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 市の大きな祭りの本部を商工観光課が担って、無事に二日間の祭りが終わって慰労会が開催されると聞いたのは由貴ゆきが出て行ってもう三週間ばかり経過していた時だった。

 正直かなり気が重かった。

 課の飲み会なんて、二年前に酔い潰れて由貴に介抱されて恋人になったあの日をありありと思い出してしまうじゃないか。

 十八時から居酒屋で開催されたその飲み会に、課長が乾杯の挨拶をすると、全員が盛り上がってビールジョッキを掲げる。

 実は由貴が出て行ったあの日から、俺は酒に溺れてアルコール依存症になったのではないかと思うほど現実逃避な日々を送っていた。

 お陰で仕事で些細なミスを連発するし、課長から「風早かざはや、大丈夫か? 調子が悪いなら少し有給使えよ?」と情けないことに心配されてしまうほどには荒れ暮れていた。

 上座に課長が座って、その隣に主任の由貴、俺は下座の方に座って、隣には小鳥遊たかなしがいた。

 皆各々に会話に華を咲かせていたが、俺はそんな会話に混ざる気にもなれず、少し遠くから由貴を見つめた。

 また白磁はくじの頬を少しだけアルコールであかく染めて談笑している様は妬けるほど綺麗で美しく、周囲の人間の視線を一心に受けているのを見るのが苦しかった。

 思わず……というか、もう毎晩酒に溺れている俺は早いピッチでビールのジョッキを次々空けていった。

(由貴は俺に視線すら向けてこねぇ……)

 そのことが物悲しくなってきた俺は、また現実逃避よろしくジョッキを空けまくっていたのだけれど、宴もそろそろお開きという雰囲気になってきた時。

 隣に座っている小鳥遊が、「風早先輩、大丈夫ですか? 顔真っ赤ですよ? お水飲んでください」と言いながらグラスを差し出してきたので「ああ……悪いな」と受け取った水を一気に飲み干した。

 異変に気付いたのは、皆で宴会場を後にして、会計をする課長のまわりにたむろして「課長、ご馳走様ですー」なんて会話が飛び交っている最中だった。

 身体が、焼けるように熱い――。
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