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「俺のこと……騙してたんですか?」
『騙していたわけではないよ。真夜まやがずっとお前に悪いことをしたとメソメソしているから、このまま隠しておいて宇大うたへの気持ちも落ち着かせて、宇大も真夜を忘れて店から去れば真夜を戻すつもりだった』
「そんな……。真夜はそれで納得しているんですか?」
『真夜なら元気になったよ。この三週間でもうお前への情は捨てて憎んでるんじゃないか? 早く宇大が出て行かないかと待ち望んでいるんじゃないか?』
真夜の依存はどうしているんですか?と訊きたかったけれど、これ以上声を荒げたらエミリさんに訝しがられるので訊くことは出来なかった。
「そうですか……。また連絡します」
エミリさんの手前そんな風に電話を切るしかなかったが、俺は真夜が俺がいなくなるのを待ち望んでいるという言葉にただただ打ちのめされて、それ以上何かを言及することは出来なかった。
『ああ。そういうわけだから宇大には早く引退の準備をして欲しい。グループのフランチャイズでの独立しかうちは認めていないから……本部へは俺が連絡しておいてもいい。それじゃあ切るよ。お疲れ』
切れてしまった電話を耳に当てながら俺はしばし呆然と立ち尽くしてしまったが、いつの間にか近付いてきていたエミリさんの「ちょっと!」という呼びかけにはたと我に返った。
「真夜はどうなってるの!?」
「真夜は療養中です。飛んだり引退することはないので安心してください。それから――俺の後をつけても真夜には会えませんのでご理解ください。今回のストーカー行為には目を瞑りますが、二度目があるようなら出禁などの対応を取らせて頂くことになります。エミリさんも静かに真夜の復帰を待って頂ければ。では俺はこれで」
エミリさんは納得しきれていない様子だったが俺は彼女を置いて自分の部屋へと向かった。
正直、俺も現状に頭が追い付いておらず、自分の内心の整理でいっぱいいっぱいだった。
『騙していたわけではないよ。真夜まやがずっとお前に悪いことをしたとメソメソしているから、このまま隠しておいて宇大うたへの気持ちも落ち着かせて、宇大も真夜を忘れて店から去れば真夜を戻すつもりだった』
「そんな……。真夜はそれで納得しているんですか?」
『真夜なら元気になったよ。この三週間でもうお前への情は捨てて憎んでるんじゃないか? 早く宇大が出て行かないかと待ち望んでいるんじゃないか?』
真夜の依存はどうしているんですか?と訊きたかったけれど、これ以上声を荒げたらエミリさんに訝しがられるので訊くことは出来なかった。
「そうですか……。また連絡します」
エミリさんの手前そんな風に電話を切るしかなかったが、俺は真夜が俺がいなくなるのを待ち望んでいるという言葉にただただ打ちのめされて、それ以上何かを言及することは出来なかった。
『ああ。そういうわけだから宇大には早く引退の準備をして欲しい。グループのフランチャイズでの独立しかうちは認めていないから……本部へは俺が連絡しておいてもいい。それじゃあ切るよ。お疲れ』
切れてしまった電話を耳に当てながら俺はしばし呆然と立ち尽くしてしまったが、いつの間にか近付いてきていたエミリさんの「ちょっと!」という呼びかけにはたと我に返った。
「真夜はどうなってるの!?」
「真夜は療養中です。飛んだり引退することはないので安心してください。それから――俺の後をつけても真夜には会えませんのでご理解ください。今回のストーカー行為には目を瞑りますが、二度目があるようなら出禁などの対応を取らせて頂くことになります。エミリさんも静かに真夜の復帰を待って頂ければ。では俺はこれで」
エミリさんは納得しきれていない様子だったが俺は彼女を置いて自分の部屋へと向かった。
正直、俺も現状に頭が追い付いておらず、自分の内心の整理でいっぱいいっぱいだった。
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