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二十一時過ぎ、今日も来栖先輩に散々痛めつけられて、家に帰ると暖人が夕飯を作って待っていてくれる。
「……ただいま」
暖人がどこか切ない表情で僕を見つめながら、でも、笑顔で出迎えてくれる。決まって付け加えられるセリフはいつも同じだ。
「おかえり、葵晴。今日も楽しかったか?」
その言葉に、途端、僕の瞳に涙が滲んで。
また、中に出されたままだった来栖先輩の精でお腹が痛くなってきて。
僕がお腹を押さえて「トイレ行ってくる」と言うと暖人が眉をしかめた。
「葵晴? なんかそれ毎日じゃねぇ? ちゃんと大切にされてんだよな? 大丈夫か?」
暖人の視線から逃げるようにトイレに駆け込む。
腹筋に力を入れると、トロリと便器に液体が流れた。
真っ赤なその液体をどこか朧気な瞳で見つめてから、それを流した。
トイレから出ると、暖人がドアの前に立っていた。
僕は、来栖先輩と幸せなはずなのに、それなのに──。
ズキズキと痛む身体が、心が、もう限界で。
ダメなのに、ダメなのに、唇から勝手に音が滑り落ちて。
「……ねぇ、暖人」
「ん?」
暖人が、心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
俯いて、でも、涙がこぼれないようにだけは堪え難きを堪えたけれど。涙は堪えられたけれど、縋る心をもう堪えられなくて。
「今だけ、触るのを許す」
そんな言葉を、こぼしてしまっていて。
気づけば、その場に蹲ってしまっていて。
「……葵晴?」
暖人が、僕の腕を掴んで立たせた。
そのまま腕を引かれてリビングに連れ戻されて、そっと横たえるようにソファに縫い留められる。
まるで、壊れ物を扱うように僕に口付けた。
始めは朱唇を掠めるだけで離れ、次第に食むように吸われ、先に焦れたのは僕の方で、己の唇から舌を出すと、暖人の温かい肉感的な舌と結びついて、結局、涙がこぼれた。
来栖先輩は絶対にしてくれないそれに──。
口端から涎がこぼれ落ちる程、余すところなく口の中を優しく愛撫されて、そっと首筋を噛まれた。その甘い刺激に「ゃっ……」と思わず声が漏れる。
気持ちいい。
暖人との行為は気持ちいい。さっきまで、来栖先輩にされていた酷い行為が上書きされていくような充足感に満たされて。
シャツの上から主張を始める胸の尖りを親指の腹で強く押し込まれる。
そのままシャツの上から舌を這わせられ、そのじれったい刺激に、暖人の後頭部の髪を指でまさぐって、更なる快楽が欲しいと無言の要求をしてみると、ネクタイが引き抜かれた。
暖人が、掻き立てるような視線を僕と絡めて。
「シちゃうぞ? 葵晴」
少しだけ余裕のない声でそう言った。
「……ただいま」
暖人がどこか切ない表情で僕を見つめながら、でも、笑顔で出迎えてくれる。決まって付け加えられるセリフはいつも同じだ。
「おかえり、葵晴。今日も楽しかったか?」
その言葉に、途端、僕の瞳に涙が滲んで。
また、中に出されたままだった来栖先輩の精でお腹が痛くなってきて。
僕がお腹を押さえて「トイレ行ってくる」と言うと暖人が眉をしかめた。
「葵晴? なんかそれ毎日じゃねぇ? ちゃんと大切にされてんだよな? 大丈夫か?」
暖人の視線から逃げるようにトイレに駆け込む。
腹筋に力を入れると、トロリと便器に液体が流れた。
真っ赤なその液体をどこか朧気な瞳で見つめてから、それを流した。
トイレから出ると、暖人がドアの前に立っていた。
僕は、来栖先輩と幸せなはずなのに、それなのに──。
ズキズキと痛む身体が、心が、もう限界で。
ダメなのに、ダメなのに、唇から勝手に音が滑り落ちて。
「……ねぇ、暖人」
「ん?」
暖人が、心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
俯いて、でも、涙がこぼれないようにだけは堪え難きを堪えたけれど。涙は堪えられたけれど、縋る心をもう堪えられなくて。
「今だけ、触るのを許す」
そんな言葉を、こぼしてしまっていて。
気づけば、その場に蹲ってしまっていて。
「……葵晴?」
暖人が、僕の腕を掴んで立たせた。
そのまま腕を引かれてリビングに連れ戻されて、そっと横たえるようにソファに縫い留められる。
まるで、壊れ物を扱うように僕に口付けた。
始めは朱唇を掠めるだけで離れ、次第に食むように吸われ、先に焦れたのは僕の方で、己の唇から舌を出すと、暖人の温かい肉感的な舌と結びついて、結局、涙がこぼれた。
来栖先輩は絶対にしてくれないそれに──。
口端から涎がこぼれ落ちる程、余すところなく口の中を優しく愛撫されて、そっと首筋を噛まれた。その甘い刺激に「ゃっ……」と思わず声が漏れる。
気持ちいい。
暖人との行為は気持ちいい。さっきまで、来栖先輩にされていた酷い行為が上書きされていくような充足感に満たされて。
シャツの上から主張を始める胸の尖りを親指の腹で強く押し込まれる。
そのままシャツの上から舌を這わせられ、そのじれったい刺激に、暖人の後頭部の髪を指でまさぐって、更なる快楽が欲しいと無言の要求をしてみると、ネクタイが引き抜かれた。
暖人が、掻き立てるような視線を僕と絡めて。
「シちゃうぞ? 葵晴」
少しだけ余裕のない声でそう言った。
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