫だよ。覚えた」
「OK。覚えた内容は、僕がとこちゃんに電話をかけたら忘れて欲しい」
「え~…覚えたり忘れたり、そんな器用な事はできないよ~」
「あ、とこちゃん? そっちの準備は大丈夫かな?」
「うちはいつでも準備万端だでよ。はよお題を出してちょー」
「桜、さっき取り出した、もう1枚の方に書かれている内容を、頭の中に思い浮かべて貰えるかな?」
「…うん。思い浮かべたよ」
「とこちゃん、今、桜が頭に思い浮かべている内容がわかったら、教えてくれるかな?」
「なんだねこれ。読み上げればいいかね?」
「そう、読み上げてほしい」
「えっと…。『16+24+5=54』。ん? 計算まちがっとりゃーすがね。桜ねえちゃんが計算間違えとるかね?」
「ええ…あたし、書いてある通りに思い浮かべただけなのに…」
「とこちゃん、正解だよ。その計算式は、わざと間違えてあるんだ」
「なんだね? 鳴海にいちゃんのいたずらかね?」
「むう…鳴海くんのいじわる…」
「桜、答えを自分の頭の中で訂正してくれるかな?」
「ん? あ、はい。わかったよ…。はい、直した」
「とこちゃん、今度はどうかな?」
「あっ、答えが変わったがね。45になりょーでるがや」
「よしOK。じゃあ、もう1問。今、桜が思い浮かべたのは、実は、2枚中の2枚目のメモだったんだけれど、桜がさっき読んだ1枚目のメモの内容はわかるかな?」
「1枚目? 1枚目があったかね」
「1枚目があったんだ。でもそれはわからないみたいだね」
「うん、わからせんでよ。うちの超能力で読めるのは、たった今、その人が頭に思い浮かべている内容だけだでよ」
(仮説は間違っていなかったみたいだな。やはり、リアルタイムな内容しか読み取れない)
「とこちゃん、ありがとう。じゃあ、1枚目のメモの内容を、今から桜が頭に思い浮かべるから、その内容がわかったら、教えて」
「承知したでよ」
(桜、1枚目に覚えた内容を、心の中で声に出して読み上げてほしい。あと、読む時のイントネーションを、関西弁でお願いしたい)
(こ、心の中でね…って、関西弁? な、なんで…)
(いいから、頼む。検証に必要なんだ)
(う、うまくできるかな…。それに、えっと…なんだっけ。あ、そうそう」
「とこちゃん、今、桜が思い浮かべているもの。わかるかな?」
「ようけ聞こえとるでよ」
「そうか、聞こえてる、んだね。じゃあ、教えてくれるかな?」
「『はるわあけぼの ようようしろくなりゆく やまぎわ』。なんのこっちゃ? それに桜ねえちゃんの心の声も、発音がへんちくりんだったでよ」
「正解。ありがとう。桜のメモには歴史的仮名遣いで書いてあるから、とこちゃんの能力が、声にしろ文字にしろ絵にしろ、頭に思い浮かんだ物をそのまま見たり聞いたりできる力だとわかったよ。実験はこれで完了だ。とこちゃんの超能力は、僕たちが思っていたよりも凄い能力だったよ」
「鳴海にいちゃんが納得してくれてよかったでよ。あ、あと、気になった事があらすのだけど、話してもいいかしゃん?」
「そっか、豊橋が言ってたっけ。いいよ。何が気になってるの?」
「鳴海にいちゃんの後ろのゴンドラに乗っとらっせる女の人だがね。心の声が聞こえていりゃーすけど、もしかして超能力の話をしとらせんかね? さっきからスキルがどうの、って言っとりゃーすわ」
「僕の後ろのゴンドラだって…? 桜、ちょっといいかな?」
「ん? どうしたの?」
「こっちから見ている事を気づかれないように、僕の後ろのゴンドラに乗っている人を、僕の肩越しに確認して欲しいんだ」
「後ろのゴンドラ? だったら、あたしたちが観覧車に乗ったあとからずっと、誰かに電話をかけているみたいだけれど。女の子が1人だけで乗ってるよ」
「女の子が1人だけで? 年齢はどのくらいかな」
「どうだろうな~。中学生か、高校生じゃないかな。あたしたちと同じくらいかもね」
「まさか…スキル発現者か…? だとしても、1人で電話をしながら観覧車に乗っている状況が理解できない。確かに密室にできるから、聞かれたくない長電話にはもってこいな環境だけれど…。偶然なんだろうか。かといって、ゴンドラを降りてから話しかけるのも不自然だ…」
「ねえ鳴海くん。もし、とこちゃんや国府ちゃんみたいなスキル発現者であれば、あたしたちに危害を加える事はないんじゃないかな? もしかすると、何か新しい情報を聞き出せるかもよ?」
「確かに…それは一理あるな。逆に、僕らに危害を加え得るスキル者がいるとすると…あっ!」
「鳴海にいちゃん、どうするかね。ほうっておくかね。もうすぐ観覧車が1周してまうでよ」
「とこちゃん、僕の後ろのゴンドラの女の人だけれど、名前はわかるかな?」
「名前かね? それはわからせんでよ。自分の名前を心の中で言っとりゃせんもん」
「そうか、わかった。ありがとう。僕は今から豊橋に電話をかけるから、とこちゃんはそのまま女の人の心の声を聞き続けて欲しい」
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