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仕事が終わった足で『モンドリップ』に向かうと小鳥遊がもう来ていて入口で店内を見渡した俺に手を振ってきた。
店内は個性的な雑貨とカウンターに所狭しと並んだコーヒー豆が入った瓶が飾られていて、落ち着いたクラシックが流れる十席ほどのこじんまりとした空間だ。
二人掛けの席に着いていた小鳥遊の前に相見ると「お疲れ」と声を掛けて着席すると共に、白いシャツに黒のカフェエプロンを巻いた女性店員がオーダーを取りに来る。
キリマンジャロを頼むと小鳥遊も「私もそれで」と店員に注文して、待ってましたとばかりに「――で、風早先輩。私に訊きたいことって何ですか?」と嬉しそうにいきなり本題に入った。
(さて、どう訊きゃあいいんだ……?)
由貴が連絡先を知りたがっているなんて言ったら、何故俺を介するのかと由貴との仲を詮索されそうだし……かと言って俺が知りたいだなんて言ったら小鳥遊に気があるのかと思われるし……。
「あー……。こんなこと急に訊くのもなんなんだが……」
言葉を濁していると颯爽と店員がキリマンジャロを運んでくるのでとりあえず一口、口に含む。
強い酸味と苦みが絶妙にバランスの取れた味で、少しだけ頭が冴え渡った気がした。
「仕事でさ、個人的に連絡を取りてぇ時があるかもしんねぇんだ……だからさ、嫌じゃなければ連絡先を教えてくれねぇか?」
尤もらしい理由を取って付けて切り出してみると、小鳥遊はどこか熱のこもった視線を向けてきた。
「それって……仕事だけですか?」
店内は個性的な雑貨とカウンターに所狭しと並んだコーヒー豆が入った瓶が飾られていて、落ち着いたクラシックが流れる十席ほどのこじんまりとした空間だ。
二人掛けの席に着いていた小鳥遊の前に相見ると「お疲れ」と声を掛けて着席すると共に、白いシャツに黒のカフェエプロンを巻いた女性店員がオーダーを取りに来る。
キリマンジャロを頼むと小鳥遊も「私もそれで」と店員に注文して、待ってましたとばかりに「――で、風早先輩。私に訊きたいことって何ですか?」と嬉しそうにいきなり本題に入った。
(さて、どう訊きゃあいいんだ……?)
由貴が連絡先を知りたがっているなんて言ったら、何故俺を介するのかと由貴との仲を詮索されそうだし……かと言って俺が知りたいだなんて言ったら小鳥遊に気があるのかと思われるし……。
「あー……。こんなこと急に訊くのもなんなんだが……」
言葉を濁していると颯爽と店員がキリマンジャロを運んでくるのでとりあえず一口、口に含む。
強い酸味と苦みが絶妙にバランスの取れた味で、少しだけ頭が冴え渡った気がした。
「仕事でさ、個人的に連絡を取りてぇ時があるかもしんねぇんだ……だからさ、嫌じゃなければ連絡先を教えてくれねぇか?」
尤もらしい理由を取って付けて切り出してみると、小鳥遊はどこか熱のこもった視線を向けてきた。
「それって……仕事だけですか?」
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